和本STORYz
和本明子
コメディ
押しかけサギ
昔々あるところに
「ふー、今日も獲物は無しか‥‥」
溜め息を吐きながら今日の結果を呟いては、気持ちが夕暮れと共に暗くなっていく。
冬が近づいてくる足音のように木枯らしが駆け抜けて、寒さが厳しくなっていくのは
「このままじゃ、この鉄砲を質屋に売らないといけなくなるな‥‥。まあ、独り身だからこそ、なんとかなるか‥‥」
背負っている古い
より落ち込みながら山道の家路を歩いていると、「クーン‥‥」と脇道の
動物の鳴き声に猟師としての
「‥‥何やってんだ。おまえは?」
そこには、一羽の大きな白い鳥が木の枝の間に長い首が挟まっており、抜け出せずにいたのである。
「クーン‥‥」
弱々しい鳴き声だった。
きっと、リスやネズミなどの小動物を捕食しようとしていた時に、この枝の間に首を突っ込んでしまったのだろう。
これ幸いとして、この間抜けな鳥を捕らえようとしたが、無抵抗な動物を捕らえるのは
「
男は枝をへし折り、白い鳥を救出した。
「ほら、逃げな」
白い鳥は一度だけ男の方を振り返ったが、すぐに翼を羽ばたかせては、長い首を折り曲げて空の彼方へと飛び去った。
「今度出会ったら、容赦しないからな」
鷺を見送りつつ自分にも言い聞かせるに呟き、再び家路を歩んでいく。
その足取りは少しだけ軽くなったようだった。
勝手知ったる家の戸を開けると、
「おかえりなさいませ、
慣れたように白く美しい女性が出迎えてくれた。
「‥‥え、誰!?」
「先ほど助けていただいた
「え? さ、サギ?」
「はい、そうでございます」
「サギなんて
「ああ、この姿は仮の姿でございます。元の姿では、この通りお礼に参ることができませんでしたので」
「
※
「そ、そんな、
「まあ、ご
「そうですね‥‥って。ここ、俺の家なんだけど!」
「存じております」
「分かってくれれば‥‥いや、その前に、
「まあ、私のことを
「ぽっ、じゃない。それで、なんで俺の家に居るんだ?」
「さっきも申したではありませんか。先ほど助けていただいた
「さ、サギ!? ってことは、やっぱり俺を
「さっきから何かと勘違いしているかと存じますが。要は助けていただいたお礼に参ったのです」
「
「天丼な返し(同じネタ繰り返す)はお腹いっぱいになりますわよ」
「何の
「‥‥まあ、そんな
「いやいや、ちょっと違うベクトルで
「時代設定にそぐわない言葉を使わないでくださいな。しかし、このままでは
「進めるって、なにを進めるの?」
「私は隣の部屋で、御礼の品として
「話しを進めるってことね」
「ですが、私が
「い・い・で・す・ね? を、お・も・て・な・し、みたいに言うなよ」
女は男のツッコミを無視して、隣の部屋に入り
「しかし、御礼の品に羽織を織ってくれるのか。どんな羽織を織って‥‥というか、男の独り暮らしに
男は慌てて
「何をしているんだ?」
「はい、この
「よしんば、その俺の
「
猟師と鷺は一緒に大笑いした後、猟師は背負っていた銃を構えて、狙い撃つ。
「ちょっ!?」
狙い撃つ。
「まてよ!!」
狙い撃つ。
鷺は必死に翼を羽ばたかせて、窓から飛び出して大空へ逃げていった。
猟師は飛び去っていく鷺を見つめ、至近距離にも関わらず、鷺に命中しなかったことを悔やみ、
「猟師、辞めるか‥‥」
鉄砲を売ったお金で、なんとか冬を乗り切ったのでした。
おしまい。
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