オタクの彼氏は浮気性
夜瀬 冬亜
第1話
晴れた春の日。6時間目。カラスが、カーカーッと鳴き、近くから蚊の鳴く音。私は一刻も早く家に帰りたかった。なぜなら今日は推しのグッズ発売日。知名度は高いって訳では無いが、やっぱり早く買いたい。授業をボーっと聞いていると先生に注意された。
「おい三野下ー、聞いてるかー?」
私は、いきなり名前を呼ばれ驚き、全力で顔を縦に振った。
先生は、そうか、と何事となかったように授業を進めていった。
はぁー、早く終われぇ、と時計を見ながら唱え続け、ノートに落書きをちらほら推しを描いた。
キーンコーンカーンコーン、と馴染んだ音が聞こえたと同時に私はすぐさま席を立ち、先生のいる方へ向かった。
「先生、すみません、少し具合が悪くて...保健室行っても...?」
「あぁ、いいぞ、行ってこい」
「ありがとう、ございます...」
よし、成功。これが赤畑先生なら行かせてもらえないんだろうなぁ。藤山先生でよかったぁ。私は安堵しつつ、保健室へ急いだ。
「失礼しまーす」
「あら三野下さん」
またサボり?と笑いながらいつも出迎えてくれる保健室の先生。鳥原先生。生徒からの人気で、おっとりとしたイメージだが少し気が強いところもある。そういうところは私は好きだ。そして何より私のことを理解してくれている。
「今日は推しのグッズ発売なんですよ!」
「そんな大声出していいのー?ほかの先生に聞こえちゃうよー?」
私はビクッとし、先生が居ないか周りを確認した。ふぅ、居なかった。さすがにこの事を聞かれたら絶対帰らせてもらえない。先生はクスクスと笑いながらこちらを見た。
「じゃ、あとで親御さんに連絡しとくから帰っていいよ」
「ありがとうございます!」
やっぱり鳥原先生めっちゃ好きです。
私は保健室を勢いよく出て、教室へ急いで戻り先生に帰る、と伝え荷物をまとめて門を抜けた。
家に帰ると家はシンと静まり返っていた。私の親は共働きなので学校から帰った時は大体いない。それに帰ってくるのは夜だからあまり顔を合わせれなかった。
「...さーてと、まだ3時まで時間ある、、いや、待機しとこ。」
私はソファーに寝転び、スマホを開いた。そしてすぐさまSNSへGO。公式アカウントの最新情報も見とかないと〜。ピコン。1つの音がリビングに響き渡った。通知のところを見ると、LINE:浅井柊也 という通知があった。
浅井?いやアイツ学校じゃん...。私は不審に思いながらLINEを開いて、浅井柊弥 のところをタップした。
〈なぁんで帰った!〉
と、一言送られてきていただけだった。
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