第8話 両親に知られて、どうしよう!?

 ボクは飛び起きて、両親に事情をかいつまんで説明する。 

 もちろん、本当のことは話さない。


 でっち上げたストーリーはこうだ。


『二人は、バイト先で知り合った。バイト先で声をかけられていた彼女を助けたら、懐かれた。相手がしつこいので、交際しているフリしてくれと頼まれた。気がつくと、相思相愛になっていた』


 これで、理解してもらえるだろうか?


 腕を組みながら、父がため息をつく。


「にわかには、信じがたい」


 ですよねぇ……。


「ノゾムのような陰キャに、こんなかわいい彼女ができるなんて」


 この陰キャは、あなたの息子ですよ。


「ホントですよ。二次元にしか興味がないって、二〇年以上も彼女なしを貫いてきたのに」


 ハンカチで目元をおさえながら、母も鼻をすする。


「どうせ部屋も散らかっているのだろうと、様子を見に来たら。ゲーム廃人になっていなかったことも、立派な成長だな」


 ボクは、両親から相当なロクでなしと思われていたのだろう。


 部屋を出た原因も、三兄弟同居で「自分の部屋が欲しかった」からだし。

 弟は学生なので仕方ないが、兄貴は「家賃払う金を節約したい」って実家通い。


 頭にきて、ボクは家出同然でウチを出た。


「で、ノゾム。真剣なんだな?」

「は、はい」


 正座し直して、ボクはうなずく。


「一緒に暮らすってのは、思っているより簡単ではない。困難も待ち受けているだろう」

「はい。二人に迷惑はかけないよ」

「違う。このような迷惑なら、大歓迎だ」


 父が首を振った。


「セーナさんでしたか。もっと頼っていいのよ」


 母も、セーナさんの手を取って優しく言う。


「そんな。ボク一人で解決する問題だから」

「二人の問題でしょ? 相談できる相手がいると、だいぶ違うから」

「ありがとう母さん」


 その日は、久しぶりに両親の手料理をいただいた。


「もうすぐ大学卒業だが、ノゾムは何かアテはあるのか?」


 食後、父から尋ねられる。


 これまで、なんの計画性もなかった。

 しかし、セーナさんと過ごすために。


「ウェブデザインの仕事に就こうかと、思っているよ」

「よかった。ちゃんと考えているんだな。やはり所帯を持とうとすると、意識が変わるものだな」


 父が一人で納得して、帰っていった。

 

 これは、まずい。本格的に仕事を探すか。


 セーナさんを養う前に、自分が潰れてしまう。


 この生活を本物にするために、ボクは必死になった。



 一日一日が、怒涛のように過ぎ去っていく。



 そんなあるときのことだ。

 一通のメールが、ボクのPCに送られてきた。


『セーナさんへ。ゲームに戻ってきませんか?』

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