第40話 処女宣言
さて、先生に名前を呼ばれた僕は、とりあえずソレを無視して僕は武田の元にテクテク。鞄には……無いな。ポケットには……あ、あった。
デデーン! 渡瀬さんが渡したスマホー! と、脳内で某ネコ型ロボットの真似をしつつスマホを確保。ついでにポケットに入っていたタバコには吸えないように水をかけておく。さらにジッポライターの中の油を吸う部分も抜いて捨てた。うん、これでよし。
次は佐々木だ。こいつは先生に手を出そうとしたので、ちょっと許せないから極刑に処すことに。
そこで取り出したのは棒の部分を取り外したモップ。これは学校から古くなって捨てるやつを貰ってきて、スプレーで黒く染めた物。
これを佐々木の頭に被せて簡易的な女装をさせる。
そしてその状態の佐々木を武田の上に乗せて、服を少しはだけさせてそのままキスをさせる。あーキモイ。キモイキミョイ。
その姿を武田と佐々木のスマホでパシャリ。ロックは二人とも指紋だったから楽だったや。
さらにインスタントカメラでもパシャリ。出てきた写真を近くに置いて、渡瀬さんが用意したスマホでもパシャリ。SNSに即投稿。タイトルは【イチャ甘カップル見つけたお!】うん。完璧。
よし、帰ろう。
「ま、待って赤坂くん!」
あーそうだった。バレたんだったね。
「なんですか? 先生」
「……どうして? どうして赤坂君がここにいるの?」
「コスプレ徘徊が趣味なんです。バレるかバレないかのスリルが最高ですよね」
「そんなの嘘よ! だって赤坂くんの家、逆方向じゃない。それにこんないいタイミングで来るなんて……」
「あはは。たまたま偶然ですよ。じゃ、僕は徘徊の続きに行くのでここで。あ、そのホモップルが目を覚ます前に部屋に行った方がいいですよ」
まぁ、暫くは覚まさないと思うけどね。
「ま、待って! お願い……」
…………ふぅ。さすがに涙声で呼び止められたら止まらないわけにはいかないや。
「なんですか?」
「…………いの……」
「はい?」
「た、立てないのっ!」
そういう和野先生の姿は、太ももを擦り合わせてペタンと座り込み、目には涙。も、もしかして!?
「まさか先生……さっきの一瞬でイタズラされたんですか!? それか粗相を……」
「ちっ。違うわよっ! 何もされてないし漏らしてもないわよ! それに私は……まだ処女なんだからっ!」
あ、はい。それは知ってます。けどそれは外で言うことでも、脈絡もなく今言うことでも無いと思うんですよ。まぁ、他に誰もいないから聞かれることはないけどね。
「つまり腰が抜けた、ということですか?」
「しょうがないじゃない。怖かったんだもん……」
そう言う先生の肩は震えている。
ふぅ、さすがにこのまま帰るわけにはいかないかな。
「わかりました。じゃあ……」
「ありがとね。肩を貸してくれればそれで──ふぇ?」
「部屋まで運びますね」
そして僕は先生の背中と膝の裏に手を回してそのまま持ち上げた。所謂お姫様抱っこってやつ。本当は嫌なんだけど、肩を貸して支えながら歩く方が面倒臭いんだよね。自分のペースで歩けないし。
「え? あ、待って? 赤坂くん!? ちょっと待って!? 嬉しいけどこの歳でお姫様抱っこはさすがに恥ずかしいよぉ! それにまだ九時前だから同じマンションの人に見られたりでもしたら──」
「部屋は何階の何号ですか?」
「あ、部屋は三階の305号室──じゃなくって! ねぇ聞いてる!? もうなんで!? いつもはどんなにアプローチかけてもスルーだったのになんで今なの!?」
うるさいなぁ。口を塞ぐにしても両手は塞がってるし……あ、そうだ。
「赤坂くんってば! 聞いてる──んぐっ!?」
僕の目のほんの数センチ先で何度も瞬きをする先生。そして顔を離して一言。
「静かに」
「は、はぃ……」
よし、これで静かになったや。
さて、三階ならエレベーター待つより階段の方が早いかな。人に会う確率も減るだろうし。
そう決めた僕は先生を抱えたままでマンションに入り、エントランス脇の扉を開けて階段を上がる。
先生は両手で顔を隠しながら耳まで赤くしながら「なんでぇ……なんでぇ……ふわぁぁぁ」ってボソボソ言ってる。
それにしても……知らなかったや。女の人の唇はこんなに柔らかいんだね。
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