第156話 ウォンの策(5)

 元家臣達二名の断末魔が、ウォンの耳へと聞こえてきたし。倒した。殺害をしたと実感、手ごたえもウォンにはあった。


 だから彼は、己の、目の前の、前方の壁の、一画が崩れれば。そのまま、「うぉ、おおおっ! 退けぇ、えええっ!」、「俺のやること。やろうとしていることを、邪魔をするなぁあああっ! お前達──! 俺が本物の此の国の王、ウォンだぁあああっ! だから本当に王、主の為に、お前達はぁあああっ! 道を開けろぉおおおっ! 開けてくれぇえええっ! お願いだぁあああっ!」と。


 ウォンは叫び、己の持つ、握る。鋼の戟を更に『ブゥ~ン!』、『ブゥ~ン!』と、風を切る音を立てながら勢い良く。この場から立ち去る。逃げようと試みる。


「そうは、いくかぁあああっ! お前達、自分の身が危うくなろうとも怯むなぁあああっ! 奴は! ウォンは! 俺達の主、男王健太に害を成す者だぁあああっ! だから、この場から生きて逃がすなぁあああっ! 奴と刺し違えてでも必ず倒すの、だぁあああっ! ウォンを! ウォンの奴ぉ、おおおっ!」と。


 親衛隊の隊長であるダイは声を大にして叫び、自身の臣下の者達へと下知を下す。元主であるウォンに対して怯むな、恐れるなと鼓舞をしながら叫ぶのだ。


 それも今ウォンが、振るい下ろした戟の刃の餌食となり他界をした家臣の鋼の戟を拾い。彼等の弔い合戦、争いのように。拾い、握った戟を、自分達へと背を向けて逃走、逃げ始めている。ウォンの足へと向けて、投げ槍のように放ったのだ。


 〈ドン!〉


 〈ガン!〉


 〈バタ〉


「いっ、つつ……。痛。痛い……」

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