第24話 クリスマスの夜に悪魔は12月24日
石像に封印されていた悪魔が、地震のせいで天井が崩れ、結果的には石像が壊れて封印から逃れた。そういうことか。
「わたくしが起こしたというわけではないかな。ほら」
九乃カナは悪魔に石像が破壊されているのを示した。
「ほう、なぜこのようなことに」
悪魔にもわからないことがあるみたい。たいしたことないな、悪魔。察しろよ。日本人のアトモスフェア・リコグニション能力は悪魔を越えているらしい。
「地震で天井が崩れたのだな。下に石像があったから壊れた」
「そうか。地震のおかげか」
地震のおかげ。地震は神様が起こしたとすると、悪魔は神様に感謝したことになる。神様あっての悪魔だからそれでもよいのか。神様が地震を起したわけでもないだろうし。地震はプレートの沈み込みが原因なのだな。
「それでは、わたくしは地上に出るから。ごゆっくり」
「待て。私を置いてゆくつもりか」
「一緒にきたいってこと? だが断る。迷惑なんですけど、悪魔なんて」
「目覚めたばかりで右も左もわからない私を放置して去るなんて。冷酷ではないか。表情に出ているぞ、その無表情に」
「はいはい、そうですね。冷酷だから置いていきますよ」
「私がこれほど頼んでいるというのに、痛い目に遭わないと自分の立場がわからないようだな」
「あゝ、チンプ。わたくしの小説ではチンプ禁止。それに、脅したってダメ。メタルハートの九乃カナは、意志がダイヤモンドでできているのだ」
「では、後悔するがよい」
懐中電灯の光が透過している悪魔の体の闇が深まる。悪魔の体を通り抜けて懐中電灯が照らしていた向こう側の壁が、闇で見えなくなった。闇が渦を巻き、稲妻が発生する。渦を巻くエネルギーで放電現象が起きているらしい。原理はわからない。悪魔のやることだから。
「なんだかヤバそう」
闇に飲み込まれるかもしれないし、稲妻が襲ってくるかもしれない。悪魔を退治するしかない。やっちまうか。
「」悪魔は石の床に叩きつけられ、見えない力で押さえつけられて体の自由を奪われた。「」
「ぐはっ」
九乃カナは悪魔の顔の前に立ち見おろす。
「おイタはダメよ」
「お前、なにをした!」
「悪魔のくせに知らないの?」
顎を気持ちあげ、さげすむ。
「ぐぬぬ」
「教えてくださいは?」
「なんという屈辱。目覚めたばかりでなければお前など一瞬で消し去ってやるのに」
「目覚めたばかりでなければ、ね。残念でした。あなたは目覚めたばかり」
「」悪魔の首はぎりぎりと捻じ曲げられ、
「わかった。お、教えてください」
「嫌だ。頼めばなんだって教えてもらえると思ったら大間違い。教えてやる義理なんてないのだから」
「アクマー!」
「よく言われる」
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