最終回 年越しのにしん

【登場人物】

おき  ずま(17歳)……自宅は竹細工屋。

            大晦日に「年越し

            蕎麦」の出前を手

            伝っている。

とう もと(17歳)……吾郷の幼馴染み。

            自宅は代々続く髪

            結床。同。

みなみ  たか(17歳)……同。自宅はテイク

            アウト専門の甘味

            処。同。


多岐たきがわとせ(17歳)……同。自宅は蕎麦屋。

            吾郷達が「年越し

            蕎麦」の出前を手

            伝ってくれている。

よし まさ(17歳)……同。自宅は洋館。

            B&B(ベッド&

            ブレックファスト)

            を経営している。

            大晦日は千歳の店

            を手伝っている。

えき明日香あすか(17歳)……同。自宅は三味線

            司。同。


 「最終回 年越しのにしん」は、公開中の

作品『ここはカイラーサ』の登場人物と設定

で制作しました。


──────────────────────

① 八坂神社・表参道(夜)

   ──俯瞰→やや俯瞰になって。

   T『京都』

   ライトアップされている八坂の塔。そ

   の先に清水寺が見えている。人通りが

   多い。その中に基樹の姿。白い息。早

   足で歩いて来る。

   T『大晦日』


② 蕎麦そば屋・前(夜)

   ──低めの俯瞰で。

   軒に『蕎麦処』の暖簾のれん。基樹、それを

   くぐり乍ら戸(入口)を引いて、

もと「こんばんはー」


③ 同・店内(夜)

   出入口を避けて立っている基樹。おか

   ちを持った隆史、出て行き乍ら、

たか「(基樹に)来た来た~」

基樹「(隆史に)いってらっしゃ~い」

   ──真横からの視点で。

   混んでいる店内。賑やかな声。各テー

   ブルの蕎麦どんぶりから温かな湯気。客達、

   美味しそうに年越し蕎麦(にしんそば)

   を食べている。その店奥(下手)のカ

   ウンターに千歳。三角巾にエプロン姿。

   基樹、カウンターに歩き乍ら、

基樹「遅くなってゴメ~ン」

とせ「お店はもうええの?」

基樹「うん。後は、父さんと兄さんがするっ

 て」


④ 同・厨房(夜)

   カウンター越しに見えている店内。店

   側に並んでいる基樹と千歳。その手前

   (厨房)から、できあがった年越し蕎

   麦(にしんそば)がカウンターに置か

   れる。と、店側から受け取る明日香。

   三角巾にエプロン姿。

基樹「僕、どこに行ったらいい?」

──────────────────────

   千歳、カウンター上部に掛けられてい

   る出前伝票を手にして、

千歳「じゃあ、山田さん」


⑤ 同・店内(夜)

   千歳達の傍に吾郷。岡持ちに年越し蕎

   麦を入れている。

千歳の声「ここの山田さんね」

基樹の声「解った」

   吾郷、ふと手を止める。と、

   年越し蕎麦を手にしている吾郷。頭上

   に裸電球がパッと灯って(漫画調)、

ずま「ひらめいた!」

   その傍に雅美。三角巾にエプロン姿。

   手に年越し蕎麦。

まさ「(いぶかしげに吾郷に)何を」


⑥ 商品紹介

   美味しそうに湯気の立っているカップ

   麺(そば)に、ふっくら甘辛炊きの大

   きなしいたけと半月切りの大き目かま

   ぼこが乗って、

吾郷のN「じっくり炊き上げた北山きたやまのしいた

 けと舞鶴まいづるかまぼこ!」

   続いて、一口サイズのほうれん草と九

   条ネギが乗って、

吾郷のN「山城やましろのほうれん草に、九条ネギ!」

   最後、一番上にドドーンと大きな棒炊

   きニシンが乗って、

吾郷のN「そこに、北前船きたまえぶねが運んだニシンを

 乗せて!」

   T、大袈裟な程の大きな文字で、ドン

   ! ドン! ドン! と一文字ずつ、

   T『超豪華!』

   手のカップ麺をぐいっと突き出してい

   る吾郷。蓋に『京風 年越しのにしん』

   『年末限定発売!』の文字(『京風』

   を強調)。自信満々の笑顔で蓋を指し、

吾郷「(傍点強調して)マルちゃん『 

 年越しのにしん』! 年末限定発売です!」

──────────────────────

⑦ 蕎麦屋・前(夜)

   ──低め俯瞰で。

吾郷の声「って、あってもえぇンちゃう~?」

   暖簾のれんくぐって出て来る基樹。手に岡持

   ち。

基樹「(吾郷を無視して)行って来ま~す」


⑧ 八坂神社・表参道(夜)

   ──やや俯瞰→俯瞰になって。

明日香あすか「(0FF)気をつけてね~」

雅美「(0FF)えぇから出前に行けッ!」

   人通りが多い。その中に基樹の姿。白

   い息。岡持ちを持って歩いて行く。吾

   郷のセリフに蕎麦屋の客達、「あはは

   はは」と笑い声。

   T『今年も一年、ありがとうございま

    した』

   ライトアップされている八坂の塔。そ

   の先に清水寺が見えている。 

   T『来年も変わらぬ御贔屓を、どうぞ

    よろしくお願いいたします』

   SE『ゴーン』と遠くに除夜の鐘。


⑨ マルちゃんマーク

   フレームの外から一斉に顔を出す吾郷 

   達。それぞれ手にした『赤いきつね』

   『緑のたぬき』を見せて、

吾郷達「(元気よく)おッしまーい!」

   SE『ドドンッ!』と軽快な太鼓の音。


       最終回『年越しのにしん』終

──────────────────────


注:シーン⑥の「棒炊きニシン」とは、身欠

  きニシンの甘露煮の事です。

  この「棒炊きニシン」を蕎麦とあわせた

  京都の「にしんそば」は、明治に入って

  からの京の名物料理ですが、現在では年

  越し蕎麦の定番としても親しまれていま

  す。

  なお、ニシン漁で栄えた北海道の江差町

  や留萌市、小樽市では、京都とは一味違

  った郷土料理の「にしんそば」を食べる

  事ができるそうです。


               佐久良 燎

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