第130話 可愛い王様の嫉妬と怒り!(22)

「ん? ああ、ウォン、彼、彼はね……。まあ、あれだよ。余り暴れ抵抗をするようならば。その場で直ぐに切り殺してもかまわないよ。エリエさん……。その当たりは君の、僕の妃であるエリエの判断に任せるから上手くやってくれるかな? エリエ……」と。


 二国の少年王である健太は、『クスクス』と、不気味に笑みを浮かべ微笑みながら。己の右翼、妃の一人であるエリエへと下知を下す。

「うん、分った。御方……。じゃ行ってくるよ」と、エリエ姫は健太に告げると。己の、騎乗する。駆る巨大な馬を反転させる。させるとそのまま、「はい、やぁ」と、愛馬に声をかけて、己の主、健太の許から疾風迅雷の如く駆け抜けていく。己の主を裏切った裏切り者に対して天罰! 天誅! を与えるために向かうのだ。


 そんなエリエの様子をシルフィーは顔色変えながら凝視、だけではない。


「あ、あなた? アイカ(あの娘)とウォンは、私(わたくし)と、あなた~。あなたなのに……。あなたは……」と、何故ウォン。この世界の自分自身の転生者まで殺そうとするのか? と、無言の問いかけを二国の皇后、太后であるシルフィーは、己の雪のような肌を青く染めながら問うのだ。


「……ん? この世界に僕は二人もいらない……」と。


 二国の美少年王である健太は、いつも日輪のような笑みを浮かべている優しい顔ではなく。まさに、この世に、世界に降臨した魔王、覇王のような恐ろしい形相で、己の永遠の妃であるシルフィーへと重たく。冷淡な声色で荒々しく告げる。


 それを聞きシルフィーは、「でも……」とだけ漏らすのだが。本当に怒りが頂点に達している彼、夫に。何を言っても無駄だと知っているし。こうなった時の夫は、女神シルフィー自身も怖くて仕方がない。


 だから彼女は、それ以上の台詞を何も言わない。告げない。漏らさないようにするだけ心がけるようにしたのだったのだ。



 ◇◇◇◇

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る