第161話 エルフな勇者さまとの、新婚生活が始まりました(5)

 まあ、そう言った訳もあるから。朝も早くから平然と起きる。起床ができる。軍隊生活が大変に長い。規律のある生活を続けてきた。元魔王軍討伐の総司令官だった奥さまに対して僕は、早朝4時。未だクリスマス前の冬場だから。陽が上がらない真っ暗闇の早朝に。


『僕は今日仕事だから』と告げたものだから。


 我が家の奥さまの、総司令官。大将的な、と、言うか? 大変に体育会系的な、大変に大きな声音の絶叫、嘆願のために。また近所の家々。アパートの部屋の照明が『パチパチ』と点き。照らし始めたのが窓越しから。我が家の将軍さま。大将さまにはわかった。理解ができたようだから。慌てて自身の可愛い唇を塞ぎ。


「御免なさい。一樹。あなた……」と。


 これまた大変に可愛らしいエルフの笹耳をシュンと垂らしながら俯き、謝罪。夫の僕へと大変に申し訳なさそうに告げてきたのだ。


 だから僕は、自身の頭を軽く振りながら。我が家の将軍さまへと、ではなく。奥さまに。


「うぅん、別にいいよ。エル。今から少しずつ、この星の生活に慣れていけばいいから」と。


【異世界ファンタジー】を、安易に理解ができない昭和世代の僕だから。家の奥さまのことをSF仕様の宇宙人さまだと未だ。この時、この時期は思っているから。


 こんな訳の解らない台詞、言葉を告げた僕だったのだが。家の奥さま自身も異世界と宇宙との区別が未だ良く解っていないので。夫の僕の言葉に合わせるように。


「うん」と、頷き。「ありがとう。あなた~」と。


 夫の僕が再度エルに魅入り。虜になるような、天女さまの笑みをくれたので。


「じゃ、エルも僕と一緒に仕事へといこうか?」と、告げたのだ。


「うん。行く。私も行く。行って、我が家の商いを覚えて。私も今後は、勇者ではなくて。商人になるのだから」と。


 夫の僕の目の前で『フン!』と、鼻息荒く。意気揚々と言葉を呟くから。


「がんばって、エル。頼りにしているよ」と。


 家の奥さまに告げてはみた僕なのだが。内心は。


(本当に大丈夫かな、家の奥さまは……。大変なことにならなければいいけれど……)と。


 僕はついついと危惧。心の中で思ってしまえば。


「大丈夫だし。心配ないし。暴れたりしないから」(プイ)と。


 僕の心の中が直ぐに読める奥さまが、この通りで拗ねてしまった姿、容姿が映るから。


「ごめね。エル。許してください。奥さま」と。


 僕はエルの御機嫌が麗しくなるまで、何度も『ごめんなさい』と、謝罪を繰り返し続け。二人の身支度が終われば、アパートの下。坂を少し下った場所の駐車場に駐車。おいてある。マツダのエアロ仕様のボンゴへと、僕達夫婦は仲良く向かうのだった。



 ◇◇◇◇◇


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