見えないもの

愛歌勇

一途

俺には幼馴染が居る、小さい頃からずっと仲良しで、ずっとこういう関係が続くんじゃないかなって昔はそう思ってた。

「私と将来結婚しよ!」

「うん、俺も結婚する!」

小学校低学年くらいかな、そんな口約束をしたのを覚えてる、髪をなびかせた少し声が高い君に、どれくらい没頭していたかな。

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中学生になった、2年の夏、俺はやっと君と付き合えた、そう恋人になった、あの頃は夏に行った、小さな遊園地や、映画館、公園、全部、全部が、俺の宝物だった。

中学校を卒業をする頃、

「私達、これから、色んな出会いを経験して場所が変わって色んなことがあると思うから別れよう、私たちがもっといい関係になるように」

そう告げた君に、俺は泣くのを耐えて、けど家に帰ったら泣いて若干、家族に引かれたよ笑

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高校に入ってから君とは別々になってしまったけど、家が近いのもあったか、時々会ったね、

「最近さ~」

「分かるわ、それ俺もしょっちゅうで」

会えば、お互い愚痴を話したり、お互いの学校のこと話したり、たまにショッピング手伝ったり、まるで幼馴染というよりは家族みたいな感じで気軽で楽しかった、だけど、俺じゃないって、好きじゃないって分かってたから辛かったかな。

君はどんな時でも輝いてたね。

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大学生になってからはたまに飲みに行ったりしたよね、

「もっと、もっと~」

「おいおい、飲みすぎんなよ笑」

あの時、ずっと飲んでるときあったの覚えてる?

肝臓ぶっ壊れるんじゃないかって不安だったよ、結局朝までハシゴしちゃったね、店の中で眠る君は正直うざったい部分もあったけど、それでも一緒に居て楽しいって思えたよ。

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お互い無事に大学を卒業してから、お互い別々の企業に就職して、立派なサラリーマン、サラリーウーマン?みたいな感じでやりがいがあったな、君とは少し離れ離れになってしまってどこか寂しかったよ

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そんな今この手紙を読んでる、幼馴染、結婚おめでとう!

この際だからはっきり書く、俺は君が今でも好きだった、どこかすれ違いとか色々あって、何回も振られて、それでも俺は諦めきれなかった、だけど俺は、俺はけじめをつけようと思う、俺の分までちゃんと幸せになってな!

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よし、覚悟はできた、桜が散る四月後半、俺は好きな人が結婚する、披露宴にも呼ばれていて、何故か俺がスピーチすることになっている、正直恥ずかしい、そう考えながら、公園の前にあるポストに投函した。

「よし」

俺は踵を返して、自宅に帰ろうと思った

「お、元気!?」

そう、相も変わらず少し声が高いなと思う、今となってはその切ない声に俺は振り返った。俺は傍に向かった

「おう、元気だよ、ついにお前も結婚か~」

「えへへ、一足先に私、結婚します!」

こんなに嬉しそうに報告するのは、俺には少々酷ではないか、と思ってしまう。

「そういや、なんでここに居るの?」

「散歩!、昔の思い出を振り返りたくて」

「昔の思い出か、俺ら本当に色々あったよな」

「だね。」

しんみりとその場の空気が流れる、桜の花びらが俺達の周りを囲むように落ちている、まるで昔の、思い出がぽろぽろと流れるように

「私、なんだかんだ楽しくやれてた、だからありがとう」

「こっちこそ、色々ありがとな」

青空に映る桜はどうして、こんなに無残で、綺麗なんだろうか

「じゃあ、またな、あんまり夫、困らせんなよ笑」

「大丈夫だよ、だって私できる女ですから!」

「たく、」

俺は手を振って、道を歩いた、俺の進むべき道に、後ろ姿だけを見せて

「 ちゃんと、たまには自分のこと考えなさいよー-!!、私からのお願いね!」

少し距離があいてるはずなのにこんなにも、声が大きいのもあるのかもしれないけど、まるでそれは中学生に戻ったみたいな、無邪気な元気さがあった。

俺は振り返らなかった、振り返ってしまったら泣いてしまう

中学生の自分と現在いまの自分が重なる

「おう!!」

後ろ姿だけで返した

顔が濡れるのを感じる、目からあふれ出た涙をそっと手で拭って、

俺は進んだ、自分のあるべき姿に


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