我が家の子どもの名前の付け方

さち

我が家の子どもの名前の付け方

 名前は生まれてくる子どもへの両親からの最初のプレゼントとよく言われる。名前の付け方には色々あると思う。好きな漢字、好きな音、好きな言葉、どういうふうに育ってほしいのか、どんな人になってほしいのか。名付けは一大イベントだ。

 我が家での子どもの名前の付け方は少し変わっていたと思う。

 まず、誰でも読めること。子どもが書くのに苦労しない字であること。そして、名前の由来を尋ねられて答えられること。これは私の小学校の時の体験から要望した。

 私が小学校の時、親に名前の由来を聞いてくるようにという授業があったのをよく覚えていた。私は自分で納得できる由来のものだったが、その授業を思い出して、もし子どもが由来を聞かれても困らないようにしようと思った。

 こういった最低限のことを決めて、私と夫、双方で名前の候補をいくつか考えた。

 私は名付けのアプリを使って画数などを調べながらいくつか考えたが、夫も同じように画数を調べながら名前の候補を決めていた。そして、性別もわかり、胎動も激しくなってきた頃、本格的に名前を決めることにした。

 互いに候補を出し、知り合いや近所にいる名前は弾く。ああでもないこうでもないと言いながら、夫が選んだ名前、私が選んだ名前、選びながらこれもありかと考えた名前と最終候補が3つに決まった。あとは生まれて顔を見てから決めようかと話していたが、ここで私の悪戯心が疼いた。

 子どもはお腹の中でも声が聞こえているとよく聞く。だから、この会話も子どもは聞いてるかもしれない。胎動はあるから寝てはいないだろう。将来自分が呼ばれる名前だ。自分が決めてもいいじゃないか。そう思って、夫に提案してみた。

「それぞれの名前で呼んでみようか?気に入った名前があれば反応があるかもしれないよ!」

この提案に夫も興味を示したので、私は最終候補3つの名前それぞれでお腹の中の子どもに呼び掛けた。

 結果、なんと3つのうちのひとつに反応したのだ。私が考えたのでも夫が考えたのでもなく、由来はいいけど漢字の画数に難があると由来が大きく変わらないように漢字を変えたりしながらこれもありだとふたりで考えたもの。その名前で呼んだときだけ、子どもはドンとお腹を蹴ったのだ。

 私も夫もまさか本当にひとつだけに反応があるとは思わなくて、興奮してもう一度やったけどもうどの名前にも反応はなかった。お腹の中で子どもは呆れていたのかもしれない。でも、反応があったのは事実。選んだものは誰でも読めるし由来も画数もバッチリ。何より将来、自分で名前を決めたんだぞと言える。

 こうして子どもの名前は決定した。親からの初めてのプレゼントは親と子どもの共同作業になった。

 ただ、実際子どもが生まれてその名前をつけたとき、ほんの少しだけ困ったことがおきた。誰でも読めるようにと考えたから読みを間違う人はいない。ただ、画数を良くするのに漢字をいじった。そのせいで手紙の宛名や診察券で間違われることが数回あった。例えば、「ろう」と読む漢字は「郎」と「朗」があり、本当は「朗」だけど一般的には「郎」のほうが多いから間違われる、みたいな感じだ。これは誤算だった。でも名前の漢字全てで意味のある由来だから、由来を話すとわかってくれるし、こちらも漢字を聞かれたときに由来込みで説明するようになった。

 子どもが自分の名前の意味を理解できるようになるのはまだ先のこと。自分で名前を決めたのだということはぜひ話して聞かせてあげたいと思っている。

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