第10話 海路
「それじゃあ、元気で過ごすんだぞ」
「お姉ちゃん達元気でねー!」「また遊ぼうねー!」「お兄ちゃんによろしくー!」
「ばいばーい……さて、皆行っちゃったね。ノーちゃんはお別れ言わなくてよかったの?」
「別に、僕が声をかけなくても元気に過ごすでしょ」
晴れた日の朝早く、ハグラァドに連れられ保護した子供達が乗ったタガティマ行きの船を二人は見送っていた。
「冷たいなぁノーちゃんは。さて!それじゃあ私達もこの後出発だけど、ノーちゃん忘れ物はない?準備はできてる?」
「無いよ!これで昨日と合わせてこれ何回目だよ!ったくもー……」
「いや、ルシィーナ殿の言う通りでござるよ妹殿。1度旅立てばそこには基本戻らぬでござるからな」
「あ、天裂さん」
「こんにちはでござる。それに最近海賊が出たとか、ここからコラルジハルラへの海路には大型の魔物が出るそうでござるから、準備しておいて損は無いでござる」
「へー、海賊ねぇ。まぁあの船はハグラァドが居るし大丈夫だと思うけど、僕達の船にも出ると思う?」
「さぁどうだろう?でもノーちゃんなら大丈夫でしょ」
「それがそういう訳でも無いかもしれぬでござるよ。噂によれば海賊は神出鬼没な上、鉄の船を持っているらしいでござるよ」
「へぇー。是非とも手合わせしてみたいものだよ」
天裂に海賊の情報を伝えられ、ノートゥーンが逆にやる気を滾らせていると、遠くに大きな船影が見え始める。
「ハハッ、血気盛んでござるな。さ、我らの船もそろそろ着くようでござるし、貴殿らも最後の準備と世話になった者がおれば挨拶をしてくるでござるよ」
「……ってことらしいけど、どうする?」
「まぁ、あの受付のエコーくらいは挨拶しといていいんじゃない?」
「ん、そうしよっか」
ノートゥーンとルシィーナはそう言い合うと、最後の準備と挨拶を終えるべく足早に街へと戻るのだった。
ーーーーーーーーーー
「さて、海賊の噂やら、海路には付き物の水性魔物との戦闘はどこへやら、もう間もなくコラルジハルラに着きますが、お2人は準備はよろしいですかな?」
「あ、マシュウさん。私達の準備は大丈夫ですよ!そちらは?」
「いやぁー、同室の者が片付けベタでしてな。今日は朝から片付けさせていた所であります」
「へぇ、あの天裂さんが……ちょっと意外でした。でもノーちゃんも私が見てないと結構……ノーちゃん?」
カルラドアコアの港を出航し数日が経った頃、コラルジハルラ周辺の流氷多い海の真ん中から、遠目に薄ら見える港町を見ながら二人はそう話してた。
しかしからかい目的で一緒に居たノートゥーンに話を振ったルシィーナは、先程からノートゥーンが黙り込んでる事に気が付く。
「……ノーちゃん?どうかしたの?」
「……来るよ」
「へ?」
「来るって何が──────?!」
クゥオオォォォォォォオオオオン!!
「なな!なにあの大きいの?!イカ!?タコ!?」
「ほぉ、クラーケンでござるか。珍しい物が現れたものでござるね」
「て、天裂さん?!あ、あれって!」
「クラーケンでござる。カルラドアコア、コラルジハルラより北の海に住まう水性魔物の超巨大種でござるが……なぜ北方大陸間海峡に?」
「わかりませんが……あの頭、傷が多い所を見ると何かに住処を追われた可能性がありますね。しかしながら、こんな所にあれ程の魔物が出て貰っては困りますね」
一応は数百メートル先に現れた巨大なその魔物を見て臨戦態勢を整えていたノートゥーンの前に天裂とマシュウはそう言いながら立つと、それぞれ武器を取り出す。
「……?二人?」
「ま、お二人の力はあの依頼達成で充分あると分かってますからね。ここらで我々も力を証明しておかねば」
「左様。という訳で、お2人はもしもの際のサポートを頼んだでござるよ。では、マシュウ殿!」
「了解しました!」
示し合わせたかの様に二人はそう言うとそれぞれ船の右舷と左舷に別れて飛び出し、流氷を飛び移りながらあっという間にクラーケンへと距離を詰めていく。
「超巨大種と手合わせなんて、冒険者やってて一生に1度あるか無いかですが……基本的に戦術は変わらない。
動きを止めて、攻撃手段を封じ、弱点を叩く!更に幸いここは海上、私の親和性の高い属性なら束縛には苦労しません!
「あれは……魔法?」
「いや、魔術だよノーちゃん。ほら、きちんと陣がある。でもあんな大きな陣……マシュウさん、あんな外見で相当な魔力と技術の持ち主なんだ」
「ふーん。でも、見所はここからみたいだよ。シィー」
水面に浮かんだ電撃を放ちクラーケンを捕縛する巨大な黄色の陣を前に、発動させたマシュウについて評価してた二人は動き始めたもう1人に目を向ける。
「では、ちょうどいい傷もある事でござるし……
クゥァァァァアオオオォォォオオオン!!!!
「わわっ!天裂さん頭穿いて出てきたよ?!」
「凄い。あの一瞬で眉間に一番近くて一番傷が深い場所を何回か切りつけてる」
天裂が腰の刀に手を当てた次の瞬間、血飛沫が上がったかと思うと頭を貫いて反対側から天裂が飛び出してくる。
そして天裂が飛び出して来た後貫かれた場所が的確だったからか、クラーケンは暫く触手を暴れさせた後に力尽きた。
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