外篇3 聖女は世界を甦らせる
地球最後の希望、ガイアの愛し子、それが最後にして最強の超能力者、
だが、今やその称号を呼ぶ者はいない。
かりんの世界は、異次元からの侵略者によって完膚なきまでに滅ぼされてしまったのだ。
都市は壊滅し、多くの人が戦乱の中で命を落とした。また自然も破壊され尽くされた。海洋は汚染され、空気は侵略者たちの使う装置から吐き出される噴煙で満たされ、逃げ延びた人々はその毒に苦しまされた。
地球の意志、ガイアはあらゆる超能力をかりんに与えた。そして、かりんの先輩にあたる多くの超能力者と友に、彼女は長く戦い続けたのである。
だが、異次元からの侵略者たちの戦力は豊富で、やつらは無限に現れた。
超能力者たちはどんどんと減っていき、自然が壊されるたびに、ガイアの与える力は弱まっていった。
それでもなお、生き残った人々の意志と地球の力全てを振り絞って、かりんは戦い――そして敗れた。
――――――
異次元からの侵略者たちもまた、超能力を使う者たちだった。
あらゆる破壊の力が、かりんを狙い放たれて、かりんはその命を失うはずだった。
その直前で、世界の時は止まり、女神の力によって彼女は異世界へと転移したのだ。
異世界での数ヶ月の冒険の果てで、彼女は聖女とともに世界を救った。
『自然の女神』の加護を得たことで、かりんは無限の力の源泉である異世界の自然に宿る姿なき意志である「精霊」たちと親しくなった。そして、その力を戦いに使いこなすことを身につけた。
そして、彼女の異世界での旅は終わり、友となった聖女たちと別れの時が来る。
彼女は一度も語らなかったが、孤独な戦いの果てにこんな楽しい時間があったなんて、と彼女は勇者ワタルがくれた異世界での冒険を本当に楽しんでいたのだ。
その思い出を胸に、彼女は自分の世界へと帰還する。
そこには、誰ひとり味方はいない世界だろうと、彼女は世界をもういちど救おうと決意したのである。
――――――
あの日、あの瞬間。かりんが本来ならば、異次元からの侵略者との戦いで命を落としていたであろうその時に、彼女は戻ってきた。
全方位から、かりんへと迫り来る破壊の力、それを彼女はあっさりと受け止めた。
彼女の体と意識には力が満ちていた。不思議なことに、いまだに女神の加護によって精霊たちが彼女に力を貸しているのだ。
遙かな異世界から彼女のところへと流れ込む自然の力。それを彼女は練り上げる。
かりんは異世界でも超能力をたっぷりと鍛錬し、
だから、彼女は自然の力を波のように周囲に放った。異次元の侵略者たちを消し飛ばし、彼女の力が賭け抜ける。
「……もしかして、この侵略者たちも
膨大な力が、瓦礫の山しかない荒野へと染み渡っていく。
侵略者たちの力によって、汚染されつくしていた世界が、急激に浄化されて生き返っていく。
その光景を目にしたのは、たったひとり、最後の超能力者かりんだけだった。
だが、彼女の力に呼応して目覚める意識があった。
それは死に瀕していた地球の意識、ガイアだ。滅びる寸前で、かりんの力がガイアへと流れ込んだのである。
「――――?」
「あ、ガイア! 起きたかな? ねぇねぇ聞いて! わたし、すっごい経験したんだよ!」
「――――!?」
「異世界に行ってね、世界を救って、すっごいパワーアップして戻ってきたんだ! もしかすると、わたし勝てるかも!」
「――――!!」
ガイアから強い決意が伝わってきた。
そして、かりんはガイアと深く繋がる事で、まだこの惑星が死んでいないことを確信する。
自然は滅びかけている、でもまだ救える!
多くの人たちが死んでしまったことは取り返せない、だけどまだ生き残っている人たちの気配を感じる!
地球には、まだまだ侵略者たちが残っている、なら全部倒して追い返してしまえば良い!
そう決意してかりんは高く高く飛び上がった。
もう、異世界からの借り物の力は必要なかった。
地球の力とも、宇宙全ての力ともかりんは容易く繋がっていった。
こうして、地球を襲った異次元からの脅威は取り除かれた。
滅びに瀕した世界は、ゆるやかに復興し、その輝きを取り戻していった。
新たな文明の祖になった偉大なる超能力者は、事もなげにいう。
「滅びかけた世界を救うのも、2回目だったからね。わたしは、1回目を真似しただけ。いろいろ教えて貰ってたことが、とっても役に立ったよ、みんな!」
遠くの世界に向けて、感謝を捧げる最強の超能力者かりん。
彼女には、さらに多くの戦いと、もっと多くの物語が語られるのだが――これはまた別の物語。
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