第19話 現実は厳しい(※微グロ有)
「前方200メートルに
俺の索敵スキルで識別した敵影に全員が戦闘態勢に移行。俺、親父さん、殿下、護衛騎士達が剣を抜き、ヴィンが両手に嵌めた手甲をガチンとぶつけ合う間に、アーシャが砲を、レティシャが弓を構えた。
アーシャの砲はダンジョンで入手した
今回は威力重視の範囲攻撃用を準備した。
一方、レティシャの弓はロクロラの職人が作った一級品。背負った矢筒から一本引き抜いて弓を構える動作は、学校で見た弓道のそれとは違ったけど、迷いが無くて綺麗だった。
「始めるぞ」
号令は殿下だ。
出発前に打ち合わせた通り、その声を起点に全員が心の中でカウントダウンを開始、ゼロと同時にアーシャの砲が火を噴いた。
ドンッ……!
モンスターの群れに打ち込まれた弾が地面に着弾して爆発、周辺の
「残り14」
残存反応数を伝えれば、そこからは俺達の出番だ。
俺達に気付いた群れが牙を剥いて此方に接近してくる。レティシャが四頭目の眉間を打ち抜いて即死させたところで彼女を背後に――。
「残り12」
「応!」
「グルルルルルルァアアア!!」
爪と共に飛び掛かってきた
次いでフランツ。
「――っ!」
首を狙うが落とせず、地面に斬り伏せると同時に眼球に剣を突き立てて止めを刺し。
「ギャウン!!」
新たに飛び掛かって来るそいつの横腹に蹴りを食らわす。
「うぉおおおお!」
手甲を装備した拳で
そして、そんな彼らの隙を縫うように接近してくる狐狼を女性陣に近寄らせないのが俺の役目。
「燃えよスクレイブ」
詠唱って、最初こそ恥ずかしかったが慣れると気持ち良くなるものらしい。
『鍛冶師』のシンに最高の素材で作ってもらい、スクレイブと名付けられた剣は、最も鋭く頑丈で、正しい持ち主の手にあってこそ輝くという意味だと話してくれた。
あまりにも嬉しかったんで、俺が課金してオリジナル登録したんだ。
世界で唯一の俺の剣が、俺の魔力で炎を纏い、一閃。
瞬時に三頭を火だるまにし灰塵と化す。
「圧倒的……」
背後からレティシャのそんな呟きが聞こえるのと、ヴィンの拳が
親父さんも四方に血を撒き散らしながら三頭目を真っ二つに。
殿下の剣が
圧勝。
目の前の光景はなかなかに凄惨だが、味方に怪我はなかった。
「
そう苦笑いしながら言ったのは、一人だけ剣を使わずに戦ったヴィンだ。周りを見て見れば、俺が灰にしてしまった三頭は土の魔石しかそこに残していないし、他を見ても真っ二つだったり細切れだったりと、素材として売れるようなものはない。
長旅であれば荷物は増やさないのが鉄則だろうが、今回に限っては高性能なマジックバッグを複数所持しているので、その鉄則を守る必要がない。そう考えると、モンスターのあれこれで稼ぐ冒険者的には今回の殲滅方法は反省点しかなかった。スキル採集師の技術を発動していれば別だったかもだが、悪目立ちするのは明らかだしな……。
「すまん……」
「いいよ。今回は報酬で充分に稼げるし」
言いながら、狐狼が残した土の魔石――俺が倒したモンスターは魔石を二つずつ落としていたので、それもそのまま、辛うじて売れそうな部分だけを回収。ちょっとでも依頼後の分配金が増えるように。
後は火魔法で焼却だ。そうしないと他のモンスターが集まって来るからな。
その後、先に進んでいた皆と合流したのだが、レティシャとアーシャの二人が少し離れた場所で青い顔をしていた。何があったのかと確認してみて、俺も「うっ……」と胃からせり上がって来るものがあったが辛うじて耐える。
狐狼の群れが集まっていたのは、ここが廃村で。
村民だったのだろう遺体があったからで……。
「この辺りだとマッシュの村か。キノッコで、マッシュから来たという家族を何組か移住登録したな」
殿下が沈痛な面持ちで言う。
ロクロラの常に氷点下という気候が幸いしたのか、綺麗な遺体も複数あったが、どの四肢も骨と皮しかないと言えるくらい痩せ細ってしまっている。
「……火葬してあげてもいいですか」
聞くと、皆が頷いてくれる。
少し時間は掛かったが、俺たちは一つの村を弔った。
***
それからしばらくは誰の口数も少なかったが、その日の野営でうどんを出したら重苦しい感情よりも好奇心が勝ったらしく、少しだけ雰囲気が戻った。
女神様に感謝だな。
ただしうどんにも種類が結構あって、何を出そうかすごく悩んだ。
今日の気分的に軽めがいいかなと思っておろし醤油と月見にしたら、俺以外は全員がおろし醤油だった。生卵はダメだそうです。次回があったらカレーうどんも食べさせたい。あ、その前にカレーセットか。
ライスとナン、どっちもあるぞ。
「……北の果てに着くまでに、恐らく今日のような村がまたあると思う」
お腹が落ち着いてから殿下が言った。
「その時には、……今日のように、また弔おう」
「はい」
「もちろん」
反対する奴なんて一人もいない。
どんなに悲惨な光景があったとしても目を逸らすわけにはいかない。殿下はこの国の政に関わる者の一人として。
俺は、使徒なんて称号を受け取ってしまった者の一人として。
出来る事をやっていくしかないんだ。
それから一週間ちょっとの間に、似たような村が幾つもあった。たまに住人のいる小さな町もあったが、閑散としていて、誰もが疲れ切った顔をしていた。希望するなら王都から護衛を呼んで移住を手伝うと提案したところ頼みたいと言う者も多く、その都度、殿下が魔道具で王都に知らせを送っていた。
八人で王都を発って、十日目。
俺達は
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