第33話 将来設計と悪い奴
帰りながらさっきの和野先生の事を考えてみよう。
和野先生は27歳。相手の男性はどう見てもそれより歳上だったね。
ということはつまり、和野先生は本当は歳上が好きだったのかもしれない。
だけど歳上だと夜のアレが淡白ですぐに終わることに性欲増し増しの先生は不満を覚えて別れ、性欲溢れる若い子に狙いを付けた。そして僕が狙われた。
だけどそれに納得いかない元カレが、無理矢理和野先生を再び手に入れようとしたということかな?
……な、なんて薄い本事案なんだ! これじゃあ僕はまるで間男候補じゃないか! それはなんとか避けないといけない。よし、和野先生からは距離をこれまで以上に距離を取ろう。距離を取ろうとすると近づいているような気がしないでもないけど、そうしよう。
「まったく……最近は女難ばかりだなぁ」
「そうね拓真。彩音に騙されてさえいなければ今頃私達は仲良くベッドの中にいたのに」
「それはないね。あと腕を指でツーってしないで」
「大丈夫だよ拓真くん。ボクがいるから。元気無くなったらいつでもおっぱい揉んでいいから」
「揉まないよ。そして胸を持たないで」
「たっくん。奈央は胸も無いし、そういうことまだ怖いけど耳かきとか爪切りしてあげる」
「自分で出来るよ。だから綿棒出さないで。僕は後ろに白いフワフワが付いてる耳かき棒派だから」
「「「ぶぅ!」」」
ぶぅ!じゃないよね。っていうかさ?
「なんでいるの?」
いや、ホントなんでいるの? 結構時間潰したよ? 空はもう暗いんだよ? しかも気配も何も感じなかったし。どういうこと?
「拓真が出てくるまでそこの塀と塀の間で待ってたの」
忍者かな?
「拓真くんが出て来るまでの様子をそこの防犯カメラをハックして見てたの」
それ、大丈夫?
「ロングコートのおじさんと話してたら、なんか飴貰った」
それすぐに捨てて。
「それで……どこまでついてくるの? まさか僕の家までじゃないよね? もうみんなのマンションは通り過ぎたんだけどさ」
「もちろん拓真の家までよ。二人とも知ってて私だけ知らないなんて不公平だもの。それに将来住む家なんだから間取りも知っておかないと」
「僕は次男だから家を出るつもりなんだけど。あと、中には絶対入れない。将来も住まない」
「そう。お兄さんがいるのね? でも大丈夫よ。そんなこともあるかと思って拓真待ってる間に調べたの」
「なにを?」
不安しかないんだけど。
「この辺なら少し外れれば1坪5万円くらいで買えるの。家を1200万で買って土地を5万で120坪の600万で1800万。金利とか色々込みでひと月約5万弱の35年ローンで家を建てれるみたいなの。だから建てましょう。もちろん私が払うから拓真は家にいてくれればいいわ。在宅での仕事を探すからずっと一緒にいましょう」
「…………」
「拓真? どうしたの?」
逃げよう。うん、それがいい。僕が全力で逃げればきっと三人はついてこれないはず。あ、でもダメだ。藤宮さんと奈央ちゃんが知ってるから今逃げても来る。きっと来る。どうしよう。なんで僕の承諾無しに将来設計たててるの? なんでそんなそれが当然とでも言いたそうな顔で僕を見てくるの?
「ミオリンダメだよ! そんなの勝手に決めちゃ。拓真くんはボクの家にお婿さんに来るんだから。次男だから大丈夫だもんね? お母さんもお父さんも乗り気なんだもん。『伊月の彼氏さんそのまま旦那さんになってくれるといいのに』って言ってくれたし」
藤宮さん、勝手って意味知ってる? 家族に何を言ってるの? 僕の意思は?
「たっくんは奈央の義理の兄妹になるの。血の繋がらない兄弟。時折見える無防備な姿。戸惑う2人。お互いに我慢できなくなるのは時間の問題。そして二人が入った部屋の明かりはゆっくり消えていくのだった……」
奈央ちゃんのは変にリアルで怖いよ? 僕、自分の部屋に鍵付けるのを今決めたよ。絶対付ける。三個は付ける。
「「「…………」」」
はい、そこで睨み合うのおかしいから。だいたいなんで僕と付き合うことが決まってるの? 無いから。絶対無いから。僕が好きなのは彩音さんだって何度も言ってるのに────ってあれ? あそこのコンビニに停まってる車と外に立ってる人は……。
「ん? あぁ大丈夫だ。もう一押しで落ちるって。そんなに嫌そうじゃなかったしな。……わかってる。ヤる時はお前も呼ぶって。ったく……行き遅れの処女が好きとかお前も変わった趣味だよな。ま、俺は金貰えるならいいけどさ」
ゆっくりと近付いて聞き耳を立てていると、タバコを吸いながらそんなことをニヤニヤとして話す男。あれはさっき和野先生と一緒にいた男だね。あ、タバコポイ捨てした。なんて悪い奴なんだ。ホントに……なんてムカつく奴なんだ。
「た、拓真? ちょっと顔怖いわよ? それでもカッコイイけど」
「拓真くん……環境保護も考えてるなんてカッコイイ……」
「たっくん、その目で奈央を見て。ねぇ見て」
…………さて、どうしようかな。
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