第22話 「レディに対してそんな態度をみせるモノじゃなくてよ」
その後、
ヤクモやスズネの存在や、誓矢の力の話などに関わる人目を
ちなみに、ヤクモたちの話によると、この神社はできてから日も浅く、
「そういえば、神様たちも怪物に襲われることはあるの?」
とある日の午後、偶然、手の空いた三人が公園で顔を合わせたとき、こんな話題になった。
「せやなー」
と、他人事の様に、どこからか取り出した扇で顔をあおぐスズネ。
「相応の力を持つ神様やったら
「ってゆーか、ぶっちゃけ眷属どもにとって、オレたちのような位の低い神はごちそうみたいなモノなんだよ」
そういいつつ、ユーリの後頭部に八つ当たりの蹴りを入れるヤクモだったが、案の定、反撃を喰らって地面に落ちていく。
「って、ことははじめてヤクモとスズネに会った時って、あれは襲われた女の子を二人が庇っていたんじゃなくて、二人が襲われていたところに女の子が巻き込まれていたってこと?」
「まぁ……そういう見方もありますなぁ」
「ってゆーか、どっちも同じようなモノだろ!」
「全然違うだろ」
しらばっくれようとするスズネに続いて、抗議の声をあげるヤクモ。だが、ユーリは容赦せず頬を引っ張りにかかる。
誓矢はそんな彼らをよそに考え込んだ。
「じゃあ、怪物──眷属の中には神様の力を取り込んだ強力な存在が発生する可能性もあるということ?」
その問いに、ハッと顔を上げるユーリ。その手からヤクモが地面へと落ちていく。
そんな相方をスルーしてスズネが冷静に誓矢の懸念を打ち消した。
「そのあたりは、あまり心配せえへんでもいいのとちゃいますか。眷属の餌食になってしまうような神様は下級の力しかもってないさかいに」
スズネ曰く、たとえ眷属に襲われ、その力を喰われてしまったとしても、良くて誓矢たちガーディアン──異能者たちと同じレベルの力でしかないということだった。
「でも、力を奪った眷属が、さらに他の神様を、その──喰っていったら、どんどん強くなるんじゃ」
「それは確かにそうだけどな」
地面から浮き上がって復活したヤクモがチッチッチと指を振る。
「基本、ほとんどの神様は神界で日々を過ごしていて、人間界に降りてきてる神様は、よっぽどの物好きってレベルで珍しいんだよ」
「オマエはよっぽどの物好きってことか」
「だまれ」
ユーリのツッコミに、ヤクモはジロリとガンを飛ばしてから、コホンと咳払いをして言葉を続ける。
「まあ、この国では
スズネが説明を引き継いだ。
「──むしろ、注意しないといけないのはセイヤはんたち、神の力に覚醒した異能者の面々やおまへんか?」
ガーディアンが怪物に倒され、力を喰われれば、それは下級とは言え神の力を怪物に奪われることになると言うこと、それに……
「っていうか、一番危険なのはセイヤじゃね? フェンリルのそのでっかい力、まかり間違って眷属に喰われでもしたら、この国──といううか、人間界自体が詰みじゃね?」
特に意識していない軽い発言だったが、そのヤクモの言葉にあたりの雰囲気がドスンと重くなる。
「……たしかに、そうかも。私たち、今まで気軽にセイヤくんの力を頼りにしていたけど、それって危険と背中合わせだったのかな」
深刻な面持ちで視線を落とす沙樹。
ユーリも気づいていなかったと反省の仕草を見せる。
「セイヤの力は無敵──ぶっちゃけチートだと思ってたからな。ちょっと考え方を変えないといけないかもだ」
「二人とも……」
我がことのように真面目に受け止める沙樹とユーリに、誓矢はあらためて感謝しつつ、と、同時に自分自身の心の奥から、今まで無かった恐怖心が沸々と沸き起こってくるのを感じていた。
○
その後、しばらくの間、誓矢たちのいる避難所に怪物の襲撃はなかった。
今は姿を消しているヤクモたちが言うには、誓矢のフェンリルの力に怪物たちが気づいていて、警戒し、近くに寄ってこようとしてこないのではないかということだった。
「そう言えば、青楓学院への怪物の襲撃も少なかったらしいしね」
「じゃあ、セイヤがいなくなったこれからは、襲撃回数が増えるかもしれないってことだ」
そう沙樹に応えたユーリは「お疲れさまなこった」と肩をすくめてみせたが、その表情には同情心のひとかけらも見えなかった。
「で、これからどうするんだ?」
ユーリが誓矢と沙樹にあらためて向き直る。
避難所に腰を落ち着けてから数日、そろそろ、今後のことを決めなければならない。
その問いかけに誓矢は迷いを隠しきれない様子で答える。
「今はまだハッキリと決められないんだ。本当なら家族と合流することも考えるんだけど──」
「やっぱり、学校のことがまだ気になるってか?」
皮肉っぽく聞き返すユーリに、素直に頷き返す誓矢。
そこへ、突然、若い女性の鋭い声が割って入ってきた。
「あなたが
長い金髪を風に揺らしダークスーツにサングラスという出で立ちの、いかにもな雰囲気の女性と、同じような服装の数人の屈強な男性たち。
ユーリが誓矢と沙樹を庇うように前へ進み出た。
「おい、アンタたちなんのつもりだ。事と次第によっては人を呼ぶぞ」
「あら、怖い」
女性はユーリの額を人さし指で押し返す。
「レディに対して、そんな態度をみせるモノじゃなくてよ。安心して、危害を加えるようなマネはしないから」
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