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 俺は近い内、多分死ぬ。


 ヤバいものに目をつけられた。目をつけられたってのも変な話かもしれない。だって奴にそういう意志があるようには見えないんだから。


 コズミックホラーって知ってるか。そこそこ有名な作家が提唱したジャンルでさ、そんな小説の、陰気な挿絵にでも入ってそうな見た目だよ。

 人間のありとあらゆる体液と内臓と骨とをぶっ壊れたAIが好き勝手に組み替えたらああなるだろうな。


 ところで人間が生み出したAIが、人間に成り代わり新たに何かを生むことはあると思うか?

 神は己の姿に似せて人間を作ったそうだが、人間はAIを人間にそっくり似せることは出来なかった。だったら、AIが生み出すナニカは、一体どんなおぞましい姿をしていると思う?



 悪い。どうにか気を紛らわしたくて。

 頭がどうにかなってしまいそうなんだ。



 最初は電車の椅子の下だった。何で誰も気づかないんだって思ったよ。

 あれがいるのに。誰も気にもしないんだ。革靴とハイヒールが、粘液でべたべたしたそれを踏みつけている。何でか分からなかったけど、気の毒だと思った。


 今にして思えば、全く無意味な同情だったよ。

 どう見たって知ってる生き物じゃないし、感情や感覚どころか欲求だってあるとは思えない化け物だ。何がどうして、俺は気の毒に感じたんだろう。


 とにかく、あいつを初めて見たときは、そのまま何事もなく電車を降りることが出来たってことだ。当然、それで終わりじゃあなかったんだけどさ。


 ああ、少し落ち着いてきた。文章を書いて、整理をつけるのは良いアイデアかも知れない。これから毎晩、日記をつけよう。


 また、明日。

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