第152話 ウォンの策(1)
「あっ、ああ、うん、あああっ、うん、あああ~」
「いい。いいよ。ミライ。ミライ~。もっと~。もっと~。お願いだよ~。僕を~。僕のことを愛して~。愛してよ~。お願いだからぁ~」
「はん。はい。はぁ~。こ、こう。こうですかぁ~。殿下~。殿下ぁ~。こんな感じで宜しい。うん、ああっ、ああ~。宜しい~。宜しいでしょうかぁ~。閣下ぁ~?」と。
淡く、甘く、官能的な吐息、息遣い。声音……。
そう、嬌声と言う奴を安堵感からだろうか? と、言うよりも。自分達二人が獣のように優艶に甘え交わる後ろに建つ、質素でみすぼらしい。陽の光も部屋の中に差し込まないような、真昼でも薄暗い部屋の中で横たわる男、ウォンなのだが。二国の統一王である健太と、側室の一人であるミライが約一時間も前に、入念に部屋の中を小窓から観察した時に、ウォンは全く反応を示さない。していない状態だから。衰弱死をしたのではないか? と、只今野外で獣化している二人は、思ったみたいでね。
特に健太は、己の最大のライバル、主敵は、この世界の自分自身であるウォンだと思っているから。
彼が、ウォンが死んだ。骸になった安堵感……。
そして嬉しさの余りだろうか?
野外、他人の目に、安易に触れそうな場所での夫婦の営み、交わりを嫌う。拒否する傾向がある健太が、自身の側室の一人である。羽、翼のある小鬼族。インプ、間者の長であるミライの優艶、艶やかな誘いに応じて、彼は激しく腰を動かし、ミライと仲良く獣化しているようなのだが。
う~ん、実はね? 牢屋、牢獄と言った方が良いこの部屋で横たわる。横たわっているウォンなのだが。実は、彼は生きている。死んで骸にはなってはいないのだよ。
そう。今日も飽きもせずに視察、観察にくるだろうと思われる健太を騙す為に、数日前から、衰弱仕切った者に成りすましていたのだ。
この薄汚い小屋から脱走を図る。そして、自身の愛する女、宝、財産を取り戻し。終えれば決起! 今度こそ、二国の男王健太の首を刎ねて、此の国の宮殿内にある祭壇へと飾り。宴、酒のつまみ、魚にしながら苦笑、嘲笑ってやろうと思い。虎視眈々と好機を窺っている。
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