第190話 見間違えだろう? (4)

「ふぅ~ん。そうなん? まあ、ええわ。あの外人のが飛んだか、飛んでいないかは、うちはどうでもええけぇ。どのみち検査が終えたら。あのと話しをさせてもらうけぇ、うちは……。じゃねぇ、バイバイ一樹~。うちは仕事に戻るけぇ」と。


 翔子は僕に手を振りながらスーパーマーケットのバックヤードへと向けて歩き出したのだ。


 だから僕は、お尻をフリフリ歩く、翔子の背に対して、大変に情けない声音を漏らしてしまうのだ。


「翔子、どうしよう?」と。


 でも彼女は、後ろを振り返る事もしないまま。


「うちは知らんよ。自分で考えぇ。うちが一樹の所に行くまでには、ちゃんと二人で話し、相談だけはしとってねぇ。お願いじゃけぇ」


 とだけしか、告げてくれない。


 くれないのだ。


 翔子の奴はね。


 そう、こんな切ない台詞しか、翔子は僕に告げてはくれないのだった。


 だからどうしようと悩む僕は、その後も仕事。


 販売に集中する事が出来ずに。


 その日は店長さんに告げて、早々に販売の仕事を打ち切り、片づけ。


 早目の帰宅の途につくのだった。



 ◇◇◇

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る