第7話 バニーガール!?

 彼女が『変態』と言うから状況を説明した。


 説明するとリーダーになったアイツが諸悪の根源なことに今更ながら気がつく。

 撮影の班分け後、アイツは自分ちに集合を掛けたんだ。


 彼の自宅は、ココへ来る途中の商店街にあった電気屋さん。

 アイツが『涼宮ハルヒみたいな映画を撮りたい』と言った理由が直ぐに分かる、アニメに出てきた街の電気屋さんと同じお店。


 彼は電気屋の2階にみんなを集めて宣言する。

「あの映画のキモは『朝比奈みくる』のバニーガール。だから準備してきた」

 ドンキホーテの袋からペラペラのバニーガール衣装を自慢げに取り出したんだ。


 誰れかがツッコミを入れる。

「そんなの誰が着るの? 女子に頼めないし」

 メンバー全員が激しく首肯したのを覚えている。


 アイツは、当たり前のように言ったんだ。

「『自給自足』誰かがこれを着てプラカードを持って商店街の宣伝をするの。うちの高校、進学校だから文化祭には中学生が親同伴で観に来るよね?」


 中学3年の時、友達と文化祭を観に来た覚えはある。

 でもバニーガールは関係ないだろう?

 そんなことを言った気がする。


 その日は珍しくアイツは語るんだ。

「甘い、地方の高校だけど県内有数の進学校だよ。在校生の多様性を示さないと。男子がバニーガール姿で商店街を練り歩いて話題になれば、街の活性化につながるし、ローカル局が取り上げれば知名度があがるよ」


 熱弁を聞いて誰も抗議をしなかったのは覚えている。

 寂れていく商店街、自分ちの電気屋を何とかしたいのだと察して、断りにくい雰囲気になったんだ。

 アイツのバニーガール姿に付き合おうという流れになったけど、そこからがアイツらしいというか…


「映像を撮るのに賛成したから、クジ引きね」

 アイツはみんなの前にアミダクジを出したんだ。

『それはないだろう』と文句を言うとヤツはシラっと言うんだ。

「自分が買ってきた衣装を自分で着て自分が出演したら、班の意味がないだろう? 文化祭はみんなで作らないと。出演する権利は平等にチャンスがないとね」

 そんなチャンス、欲しくなかったけど。


 アイツがもっともらしいことを言い、反論できず渋々アミダクジを引いたんだ。

 結果は知っての通り。


 カツラと化粧をさせられ看板を持たされたバニーガールになり、商店街を宣伝する映像を撮らされたわけ。

 商店街はその日、人通りも多く写メされたのを覚えている。

 TV局が来なかったのは幸い。


 映画は『学校の中で盛り上がった』けど、街では評判にもならなかったみたい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る