第196話 元勇者な奥様の涙
「あれ? 一樹先輩は?」
美紀は、自身の首を傾げながら、エルへと問うのだよ。
「……ん? えっと、あの、えっとねぇ?」と。
エルは、夫一樹の元カノの一人だった美紀に問われて、どう答えたらいいのかわからず、対処ができずに、自身の碧眼の瞳を泳がせ、落ち着きない様子で誤魔化してみようと試みるのだが。
相手は、若く、少女のように見えても、もう人妻であり。
エルよりも恋愛経験の多いいベテラン奥さまだから、何故エルと一樹の二人が一緒に肩を並べ歩いていないのかは、直ぐに悟る事が可能だから。
「エルさん、もしかして、一樹先輩と喧嘩をしたの?」と。
あっさりと美紀に悟られ、問われてしまうのだ。
だからエルは手を、指をモジモジと落ち着きない様子を見せ、俯き加減で、「うん」と、頷くのだ。
リムの問いかけに対してね。
だから美紀は、
「やっぱり、そうだったんだ!」
と、声を漏らすと。
「先程ね、エルさんを遠目から見て、確認をした時にね。何だかエルさん元気が無いなぁ。と、思いながら見ていたの。だからお節介かなぁ、とも思ったのだけれど。ついついと声をかけてごめんね」と。
美紀は軽く頭を下げながらエルへと言葉を返してきたのだ。
だからエルは、慌てふためきながら、自身の手を振り。
「いいえ、いええ。美紀さん、大丈夫だから。気にしないで。(あっ、ははっ)」
と、笑って誤魔化しながら言葉を返す。
そしてエルは、美紀へと言葉を返し終えれば、何故か急に、今迄我慢、耐え忍んでいた悲しく、切ない感情が、急に心の奥底から湧き出てしまい。
「……いや、はや、あっ、ははっ」と、言葉。
独り言を漏らしながら涙を浮かべ、自身の指で涙を拭い始めるのだよ。
一応は笑い、泣くのを我慢、耐え忍びながらねぇ。
まあ、そんな状態のエルだから、余程一樹との間に、何かしら大変な事が起きたのだろうと、美紀は悟ったから。
「エルさん、私で良ければ、話しを聞くよ」と。
美紀は目尻に溜まった涙を、指で拭くエルへと、優しく問いかけるのだった。
◇◇◇
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