第62話 アイカの不満(8)

 そう、高貴な女性は、元々自分自身の物、所有物だったと、愛しやまない容貌、容姿、様子──。


 今でも自分の物だ。愛している。愛しているのだよ。こんなにもお前のことがと、やさしく、淡く、甘く、囁き呟いてくれる。緑の肌の色合い騎士(ナイト)のこと。元カレだったウォンの身の上……。




 そう、自分の身が危ういのを危惧、心配をするのではなく。元カレだった愛してやまない彼の身の上が心配。心配。危惧してやまないのだ。


 だからカレだったウォンに対して今直ぐ。直ちにこの場。戦車の中から退去、出て降りるようにと優しく、淡く、甘え、嬌声と吐息を告げ吐く、を。今迄通りで漏らし呟くではなく。


「ウォン! もういい加減にして! しなさい! 直ちに、この乗り物から退去、出ていきなさい! これは、此の国の女王アイカとしての命! 下知である!」と。


 緑色の肌の色を持つ、麗しい高貴な女性──。


 そう、此の国の男王、支配者、覇王である若き王健太の妃、女王である筈のアイカの口から荒々しく吐かれるのだ。


 何故か、女王が愛する漢は、此の国の王、アマゾネス達のアイドル、セックスシンボルであり。覇道を突きすすむ若き少年王健太ではなく。此の国の一領主でしかないウォンへと注がれているのだよ。

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