第26話 決戦、氷竜フロストドラゴン
「さあて、久しぶりのアリウス様との共同作業です。頑張りま――、って、わわわわわっ!」
――カァアアアアア!
フロストドラゴンは大きく開口すると、俺たちに向けて
俺は咄嗟に《紅蓮》の称号を自身に付与し、迎撃を試みる。
「――フレイムウォール!!」
俺が張った炎の障壁により、フロストドラゴンから放たれた氷刃はリアの眼前で溶けて無くなった。
「な、何とか串刺しにならずにすみました……」
「ほほう。素晴らしい反応速度と対応力だ」
「それはどうも……」
フロストドラゴンの背に乗ったまま、黒いローブの男はこちらを見下ろしている。
俺は《紅蓮》の称号付与により使用可能になった火属性魔法を唱え、フロストドラゴンに向けて発射する。
「中級火属性魔法、フレイムスピア――!」
高速の炎の矢。
キール協会長と戦った時に決め手となった魔法だ。
それなりの威力はあるはずだが……。
「く……、回避しろフロストドラゴン!」
黒いローブの男が命じ、フロストドラゴンはその場から飛翔し避けようとする。
が、複数放たれた炎の矢の内、一本がフロストドラゴンの尾を貫いた。
――グギャッ!
フロストドラゴンは一瞬苦しそうな呻き声を上げたものの、既に上空へと舞い上がっていた。
「あー惜しいっ! でもいけますよアリウス様!」
リアの言う通り、今の攻防で分かったのはいかに凶悪なフロストドラゴンと言えども、やはり炎には弱いということだ。
硬そうな氷の結晶に覆われた尾の一部が炎の矢に貫かれたことで穴をあけている。
フロストドラゴンの反応を見るに効いているとは思う、のだが……。
「悪いがそう素直にもらってやることはできんぞ」
上空から黒いローブの男の声がかかる。
「あの余裕っぽい言い方、なんか癪に障りますねぇ」
「とは言っても、上空に飛び上がられたんじゃ確かに攻撃が当てにくいな」
「どうした、打つ手なしか? それならばこちらからいくぞ」
再びフロストドラゴンが大きく口を開き、氷の刃を吐き出す。
「……! ファイアウォール!」
俺は咄嗟に炎の壁を喚び起こし、防御を試みる。
「ふふん。アリウス様に防がれてるのに、また同じ攻撃とは芸がないですねぇ」
「ククク、それはどうかな?」
黒いローブの男が吐き出された氷の刃に向けて手をかざす。
すると、俺たちとフロストドラゴンとの間に黒い渦のようなものが現れた。
その黒い渦はフロストドラゴンから吐き出された氷の刃を飲み込んでいく。
「……え? 消えちゃいましたよ?」
「リアっ! 後ろだ!」
背後に気配を感じ振り返ると、そこには別の黒い渦が現れていた。
そして、その黒い渦から氷刃が飛んでくる。
「くっ……!」
俺とリアはその氷刃にかろうじで反応し、バックステップで回避する。
「ふむ。これも避けるか。面白い」
「何だあの黒い渦は……」
「フロストドラゴンの攻撃を転移させたんでしょうか? 氷の竜相手に私の水魔法じゃ相性が悪そうですし、こうなると厄介ですね……」
ただでさえ辺りが寒さに包まれた中での戦闘だ。
あのような攻撃を続けられるとなるとジリ貧になりかねない。
地上から魔法を放つことはできるが、あの黒いローブの男が先程言っていた通り、遠距離の攻撃ではまともに喰らってはくれないだろう。
なるべくなら接近戦に持ち込み、次の攻撃で仕留めたいところだが……。
「アリウス様。アレの出番では?」
「アレ、とは?」
「アリウス様がルルカさんとの修行の合間、密かに練習していたアレです」
リアが俺の方へニヤリと笑いかける。
「……知ってたのか」
「ふふーん。私は女神ですから」
「そうだったな」
リアの言う通り、あの手を試してみる価値はある。
俺はリアに耳打ちして次の攻撃手段を伝える。
「わっかりました! お任せを!」
「よし、次のフロストドラゴンの攻撃に合わせるぞ」
リアと頷き合い、俺は称号士の能力を使用して青白い文字を表示させた。
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【選択可能な称号付与一覧】
●閃光
・一時的に素早さのステータスがアップします。
●疾風迅雷
・《連続剣技》の使用が可能になります。
●豪傑
・筋力のステータスがアップします。
●紅蓮
・初級火属性魔法の使用が可能になります。
・中級火属性魔法の使用が可能になります。
・上級火属性魔法の使用が可能になります。
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「何か思いついた顔だな。面白い。試してみよ」
黒いローブの男がそう言って、フロストドラゴンから再び氷の刃が発射された。
そしてまたも黒い渦が展開される。
「リアっ!」
「よぉし、いきますよぉ!」
突如リアの背から翼が生え、リアは俺を両手で抱えて飛翔する。
転移された氷の刃が別方向から地面に突き刺さるが、俺たちは二人揃ってそれを回避した。
そうしてそのままリアと一緒に空を
「なんと……!」
「いくぞ! 【同時称号付与】――!」
俺は表示させた選択可能な称号付与の一覧から2つを選び、自身に付与する。
《紅蓮》と《疾風迅雷》。
魔法と剣技が使用可能になる称号を同時付与し、俺はフロストドラゴンの頭上で剣を構える。
「今だ、リア!」
リアが手を離し、俺はフロストドラゴンの上空から落下する。
と同時、自身の剣に火属性付加の魔法を使用。
俺の剣はそれにより炎を纏った魔法剣へと変化した。
「――《炎剣、トリプルアサルト》!」
俺はフロストドラゴンの背へ向け、炎の剣で三連撃を見舞った。
火属性が付加された剣は氷の鱗を溶かしつつフロストドラゴンの背に食い込み、確かな手応えを感じ取る。
――グギャァアアアアアアアアア!!
「くっ――!」
黒いローブの男はたまらずといった様子でフロストドラゴンの背から飛び降り、雪の上に音もなく着地する。
そして遅れて断末魔を上げながらフロストドラゴンが地面へと叩きつけられ、大きな音を響かせた。
「やったぁ! さっすがアリウス様!」
「まさかそこまで【称号士】の能力を使いこなせるとはな……」
翼を広げたままのリアの声が上空から響き、俺は黒いローブと同じ地上に降り立つ。
そうして、そのまま緊張を解かず、剣を構えたままで黒いローブの男と対峙した。
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