第2話
ちっ、それだけかよ。私は浅井から送られてきたLINEを無視して、公式のサイトに戻り、また見始めた。
だけど、浅井から何通も連続でメッセージが送られてきた。
〈おまえぇ、家帰ってんじゃねぇ!!〉
〈気づいてんだろ!返信しろ!〉
〈おい三野下ぁああ!!!〉
「...うるさ」
私はぽつりを呟いて渋々浅井に返信をした。
〈通知うるさい〉
それだけ返して閉じようとするとすぐに返信が来た。
〈お前が帰るから!心配だろ?!〉
こんな時だけ彼氏面。浅井潤也は異性からも同性からも人気なやつで一応私の彼氏でもある。
告白してきたのはあっちで私も気になってから付き合ったものの、彼女の私より友達を優先。遊ぼって言っても、その日予定あるからって、全く構ってくれなくて...イラついたからその日はグッズを通販で爆買いした。財布の中は空になり、荷物が届いた時の量が凄くて親に怒られた。
〈学校終わったらお前ん家行くからな!〉
〈来んな!!!〉
イライラしながらLINEを閉じ、また公式のサイトに戻った。
あれ、なんでグッズがもう発売されて...。私はスマホの時計を見ると、3時1分という数字が目に入った。
「あ゛」
急いでグッズ購入画面を開くと、まだ在庫が残っていた。よかった、と胸をなでおろし、購入ボタンを押した。
5時30分近く、家のインターホンが鳴り、ドアの向こうから声が聞こえた。
「おーい三野下居るだろー?」
「...浅井かよ」
出てこない私にイラついたのかどんどん声が大きくなって玄関のドアも軽くノックしてくる。さすがに近所迷惑だろうと思い、渋々ドアを開けた。
「何」
「みーのーしーたー!」
そう大声で言ったと同時に、服がくしゃっとなるように抱きつかれた。
「苦しい...」
「じゅうでーん!」
ぎゅー、と言い、力強く抱きしめて片手で頭を撫でてくる。私は数秒我慢したあと、浅井の腕を掴み引き離した。それと同時に向かいに住む、倉田さんが私の家の前を通った。
「あらぁ、花玲ちゃん」
こんにちはぁ、と酔っ払ったような喋り方でニコニコしながら小さく手を振ってくる。
「こんにちは」
「こんちゃす」
「?そちらはぁ...もしかして彼氏さん?」
「はいっ!!三野下の彼氏です!」
浅井はグイッと前に出て食い気味に目を光らせた。
「青春ねぇ」
ふふっ、と小さく笑みを零して、倉田さんはエコバックを握りしめて真っ直ぐ道を進んだ。
「...青春だってよ」
「そーだね」
気まづくなったのか、私が浅井の方を見るとそっぽを向いていた。
オタクの彼氏は浮気性 夜瀬 冬亜 @yoruse_1115
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