異世界転生エルフ、世界最強を目指す。

鏡つかさ

1章

転生先は森の中(1-1)

僕は目を覚ますと、

「・・・え?」

妙な違和感を覚えた。


どこまでも広がる蒼い空。

聞いたことのない動物の鳴き声。


途方もなくそびえ立つ幾つかの巨木。

そして鼻孔を強く刺激する自然の匂い。


周囲を見回して居場所を確認する。

どうやらどこかの森の中にいるようだ。


でも、どうして自分がこんなところに?

と、そう思った瞬間、『今の世界』の記憶が蘇ってくる。


どうやら僕は前世の記憶を持ったまま、別の世界に転生したらしい。


名前は・・・マティアス。

120歳のハイエルフだ。


そしてここ──この森は〈魔の森〉と呼ばれている。

どうやら僕は100年間ずっとここに住んでいるらしい。



明るさと太陽の傾き具合、それから気温などを考えると、時刻は午後4時頃だろうか。

まあ、ここに長居するつもりもないし、とりあえず移動しよう。


そう思い、1歩前へ足を踏み出すと、バシャという音とともに足が濡れているような感覚があった。


足元を向くと・・・流れるような金色の髪が視界に入ってきた。

空に匹敵するような蒼い瞳がキラキラと輝き、頭からはみ出した長く尖った耳が、妙な音を聞くたびにぴくぴくと動いた。


水溜りに映った自分の容姿を見ると、僕は呆気にとられた。

これが、僕なのか?

めっちゃ美少年になったけど?


身長もやや高く、恐らく178センチくらいだろう。

ファンタジー系のゲームでよく見かけるような黒革の鎧を身に纏っている。


背中には木製の弓があり、後ろ腰には矢が数本入った矢筒まで括り付けていた。


もしかしてだけど・・・


「【ステータス】」


この世界はゲームに似ているので、ゲームみたいに【ステータス画面】とかもあるかな。

なんてことを思い、試しに【ステータス画面】と言ってみると、「ステータス画面が開きました」といったメッセージとともに、脳裏に何かが浮かび上がった。


ステータス画面

名:マティアス

種族:森上妖精(ハイエルフ)

職業:未定

冒険者ランク:未知

レベル:1

HP:50/50

MP:500/500

筋力:10

耐久:10

敏捷:20

魔力:25

器用:20

幸運:20


《スキル》

ブレードスキル:≪現在、ブレードスキルは取得していません≫

ショットスキル:〖弓術 Ⅱ〗〖狙撃〗〖オーバードロー〗〖パライズショット〗〖鷲の目〗

魔術スキル:〖魔法全属性操作〗〖治療〗〖光〗

特性スキル:〖錬金術〗〖鑑定〗〖索敵〗

パッシブスキル:〖体力自動回復〗〖魔力自動回復〗〖異世界言語完全習得〗〖アイテムボックス〗

称号:なし


やはりあった。


視界に入ったのは、RPGなどによく出てくるようなステータス画面だ。

一見して、パラメーターの数値は大体平均的だとわかる。

いや、異常なのはMPの圧倒的な多さだ。


MPとは魔法や一部のスキルを使用する際に消費される魔力量。

HPだって50しかないのに、初期レベルでMPが500もあるのはおかしい。


辻褄が合わない。


もしかして、エルフだからこんな魔力量が多いのか?

その可能性は……まあ、なくはないけど。

よくゲームなどでエルフという種族は魔法が得意という印象が強いからね。


それにしても、スキルの数が圧倒的に多い。

まじでスキルの数は…とにかく多い。

幸い、名前を見るだけで大体のスキルの効果は判断できる。


でもやはりその効果がわかっても、気になるスキルが結構あるという事実に変わりはない。

【錬金術】とか【魔法全属性操作】とかね。


それでも今現在僕が一番気になっているスキルと言えば、この【アイテムボックス】だろう。


もしかして・・・

と、そこで脳裏に意味ありげな言葉が現れる。


これを詠唱すればスキルの記述が見えるかな。

そう考えつつも、試しに、


「【記述画面、開け。対象スキル〖アイテムボックス〗】」


そう言ってみる。

すると、


――――――――――――――――――――――――

アイテムボックス 特性/ランク10

説明:手に入るあらゆるアイテムを無限に収納することができるスキルだ。アイテムボックスに収納された物には消費期限がないので、生肉なども保存できる。

――――――――――――――――――――――――


案の定、【アイテムボックス】の記述画面が開かれた。


なるほど。

全く僕が思った通りだ。


【アイテムボックス】に収納される肉とかは腐らないとは思っていないが、よく考えれば別におかしいことではない。

このアイテムボックスというスキルは、大体のゲームで使用されるインベントリみたいなものだから。


と、そんなことを思いつつ、鳴いている野生生物によってやっと自分がどんな状況にいるのかを再認識する。


・・・そうか。僕が異世界に転生したんだ。

突然すぎてどう反応すればいいのかは正直言ってよくわからない。

こんなことってある?


とはいえ、実際に起こったことだから、確かにあるんだろうな。

だって、普段現実には表示されることがないものが突然現れるようになったし、

あと、ついさっきまで自分の部屋にいたのに、瞬き一つで突然森の中に移動したしな。


自分で言わせれば十分な証拠だ。


ラノベやアニメ、フィクションの中でしか存在しないはずの現象が、今、ここに現実としてある。

やっぱり異世界転生しか思い浮かばない。


・・・まあ、考えてもしょうがないか。

せっかく異世界に転生したんだし、思う存分楽しもう。


そう決めた僕は、再び周囲を見回す。

周囲には、僕が見たことのない動物が豊富だ。


・・・いや、それはちょっと違うな。

今、周りには何もいない。


もしかして、これもスキルの効果か?

もう一度【ステータス画面】に目を通す。


そして・・・


「……これか?」


とあるスキルを発見した。

【索敵】という名のスキルだ。


きっとこれなんだろうな。


【索敵】の記述を確認しなくてもその効果はもうわかるが、念には念を入れて、確認してみる。


そう思って、僕は再び詠唱を試みる。

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