竜を求めて三千里!〜少女と竜の異世界漫遊記〜

こたつ

プロローグ

 昔昔、全ての事象が伝説と言われる程昔。


 この世界には「竜」と呼ばれる生き物が存在した。


 ある「竜」は火や水を操り、目の前の敵を滅し、またある「竜」はその巨躯と膂力をもって眼前の障害を排除した。


 しかしそんな千違万別な「竜達」は数千数万の年月が経つ内に、大地を木々が覆い隠した様に何処かへと姿を消してしまった。


 ーーーーーーーーーーーー


「んんぅ…………なんか変な夢みたなぁ……」


 朝霧が立ち込めるしっとりと濡れた空気の中、もぞりと太陽の様に煌めく緋色の髪を引いて起き上がった少女は、そんな事を呟きながら大きく欠伸をする。


「あらまた……まぁ、寝心地良いから悪くはないんだけど……ほら起きて。もう朝だよ」


「後1日……いや、もう1週間…………なんなら1年……」


「そんなに眠いなら寝てていいよ。でも朝ご飯は食べられないね」


「朝ご飯!」


「うわぁっ!?」


 何処からか聞こえる声に彼女がそう返事をすると、彼女の下にあるもふもふが急に動き初め、するすると彼女を滑らせて下ろすと、ぐぐぐと縮んで人の形になる。


「んー……しょっ…………と。変な所はない?」


「ん、大丈夫だよノーちゃん。今日もいつも通り可愛いよ!」


「だから可愛いって言うのやめてよシィー。確かに僕は体こそ女だけど精神的には男なんだから」


「それでも可愛いものは可愛いんだもの」


 もふもふの塊から人の形になった金と白の入り交じった髪のノーちゃんと呼ばれた少女は、頬を膨らましながら緋色の髪の少女シィーにそう返す。


「それにしても、やっぱりいつ見ても凄い変化よね」


「まぁそれが僕の司る物だし、それより朝ご飯まだー?」


「はいはい、今作るわよ」


 早く早くと鱗に覆われた尻尾を振って急かしてくるノーを見て、シィーはクスクスと笑いつつまだ濃ゆい朝霧の中、シィーは朝食の用意をはじめるのだった。


 これはとある緋色の髪をもつ少女と、様々な色や姿にその身を変える竜の翼と尻尾をもつ少女の千変万化な旅の物語である。

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