第54話 時間よとまれ1月22日
究極の存在となった究乃カナ、朝は和食と決めている。
8時半というのんびりの時間、目覚ましに起こされてもあわてない、あわてない。一休さんだって言っている。早起きは体に悪い。朝早い時間は死の危険が高まるのだ。
ごろごろしながら首をほぐしたり、目を手のひらでああためたりして、存分に寝ぼけタイムをすごす。
起きて着替え、布団を畳んで押入れにしまう。ドラえもん起きて、邪魔だから。布団がしまえないよう。ごめんのび太くん、自分で布団をしまうなんてえらいね! そんなことで褒めるな、のび太を甘やかしすぎなドラえもん。なんてひとり妄想してボケツッコミ。
顔を洗い、うがいをして、エビアンを飲む。寝ている間に乾いた体に水分が浸みわたる。
お味噌汁はほんだしを使って楽チン。具を煮込んで味噌をとかしたら完成。てってれー♪ お味噌汁! いまドラえもんの声聞こえた? 大山のぶ代の方ね。
お魚はグリルで焼く。そのあいだに漬物を切っちゃおうかな。と見せかけて、パックの旨キムチ。ごはんがススムやつね。朝は和食だったんじゃないのかって? ひとつでも和でないものが入ったら和食じゃないとでもいうの? この和食原理主義者め。焼き魚にチーズ載せたろか!
おっと失礼。取り乱した。究極の存在、究乃カナとしたことが。
そんなわけで、朝は和食を摂るのだ。
お昼はお弁当。昨夜の残り物を詰めたら完成。坂井令和(れいな)さんに届けなくちゃ。
究乃カナは神殿を出て、となりのオフィスビルに向かう。チーン、坂井令和(れいな)さんのいるフロアについた。文字に反応してすぐにやってきた。
「お昼のお弁当もってきました」
「ありがとうございますぅ。社畜だからお昼抜きで働いてもいいんですけどぉ」
「ダメですよ、そんなことしたら倒れてしまいます」
「いま胸見ました?」
両手をクロスさせて胸を押さえている。そんなことされたら目がいってしまうけれど。胸がどうかしたのかな。動悸?
「胸がどうかしたのですか」
「なんでもありません」
お弁当を受けとって胸に抱く。寂しがり屋かな。
「夜はエナドリを差入れますね」
「残業がはかどります!」
生まれつきの社畜なのだな、坂井令和(れいな)さんは。ボーン・トゥ・ビー・シャチク。
究乃カナは神殿に戻ってきた。パソコンの前で考え込んでしまった。あれぇ、なにを書けばいいんだっけ。リアルタイムなのにリアルタイムに思いつかない。書くことがない。だって、なにも起きていないのだから。神殿でなにが起こるというのだ。
忘れていた。坂井令和(れいな)さんに探偵をしてもらおうと思ってリアルタイムに召喚したのに、神殿にいるものだから下界のことなんて頭から抜けてしまった。オフィスまで召喚して仕事する必要なんてどこにもないじゃない。嫌だわぁー。
でも、社畜の人の仕事を邪魔したら怒られそうだから、残業が終わってから探偵を依頼すればいいや。
究乃カナは夕食を作って食べ、お皿を洗って、エナドリを届け、お風呂に入り、歯を磨いて、お布団を出して寝た。
坂井令和(れいな)さんは忙しいからって同僚の人にエナドリを託してしまった。届いたかしら、あの同僚の人に飲まれてしまったのではないかと心配。心配すぎて眠れない。
究極の存在となった究乃カナ、朝は和食と決めている。
って、あれ? 坂井令和(れいな)さんは?
お部屋にいない。もう休日出勤してしまったらしい。
イヤー! 坂井令和(れいな)さん、仕事はいいから探偵やってー! 事件を調べて、トリックを見破って、犯人を暴いてー!
考えるのはすべて究乃カナである。考える間、時間を稼がなくちゃ。ついでに文字数も。
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