第5話 自由な時間
☆
わたしが仕事を辞めてからも、大地君はお弁当を置いて行ってくれる。
お爺ちゃんとわたしの分の二つのお昼ご飯。
レンジで温められるように、ワンプレートに載せていってくれる。
お爺ちゃんは気ままに暮らしている。老人会のカラオケ部に入っているらしく。午前中は出かけて、お昼ご飯を食べると俳句教室に通っている。夕方帰ってきて、シャワーを浴びているようだ。
わたしは惣菜パンを作る練習をしている。デザートを作ってみたり、疲れたらお昼寝もしている。クッキーやケーキも作ってみる。
自由な時間がたっぷりあって、今まで、こんなにゆっくり過ごしたことがないから、料理も手の込んだ物を作ってみたりして時間を使っている。
大地君は定時に上がっているようで、最近では車でずっと通勤している。
満員電車が苦痛だと言っていた。
車だと電車より時間はかかるが、その気持ちも分かる。
家に帰ってくると、いろんな食べ物が並んでいるので、嬉しそうだ。
赤ちゃんが生まれるまで禁酒をすると言って、大地君はビールを飲むのを止めている。
デジカメを買って、大地君はわたしとわたしのお腹を映し出した。
10月になると、妊娠後期に入って、そろそろ赤ちゃんの準備をしなくてはならなくなる。
宅配便が夜便で届くようになった。
ベビーベッド、赤ちゃんの布団セット、玩具やベビカー、チャイルドシード……。
次々と大地君の釣り仲間達が贈ってくる。
高そうな赤ちゃんのコートやベビードレスまで贈られてくる。
連日、大地君は電話をしてお礼を言っている。
が!
「俺が選ぼうと思っていたのに!」とちょっと怒っていた。
赤ちゃんの物は肌着やガーゼのハンカチやタオルを買う程度で済みそうだ。
わたしの準備ができていないので、大地君と赤ちゃん用品が揃えられているお店に出かけた。出産の準備は病院からリストとチェック表をもらっている。それを揃えていく。大地君は老人達から贈られてきた物以外を揃えていく。
顔がニタニタして嬉しそうだ。
冬に生まれる子なので、ベストや靴下もカゴに入れている。
哺乳瓶やおしゃぶりまで選んでいる。もらったリストの物は多めに買って、レジを通ると結構な金額になった。
お金を支払って、大地君は老人達が用意してくれた物をありがたがった。
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