真冬の蝉

まぶたを開けた途端に忘れた夢は

季節が夏だったことしか

覚えていない

ジージーというような

これは耳鳴り


静かな真夜中に

わたしの内から聴こえる蝉の声

こめかみの鈍い痛みは

不安定な

気圧のせいだろうか


眠れなくなってしまった

耳の中の蝉は鳴き止んでくれなくて

諦めたわたしは

この真冬の蝉と

暫く付き合うことにする


牛乳を温めて

蜂蜜をほんの少しだけ垂らす

さじで混ぜてから

こくんとひと口

ふーっと息を吐く


夢の中の季節が夏だったのは

この耳の中の

蝉のせいだったのかもしれない

夏は苦手なのに

夢で聴く蝉の声は何故懐かしいのだろう


ゆっくりと牛乳を飲み干して

やっと訪れてくれそうな眠りの精が

何処かに去ってしまわないうちに

温もりの残る布団にもどる

遠く近くに聴こえている蝉の声耳鳴り


またあの想い出の夏の

夢をみれるだろうかと

ぼんやり思いながら

うつらうつらと

わたしは夢の中に沈んでいく

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