ひとり

夕暮れを走るバスのなかから

黒いシルエットに変わっていく

ビルをぼんやりと見ている


(寂しさになんて負けないと

そんなことを呪文みたいに

胸の中で繰り返して)


辺りの景色も

街灯やイルミネーションを残して

闇にのみこまれていく


(どうしたって夜はやってくるのだと

そんな当たり前のことを

今更、気がついたりする)


バスは走り続ける

流れ去っていく景色


ちいさな三日月だけが

追いかけてきてくれる


(なんでもないような顔の下で

心はひび割れて)


バスは走り続ける

停留所には、まだ着かない


ちいさな三日月だけが

追いかけてきてくれる


バスは走り続ける


わたし、ひとりだけを乗せて

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