第18話 旅立ち

 外の冷たい空気が家の中まで入ってくる。あまねは朝、ベッドのなかで布団をかぶり丸くなっていた。そろそろ起きないといけない。あっそういえば今日はクリスマスだ。目を開け枕もとを見るとプレゼントはなかった。あまねは親からプレゼントはもらえない。なぜなら中学生だからだ。プレゼントをあげるのは小学生までと母から言われた。あまねはそれはまあ仕方ないなと思った。あまねは朝食をとり、身支度を整え家を出た。


 今日は終業式だ。

 学校に着き、教室に入ると、クラスメイトたちの様子がいつもと違った。とんでもないことが起こったという顔をしながら、会話していた。一体何が起こったのか。

 あまねはいつも仲良くしている明美に話しかけた。

 「なんかクラスで問題起こったん?みんな落ち着きないけど」

 明美は顔を青くさせていた。

 「グラウンド見てみ」

 明美は顔をしかめボソリと言った。

 

 あまねは教室の窓からグラウンドを見た。するとグラウンドの真ん中の土が黒くなっていた。なぜ土が黒くなっているのだろうか、あまねにはわからなかった。

 「グラウンドでなんかあったん?」あまねは明美を見ながら首をかしげた。


 「三年生が焼身自殺したらしい」明美は顔を震わせ言った。

 「えっ」まさか…三年生って。「三年生の誰っ?」あまねはぎこちない大きな声で言った。クラスメイトの視線があまねに集まった。


 「宮本三四郎って言う人らしい」明美は言った。「ガソリン被ったらしい」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る