03 クソコンボ

 体が重く、上手く息が出来ない。まるで全身が水中に沈められたかのようだ。

 しかし、止めどなく溢れ出す焦燥に押されて、足はかつてないほどに早く動く。

 何時もの様に教会に居た時に、当然飛び込んで来た自警団負傷の情報に、カナリアは自分でも驚くほど素早く飛び出した。

 理屈で考えるのなら、怪我人は治療のために教会に運ばれてくるのだから、その場で待っていた方が良い。

 ただ……。居ても立ってもいられ無かったのだ。



 怪我を負って教会へ運ばれてくる自警団の大人たちの姿は直ぐに見つかった。

 カナリアと同じく、この情報を知った町の人間たちが集団となっていたからである。

 野次馬――と言うのは違うだろう。

 結界の周辺で、強力な廃呪に襲われて自警団が怪我を負ったと言うのは、町にとって極めて重大な事件である。

 事によっては、町を捨てて逃げ出さなければならない可能性すらあり、誰にとっても他人事では無かった。

 ならば当然の事、その場は数多の悲鳴と怒号が響き渡る修羅場だった。




「あなた!?ああ、どうしてこんな!!あなたっ!お願いだからしっかりして!?」



「パパぁーーーッッ!パパぁーーーッッッ!!!!!」



「どうして町の近くにそんな強力な廃呪が出るんだ!?」



「クリスちゃんとこのルークさんを呼んできて退治して貰ったらしいけど、もしも彼が居なかったらどうなってたか…………」



 人ごみを掻きわけて、カナリアは負傷者たちが見える位置取りに移動した。

 途端、まだそれなりに距離が離れているのにも関わらず、彼女の鼻孔を鉄が錆びたような、血の嫌な臭いが突き刺した。

 そうやって見る事になった自警団の怪我の程は、カナリアの予想を超えて悪い物だった。



「う、ぁ……」



「腕が、腕がいてぇよぉ……。もう、無い筈なのに……」



「頼む、痛み止めを……」



 突然現れた相手に、逃げる暇も無かったと言うのも勿論あるだろうが、それ以上に万が一にでも結界を破られて、自分たちの生まれ故郷を蹂躙されぬ為に、必死で戦ったのだろう。

 鋭い爪や牙で付けられた彼らの傷は、とても深い。

 最早、体を削られている、と表現しても過言ではない有様で、実際に四肢を欠損している者すらいた。

 その惨状に目を逸らしたくなりながらも、カナリアの視線は負傷者たちの間を彷徨っていた。

 何故ならその中に探している人が居たから。一体誰を?――父親を。

 カナリアの父親も、町の自警団の一員である。

 そして彼女の記憶が定かであったなら、今日の見回りのメンバーに父も入っていた筈だった。



「お父さんっ――!」



「ヵ……な――」



 幸か不幸か、父親の姿は直ぐに見つかった。

 意識が朦朧としているのか、カナリアの叫び声に僅かな反応を返すばかりであったが、これで父親の生存は確認できた。出来たのだが…………。



「ぉとう、さん…………」



 カナリアの口から、呆然とした声が勝手に飛び出した。

 彼女の目に入った、教会へと運ばれていく父親の姿。



 何時も自分の頭を優しく撫でてくれる、大きくて温かい腕が一本無かった。

 小さい頃に自分をおぶさってくれた時に、しっかりと大地を踏みしめていた頼もしい足が一本無くなっている。

 彼女の父親は、その四肢に欠損が見られたのだ。



 ――ゎ、私の、所為だ……。私が無理やり、結界展開の役目になったからっっ!!



 頭を棍棒で思いっきり殴られたかの様な大きな衝撃に、カナリアの頭は咄嗟に事の原因を追求した。

 そしてよりにもよって、その原因を己に求めてしまった。

 クリスでは無く自分が、無理やり結界展開の任に就いた事が原因だ、と。



 それは、違う。

 先に言った通り、彼女の展開した結界の性能に不備も不足も有りはしなかった。

 それに、無理やり、とカナリアは言っているが、それも違う。

 彼女が”今回も、自分に結界の展開をさせて下さい!”とジャン神父に頼み込んだ時に思った通り、神父は最初からカナリアに作業を任せようとしていた。

 町を覆う結界の展開は極めて重要な役目であり、その人選には確かに腕が重視される。

 しかし、それと同等、或いはそれ以上に重視されるのが”信用”だ。

 町の生命線たる結界を、信用できない相手に任せられるはずも無い。

 カナリアの実力が、結界展開の任に大幅に足りていない等といった状況であったのなら話は別だが、そうで無い以上幾ら実力がありそうでも、最近町にやって来たばかりの少女と、これまで役目をしっかりと果たしてくれていた少女、どちらを選ぶかは明々白々だ。

 カナリアのこれまでの頑張りは、しっかりと周りに通じている。

 彼女自身が思うほど、周囲の大人はカナリアとクリスの間に差を感じてはいなかったのだ。

 


 だが、現在。教会から1人で素早く飛び出して来たカナリアの傍に、その事を伝えてくれる人間は居なかった。

 それに、例えその事実を伝えられたとしても彼女の心を蝕む罪悪感は一切減ずる事は無かっただろう。

 もし仮に、クリスの実力がカナリアの思っているほどでは無く、カナリア以下の性能の結界しか張れないなんて事が分かったとしても、だ。

 何故なら、今彼女が感じている自責の念の争点はそこには無い。


 少なくとも自分は、己よりクリスの力の方が上だと感じていた。

 そしてその上で、自分に結界を張らせて欲しいと頼み込んだ――それがどれほど重要な役目であるか知っていたのに。

 それらの動きは、簡潔な一言に纏められて、それがカナリアの心に突き刺さった物の正体だ。



 すなわち、自分は町の安全より、自らのプライドを優先した、と。

 そしてその結果がこれだと。



 勿論、先にも言った通り、カナリアの張った結界に不備は無く、今回の様な事件が発生する可能性など、殆どゼロに近い。

 これで、やれ原因がどうだ、だの、やれ責任がどうだ、だのは完全にズレた話であり、元からカナリアに悪意を持っている者以外は、誰も彼女の所為だ、などと言わないし、思いもしないだろう。

 しかしながら、目の前の惨憺たる光景が、他ならぬカナリア当人の思考に、そう言った逃避を許さなかった。




 ――なんとか、私がなんとかしなくちゃ。

 自分の所為なのだから、と彼女の頭の中が、そんな考えで一杯になって、真っ白になり―― 




 「ぁれ、私……」




 ――次にカナリアが気が付いた瞬間、いつの間にか彼女は、町の近くからいける森の奥を歩いていた・・・・・・・・・



 何も行き成り場所を、転移ワープしたという訳では無い。

 茫然自失になって、ふらふらと夢遊病の様に歩いていたカナリアが向かった先が、偶々・・ここであったのだ。

 幾ら周囲が喧々諤々としていたとは言え、そんな感じで町を出て行こうとすれば誰かに呼び止められそうだが、カナリアが居た事は偶々・・町の誰にも気が付かれなかったのである。

 それに、森の中には廃呪が居る。普通であれば、こんな奥深くに向かう前に、弱めの廃呪に襲われるなどして、正気に戻りそうなものだが、偶々・・簡単には戻れない場所に来るまで、邪魔が入らなかった。



 いやはや、偶然とは怖い物である。



 ――そんな訳がない。一体どんな確率だ、これは?

 偶然、本来発生しない筈の町の近郊での強力な廃呪の出現があり。偶然、呆然として歩いた先が森の奥底で。偶然、誰にも気づかれず。偶然、邪魔が入らなかった?



 1つだけならば、まだ偶然として片づけられよう。

 2つ重なっても、まだ悪い意味で奇跡だと思えるかも知れない。

 だが3つ、4つと重なるのなら、それは間違いなく何者かの意識が介在している必然だろう。


 もしもカナリアの人生が賽子ダイスの出目で決定されているのなら、それが何度も連続で最悪の出目ファンブルを出したかと思わんばかりに、彼女を取り巻く流れは酷かった。

 こうなって来るのなら、そもそも彼女が孤立する様になった流れすら怪しく見えて来る。

 周りの子だって彼女を孤立させようとしていた訳では無く。

 クリスなどは、自分が来た事で引き起こしてしまった事態を何とかしようと必死で動いていたのだ。

 それなのに、こうなった。

 その時には、ただ間が悪かったというだけの話だと思ったが、こうなって来ると、怪しい物だ。

 


 そうこうしている内にも、カナリアは未だ妙にハッキリとしない頭で、森の奥へ、奥へと進んでいく。

 今の所、彼女の身に危険は訪れていないが、何かの意思で彼女に都合の悪いことが発生し続けているという予想が正しいのなら――。



「此処は…………」



 薄暗い森の中を進んでいたカナリアは、木の密集が薄く光が差し込む場所にたどり着いた。

 自然が偶然に産んだ小さな広場、とでもいった物か。

 そこで、カナリアは気づいた。



 ――何かに囲まれてる。



「■■■■■■■■――!!」



「――――ぁ」



 そうして彼女を取り囲む様にして現れたのは、10匹以上にも上る廃呪の群れであった。

 見た目は真っ黒な熊だったが、自然動物のそれとは巨大さが違い5mは明らかに超えていた。

 それに、中に1体、周りより巨大で明らかに力強いであろうものも存在していた。



 【暴乱熊メガーリアルクトス】。そう呼ばれる種である。

 かなり危険な廃呪であり、幾ら森の奥底とは言え、少女の足で行ける様な範囲に現れる事はそうそう無い筈なのだが……。

 ああ、これも偶々・・現れたのだろう。

 


 カナリアだって聖神教の神官として、廃呪を浄化する術は収めているし、弱い廃呪を祓った事はある。

 だがそんな僅かな経験で、どうにか出来る様な種では無い。

 カナリアが普通の状態であったのなら、当に腰を抜かして怯え切っていただろう。



 しかし今の彼女は違った。

 恐ろしい相手だと言う考えはある。

 しかし、心の奥底から体中に、不可思議な熱が伝わるのだ。

 今の彼女の状態を極めて分かり易く例えるのなら”酔い”だろう。


 全身――特に頭の奥が熱くなって、妙に強気になる。

 恐怖心が麻痺して、危ない事を危ないと認識できなくなる。

 そうしてとんでも無い事態を引き起こす所など、”正に”である。

 しかしながら、酒を飲みアルコールに酔わされるのが酔っ払いならば、カナリアは一体何に・・酔わされていると言うのか。




 あろうことか今のカナリアは、この危険極まる廃呪たちとの邂逅を、チャンスだ!等とすら思っていた。

 多数の傷の深い怪我人が出てしまったアルケーの現状。そこで最も必要とされるのが聖輝石、それも極めて質の高い物だからである。

 欠損レベルの大怪我は、カナリアレベルの法術の使い手であっても、全快どころか命を繋ぐのにすら質の高い聖輝石のサポートがあって漸くなのだ。

 そして、アルケーの様な小さな町にそんな質の高い聖輝石の蓄えなど――実はある。

 ある……が、それはおいそれと使って良い代物では無い。何故なら町を覆う結界の展開に必要な蓄えだからである。

 少しだけならば兎も角、今回発生した怪我人全員を癒やすほど大量に使用するとなれば、町の今後に支障をきたす。

 しかし、町の近郊に現れる弱い廃呪を定期的に掃討する役目を担う自警団の治療を行わなければ、それもそれで当然支障が出る。

 或いは、クリスの回復の腕ならば話は別かもしれないが、そんな楽観をするべきで無い、と言うのがカナリアの考えだ。

 よって今のアルケーの町は、心臓か手足か、どちらかを捨てろと言われている様な状況なのだ。

 しかし、今此処で目の前に居るような強力な廃呪を倒し聖輝石を入手する事が叶ったのなら話は別。

 心臓も、手足もどちらも捨てること無く乗り切れる。




 ――そう。これぞ汝の過ちにより発生した惨劇を、汝自身の手で濯ぐ絶好の機会。望外の幸運。




「――え」



 嗚呼。胸の上部に刻まれた聖なる証が。聖印が。とても熱い。

 無機質な声で、何かが脳に直接語りかけて来るのだ。



 ――これぞ、試練。汝が魂を研磨し、器を広げるが為の。



「試練」



 ――意思を振り絞れ、命を燃やせ。汝の働きこそが、己が大切な物を守る唯一のすべだと魂に刻め。



 そうだ。傷ついた父の姿を想え。

 自分が助けるのだ。自分が救うのだ。



 語りかける無機質な声が、カナリアをさらなる”酔い”――トランス状態へと導く。

 思考がどこまでも純化して、どんな困難でも乗り越えられそうな気分になる。

 そしてそれは唯の錯覚では無い。

 未だ嘗て無い集中力は、カナリアの実力を此処に数段上へと導いていた。

 恐れが麻痺した心も含めれば、【暴乱熊】たちに対する勝率は、本来の何倍にも、何十倍にも膨れ上がろうと言うもの。

 ああ、これが神懸ると言う物だろうか?



 ………………まあ、0.01%が0.1%になった所で、どれほど意味があるのかは知らないが。



「■■■■■■■■」



「――――」



 暴乱熊の内、特に巨大な個体がカナリアに向けてゆっくりと、しかし確かな戦意を身に迸らせて歩き出した。

 群れで襲う必要も無い、ということか。他の個体は動かない。

 対するカナリアも示し合わせた様に、距離を縮めていく。

 此処に、死戦の幕が開くのだ。

 今のカナリアに、その事実に対する恐れは無い。


 …………ただ、脳の片隅に残ったほんの僅かな冷静な部分が、まるで他人事の様に、”ああ、そう言えば。こんな状況で、カッコいい男の人に助けられるのが夢だったな”なんて考えていた。



 ――まあ、全く意味の無い戯言だ。



 距離が埋まる。

 少女が、無残に死ぬか、英雄に成るかの二者択一を迫られるまで後、数秒。



 ――何故なら、白馬に乗って地を駆けて、彼女を助けに来てくれる王子様など現れない。




















 だって、救いは天から・・・・・・降りてきた・・・・・




*****



 そらから白黒の流星が降ってきた。

 カナリアの目には最初、そう見えた。

 だが、違う。

 凄まじい勢いで落ちてきて、しかしどこまでも優雅に、柔らかく着地したそれ・・は、星などでは無かった。

 それは、この1ヶ月間良くも悪くもカナリアの心を乱し続けてきた存在。



「ク、リス……!?」



「カフェさん!!無事で良かった――!!」



 降ってきたのはクリス。聖神教の法衣を身に纏い、カナリアを助けにやって来たのだ。


「貴方、どうして……」


「余り時間が無さそうでしたので、思いっきりジャンプしちゃいました。少し、はしたなかったですね」


 えへへ……と笑うクリスに、カナリアは”いや、やって来た方法を聞いたのでは無いんだけれど”と思った。


『どこにも居なかったこの雌餓鬼を探した所までは分かるが、どうやって居場所を確かめたのかは俺様にも分からなかったんだが』


 因みに、一緒に居たデザベアにすら、クリスがどうやってカナリアの場所を知り、その危機を確かめたのか分からなかったらしい。



『ふふっ。ベアさん。聴力を強化して確かめたのですよ。――カフェさんの乳揺れの音をね!!そうしたら、明らかに町の外に居ましたから。これは危ない、と思った次第です』



『変態染みてやがる…………』



 色んな意味で。デザベアはそう思った。

 尚、上記のコントが見えていないし、聞こえていないカナリアには、クリスが唯真剣に佇んでいる様に見える――詐欺にも程がある。


 とにかく、やって来たクリスに何かを言わなければ、と考えたカナリアだったが、その時、ふと、気がついた。


 ――地面が揺れている。

 それも、かなりの揺れだ。


「地、震――!?」


 しかしながら可笑しい。

 そんな揺れに、クリスも廃呪も、他の全ても全く動じていないのだ。

 これは、一体どういう事か?


「カフェさん。怖がらなくて、大丈夫です」


「何を…………ぁ」


 クリスにそう言われて、カナリアは気がついた。

 揺れているのは地面じゃ無い。自分自身だった、と。


「ぅぁ……、わ、私……。何でこんなっ――!?」


 クリスがやって来た衝撃で、カナリアの体中を覆っていた不可思議な熱が完全に消え去っていた。

 心の麻酔が切れて、分かっていなかっただけで、ずっと感じていた痛み恐怖が一斉に湧き出してくる。

 自分に語りかけて来ていた謎の声の事を何故か忘却し、カナリアは混乱と恐怖の極地にあった。


 一体どうして、自分はこんな馬鹿な事をしてしまったのか。

 殺される。周りの廃呪たちの牙と爪で、全身を引き千切られて殺されるのだ。


 先程までの戦意は欠片すら残っていない。

 最早、今のカナリアに出来るのは、襲われる寸前の哀れな子羊として、只々震えることだけで。

 体中の体温が、どんどん下がっていっている様に感じる。

 そしていよいよ、卒倒すらしかねない程に、その震えが高まった時、カナリアの体を柔らかいものが包み込んだ。


「安心して下さい。貴方は私が守ります」


「く、くりしゅっ!?」


 クリスが怯える我が子を安心させるが如く、カナリアの事を抱きとめたのだ。

 互いの心臓の鼓動が混ざり合い、顔と顔とが近づいた。

 今までとは別の意味で、カナリアの脳味噌は混乱しだした。


「こ、こんにゃことっ!してる場合じゃ――!!」


「良いから、私のことだけを見て――――ね?」


「はひゅっ――!?」


 呂律が上手く回らない。心臓が早鐘を打つ。

 理想に近いシチュエーションやら、吊り橋効果やらが合わさって、下がったはずのカナリアの体温は、オーバーヒートしかけていた。


 カナリアの脳内を言い訳染みた戯言が止めどなく流れ出す。

 何だ、この顔の良さは、ふざけているのか!!

 眉毛なんか綿毛か雪の結晶かの様で、こんな物を至近距離で見せられたら、誰だって可笑しくなるだろう――!!と。


 まあ、クリスは”長けている”から仕方がないだろう――顔面偏差値に。

 取り敢えずカナリアの感じている怯えは殆ど払拭された様である。

 代わりに脳味噌がぶっ壊れかけた様な気がしないでも無いが……、今は気にしないでおこう。


「■■■■■■■■――!!」


 襲いかからんとしていた己を無視されて、意味の分からんやり取りを繰り広げられた事にさぞやご立腹だったのか、抱き合う2人に向けて、巨大な暴乱熊が猛然と駆け出した。

 僅かばかりの距離を四足歩行で瞬間的に縮めて、2人の前で立ち上がり、腕を思いっきり振りかぶって、その爪で2人諸共引き裂こうとする。


「………………」


 そんな暴乱熊に対し、クリスがやったのは指を丸めながら、そっ、と右手を前に差し出す事だけだった。

 所謂、デコピンの構えである。


 空気を、轟ッ!と切り裂きながら、巨大な鉄の塊をも容易く両断する暴乱熊の一撃が放たれる。

 ぴょこっ!と可愛らしいらしい音を奏でながら、赤ん坊すら痛がりそうにないクリスのデコピンが放たれる。

 2つの攻撃が交差して、


 ――――暴乱熊が消し飛んだ。



『見ましたか、これが”聖女神拳”ですっ――!!』


『ただの、格の差のゴリ押しじゃねーか』


 ドヤァ……!と、得意げな笑みを浮かべながら、自分にしか聞こえない声で、はしゃぐクリスにデザベアがツッコんだ。

 唯でさえ攻撃が得意ではない上に、現状の聖華化粧では使える力が少ないクリス。

 そこで編み出したのがこの戦い方である。


 いや、”戦い方”なんて言えるほど上等なものでは無く、普段は抑えている自分の巨大さによる周囲への影響を限定的に開放し、その圧倒的な質量の差で相手を消し飛ばすのだ。

 デザベアの言う通りただのゴリ押しである。

 しかしまあ、元の能力値が圧倒的な事もあり、ただのゴリ押しが必殺の一撃と化していた。

 ただし、全く弱点が無いか、と言われればそうではない。



「■■■■■■■■!!」


「む――!!」


『まっ、そうするわな』


 自分たちの中で最も強力な個体が跡形も残らず消し飛ばされたのを確認した直後、残った暴乱熊たちが一斉に飛び退いて、クリスから距離を取った。

 しかし、逃げ出す素振りは見せず、クリスを囲み、その隙きを伺っている。

 デザベアの言う通り妥当な行動だろう。


『こうされると、少し困るんですよね……』


『身体能力貧弱だからな、お前』


 核兵器の雨が降り注ぐ中、のんびりお散歩出来る癖に、少し急な階段を上っただけで息を切らす矛盾した状態が、今のクリスである。

 曰く”聖女神拳”なる物の決定的な弱点は、逃げに徹されると当てれない事である。

 特にクリス自身が狙われるのなら大丈夫なのだが、今回のカナリアの様に、守る相手が居る時は、隙きを付いて狙われないように注意を払わなければ行けないのだ。

 クリスが急にカナリアを抱きとめたのも、落ち着かせるため、廃呪が消し飛ぶ衝撃的な光景を見せない為に加えて、こうされた時にしっかりと守る為だ。

 決して、”可愛らしい女の子の体を合法的に抱きしめられるぞ、わーい!!!”なんて思ってやった訳では無いのだ、馬鹿にしないで貰いたい!!!!!

 そんな疚しい思いは、クリスの中には2割くらいしか無いッッ――――!!!!



『身体強化して、ちゃちゃっと終わらせたらどうだ?』


 因みに上記の弱点は、身体能力を強化すればある程度解消される。

 カナリアを助けに、町から意味の分からない跳躍をした時のように、強化すれば驚異的な身体能力を発揮出来るのだ。


『これで終わりなら、それでも良いんですけど……。出来るだけこの後・・・の為に力を残しておきたくて』



『まあ確かに、それもそうか』


 しかしながら体を強化するのにも当然力を使う。

 此処に来る前に・・・・・・・力を使ったし・・・・・・この後も・・・・力を使う予定がある・・・・・・・・・クリスとしては、出来る限り無駄遣いは避けておきたかった。



『んー』


 暴乱熊たちが自分を警戒して攻めてこない為に、クリスはゆっくりと攻め手を考える。

 彼女の頭で思いついた戦い方は3つだった。


 まず1つ目。このまま睨み合いを続けて、相手の隙きを伺って倒す。

 1人の時であればこれを選んでも問題は無かったが、守る対象が居る以上取れない手段である。

 何せ、元々ただの高校生。戦闘技術など無いに等しいのだ。


 2つ目。身体能力を強化して一気に倒す。

 正攻法はこれだろう。ただしこの手段を取ると、この後必要となる力が用意出来ずに、聖華化粧抜きの本気を出さざるを得なくなり、デザベアに死線を潜って貰わなくてはならなくなる。

 出来ることなら避けたい、と言うのがクリスの本音だ。


 3つ目。ある手段・・・・を使って、余計な力を使わずに倒す。

 そんな夢の様な手段が、あるにはある。

 ただそれは、クリスの気持ち的には取りたくない手段なのだが……。

 しかし、相手が廃呪という事と、他の手段との天秤に、カナリアやデザベアの命が乗っていることを考慮に入れると――


「――仕方がありませんね」


 クリスはカナリアをもっと強く抱きとめた。

 これから自分が使う”力”に、まるで台風の目の如く彼女だけは影響を受けさせないために。

 それを伝えるために、クリスはカナリアの瞳を至近距離で見つめながら話した。



「良いですか、カフェさん。もう暫くの辛抱ですから、絶対に私から離れないで下さい」


「ひゃ、ひゃいっ!!」


 カナリアの顔が更に紅く染まったが、まあ言いたいことは伝わっただろう。

 そして、クリスは”力”を使う。いや、正確に言えば、力を使わないようにするのを止めた。

 彼女の魂はほんの少し呼吸を――つまり”魅了”と力を解き放とうとした。


『見なさい!これが対廃呪用聖女神拳奥義!その名も――』


『ああ。ゴキ○リホイホイな』


『…………奥義!』


『だからゴキ○リホイホイだろ?』


『もうっ!カッコつけさせて下さい!』


『カッコつけるほどの物でもねーだろーが。いいからとっととやれ』


 クリスがやろうとしている事は単純。

 ”魅了”の力で廃呪を惹き寄せて、そのまま先程の格の差ゴリ押し拳法で倒す事だ。

 その様は正しくゴキ○リホイホイ。少し格好良く言ったとしても、飛んで火に入る夏の虫が精々だろう。



『もうっ!!では行きますよ』


 締まらない雰囲気の中、クリスは魅了の力を極僅かだけ解き放った。



 ――瞬間。世界が鳴動した。


「――え?」


『――は?』


 そもそも、クリスの身に宿る魅了の力は彼女本来の力では無い。

 肉体が持つ人類最高レベルの美貌の才能に、中に入った魂の、生命に愛を注ぐ性質が乗ってしまい、偶発的に生じた力である。

 素質の深度その物は極めて深い物の、クリス当人が他者の心を操るこの力を完全に拒絶している事もあり、出力その物はそこまで高い訳ではない。


 嘗て、クリスが美しくなるにつれ、勝手に発動した時を例に挙げるなら、感染確率100%、感染範囲1km、予防策無しの魅了ウイルスがまき散らされると言った所か。

 交通網の発達した現代社会であれば、下手をすれば1週間もしない内に、世界全土が恋の奴隷に落ちるだろう。

 そう書けば凄まじく感じるだろうが、そもそも力を使えさえすれば、攻撃が苦手にも関わらず、世界中に光の星を降らせて、惑星を更地にすること位は出来るのがクリスである。

 その尺度からすれば魅了の力は、クリスにとって唾棄すべき力ではあるが、そこまで警戒が必要な力では無かった。

 だからこそ、命を持たない呪いの塊である廃呪に対して切った訳であり、それを制止しなかったデザベアも、同じ認識である事が分かる。


 だが、この時。

 極めて希釈されて放たれた筈の力は、その質・出力ともにクリスとデザベアの想定を完全に超越していた。

 端的に言えば、”魅了”と呼んで良いのかすら分からない、全くの別物と化していた。



 ――0.00000000001秒


 まず最初に、対象となった暴乱熊たちが、消滅した。


 クリスが魅了以外の何かをした訳では無い。

 愛しい女神クリスから直々に、浄滅すべしと思われた幸福に、彼らの体が耐えきれなかったのである。


 この時点で異変を察知したクリスは、まずカナリアに絶対影響がいかない様に、防護を強めた。


 ――0.0000000001秒


 クリスを中心として、地面に大量の花が咲き乱れる。

 ある雑草は伸び、ある雑草は自ら千切れ飛び、人工芝の様に整った芝生が完成した。

 周りの木々の根っこが触手の様に蠢いて、木々が自発的に移動して、偶然出来ていた筈の数mの隙間が、数百mの空き地に早変わりした。

 木々の葉に付いていた露が滴り落ちて、それが何百倍にも、何千倍にも膨れ上がり、 瞬く間に湖が出来上がった。

 風の音が女神を称える讃美歌に早変わる。



 自然の悪戯で偶然出来ていただけの木々の隙間が、女神へ捧げられる庭園へと自発的に変化してしまった。



 この時点で、魅了の力を止めたクリスだが、その影響は直ぐには止まらない。



 ――0.000000001秒



 先ほどまでに起こった尋常ならざる変化。

 しかしながら彼ら・・にとっては余りに現実的で微々たる物だったらしい。

 斯様な醜い姿を女神の御前に晒すのは我慢ならぬと、誰も彼もが本来何億年も・何十億年もかかる筈の進化を行おうとしていた。

 方法?理屈?

 無限に湧き出す女神への恋情を前に、その程度の事が不可能である訳が無い。


 1匹の羽虫が、虹色の羽を持つ、不死鳥となった。

 周囲に咲き渡り、伸び渡る草花が、煎じて飲めば万病を癒やす、黄金色の植物へと変化した。

 辺りの木々に、1口齧れば1年間は飲まず食わずでいられるようになる仙桃がなった。

 湖の水は神聖に光り輝き、振りまけばあらゆる魔を浄化する聖水に。



 焦るクリス。現時点で相当にマズイが、更に致命的な現象が起きようとしていた。


 ――0.00000001秒 

 

 そらに浮かぶ星々が、自分たちも女神の傍に侍りたいと、彼女が住まう惑星と同化しに、墜落の準備をし始めた。

 女神の住まう場所をこのままにはしておけぬと、大気中に無尽蔵にエネルギーが発生して、星の全てを浄化する波動が放たれようとした。

 病が、穢れが、呪いが、死が。闇に属する概念達の全てが自分たちの存在は不要、と世界から消え去ろうとした。


 全てが終わり、全てが始まる。

 此処に神話の時代がやって来ようとして――


「――ダメッ!」


 その声に、全ての変化が一瞬止まる。

 その僅かな時間が全てを分けた。

 魅了だった筈の力の影響が漸く止まった。

 世界に静寂が戻って来る。



「あの……。クリス?どうしたの?」


 クリスの動揺を感じたカナリアが不安げに呟いた。

 彼女を安心させるべく、クリスは穏やかに語りかけた。


「ええと。もう大丈夫ですよ、カフェさん。…………………………………………ぃちぉぅ」



「そ、そうなの?」



 その言葉を聞いたカナリアが、どこか名残惜しそうにクリスから離れる。

 そして、周りを見渡した彼女だったが、その目に入り込んで来た光景は――――。



「ゎぁっ……。綺麗……。凄いっ――!これ、クリスがやったの?」



 ――辺り一面に咲き渡る黄金色の花畑!!

 清浄に光り輝く湖!!

 一目見ただけで尋常ではなく美味だと分かる桃がなっている周囲の木々!!

 そして”キーーーーーーーッッッ”と元気よく鳴き声を発しながら、クリスの頭上を飛んでいる七色の羽を持つ幻想的な鳥!!!!!!!!!!!


 凄い……。なんて綺麗な光景なんだ……、とカナリアはウットリとした。



「ぇっ……。ぁの……。その……。確かに、やったか、やっていないかの二択で言われますとやってしまった様な気がしないでも無いと言うか、その。ですが、あの。そうやって何でも2択で迫る世の中なのはどうでしょうかと思う感じもありまして、こう、もっと良い別の選択肢があるやもしれぬと…………………………。ごめんなさい、私がやりました…………」



「?どうして謝るの?」


 言い訳の高速詠唱の最中に気まずくなったクリスが謝罪の言葉を口にした。

 そのまま内心で涙目になりながらデザベアに念話で話しかける。



『べ、べ、べ、ベアさん!!さっきのあれ!一体何なんですか!?』


『……正直、俺様でも直ぐには分からねぇ。

ただ、1つだけ言える事がある』


『なんですか!?』


『多分、お前なんかバグったぞ』


『バグっっ!????????????』


 出力が可笑しい。効果が可笑しい。明らかに暴走している。

 そもそも使用者のクリス自身が分からないのが変。


 何らかの異常事態が発生しているのは、確定的だった。


『あの、これどうしましょうか…………』


『どうしましょうって言われてもな…………』


 突然と、出来上がってしまった聖域的なナニカの始末に困るクリス。

 そんな彼女が出した答えとは――


「そ、そのぉ……。カフェさん?色々と気になる事はあるでしょうが、一旦街に戻りませんか?自警団の皆様方を診なければなりません」



「ぁ…………」



 ――SA☆KI☆O☆KU☆RI!!

 明日の事は、明日の自分に任せるッッ。

 週刊少年漫画の作者も扱う由緒正しき戦法――!!


 いや、違うのだ。

 決して見て見ない振りをする訳では無く、本当に時間が無いのである。

 ”絶対!絶対、後でまた来ますから!!”と心の中で叫びつつ、クリスはこの場を一旦離れる事を決めた。


 因みにその間のカナリアだが、先ほどまでの衝撃的展開で頭の中から吹き飛んでいた自警団の怪我の事を思い出し、赤くしていた顔を青くしていた。


「取り合えず、最低限この場所を隠し――――!?」


 何とか、この聖域?を人目に付かない様にだけはしておこうとしたクリスだったが、その時、衝撃の光景が発生した。

 辺りの木々がまたしても勝手に移動して、この場所を隠すように動いたのである。

 しかも――


『こりゃあ、人払いの力も発生してんな。一定以下の力量の奴は許可が無いとたどり着けんぞ』


 ――デザベア曰く、そんな感じらしい。


『森が……。生きてる――!』


 大自然で育った、精霊の声が聞こえる少女的な台詞を発したクリスだが、この場合は、概念的な話では無く、森が一目瞭然で命を持っていた。

 何せ、早足で町へ向かっていく、クリス達に木々が敬礼するかの如く、自らしなっていくのである。

 大丈夫!?折れないよね!???と心配になりつつも、クリスはカナリアと町への帰路についた。





――――――――――――――――――――――――――――――――――――


○《生命の権能(詳細不明)》

 クリス――と言うか、その魂の猿山 平助が持っていたと思われる権能。

 覚醒する前に体を変えられたため、詳細は不明だが現在のクリスが持っている力と同様に、生命に対する回復や加護を得意とする力であったと予想される。

 ただし、男性のサガとして、現在の力より攻撃性や征服性に若干寄っていた可能性がある。


○《両極のアンドロギュノス・フィーリア》 

 クリスの所有する力。権能。

 方向性自体は元の肉体であった時とは変わっていないが、肉体が女性の物に変じた事で、適正に変化が見られる。

 女性の肉体に、男性の魂と言う己単体で雌雄が揃った事により、男性であった時は勿論、もしも最初から女性として生まれた場合よりも『命を生み出す』事に対する適正が遥かに上昇している。

 今の彼女にとっては、無機物やエネルギー、果ては概念などと言った本来は命を持たない物に、生命を与える事すら容易いだろう。



○《人界のヘスティアー・カロス

 人類最高峰の魅力の才能を持つ肉体に、生命に愛を注ぐ超越者の魂が入った事で、後天的に発生してしまった権能。

 生命体に対する強い魅了効果を発生させる。

 ただし、クリス当人がこの力を極めて忌避しているため、出力・効果共に大幅に減少しているので、そこまでの危険性は無い。

 ただし、予想外の形で発生したばかりの、未だ形が完全に定まっていない権能であるため、クリスの状態によっていかようにも変化しうる為、注意が必要だろう。



○《生界のデメテル・カロス

 肉体と魂の格の差による死を己の癒やしの力で覆し続けているクリス。

 よって彼女は、常に生と死を繰り返している状態であり、しかも彼女ほどの格の魂の変化は周りに強い影響を発生させてしまう。

 その生の面。

 生・誕生とは、生命が本能的に目指す場所であり、生命体からの強い注目を得る効果を持つ。

 しかも、生とはクリスの属性であるため、注目効果が更に増している。

 結果、この力は生命体に対する極めて強い魅了効果を発生させる効果を持つ。


○《死界のヘカテー・カロス

 肉体と魂の格の差による死を己の癒やしの力で覆し続けているクリス。

 よって彼女は、常に生と死を繰り返している状態であり、しかも彼女ほどの格の魂の変化は周りに強い影響を発生させてしまう。

 その死の面。

 死とは、生命が本能的に避けようとし意識する物であり、生命体からの強い注目を得る効果を持つ。

 しかも、死とはクリスの反属性であるため、逃れるためにクリスを求める様になり、注目効果が更に増している。

 結果、この力は生命体に対する極めて強い魅了効果を発生させる効果を持つ。 



○《三界のアフロディーテ・カロス

 《人界の美》がクリスの特異な状態により成長してしまった形。

 魅了が極まりに極まって、もはや生命体に対する特効とすら言える領域に到っている。

 ただし、クリス当人の忌避感による出力制限は未だ有効である。

 しかも、あまりにも生命体に対する効果に寄りすぎた為に非生命体に対する影響は皆無となった。

 よって、(あり得ない事ではあるが)クリスがこの能力を使って戦いだしたとしても、彼女と同格域の存在ならば、投擲や魔術などと言った非生命による遠距離攻撃を魅了の効果範囲外から繰り返す事で十分に対処が可能だろう。

 ただし、極めて分の悪い魅了との対抗ロールを強いられる為、接近戦は絶対に挑んではいけない。



○《極点のガイア・フィーリア

 クリスの肉体と魂が生と死の繰り返しによってぐちゃぐちゃに混ざりあった結果、本来の権能である《両極の愛》と、後天的な権能である《三界の美》とが融合して発生してしまった権能。

 基本的には《両極の愛》と、《三界の美》が同時発動するだけだが、

 

 『本来の権能と結びついたことによる《三界の美》の出力制限消失』

 『2つの巨大な権能が掛け合わさった事による出力の異常上昇及び暴走』などの変化がある。


 不味くない点が何1つとして存在しない本権能だが、最も猛悪な点は『生命特攻の魅了』と『あらゆる物に対する生命付与』が同時に発動する事である。

 クリスによって命を与えられた非生命は、そもそも彼女を母として慕う上、そこに更に魅了が乗る形となる。

 結果、『生命特攻の魅了』が非生命に対してより効果を発揮すると言う意味不明の異常事態が発生する。


 この権能を展開したクリスと戦う場合、彼女と同格域の存在であっても、投擲や魔術などの非生命による遠距離攻撃と言った一見有効に見える戦法を取っては絶対にならない。

 もし行えば、放ったはずの攻撃がクリスに魅了されて、彼女に利する様に進化して、跳ね返って来る。

 基本的に有効となるのは、開戦直後に『生命特攻の魅了』を食らう事を覚悟して、超接近戦の肉弾攻撃を全力で放ち初手で殺しきることだろう。

 ただし、決めきれなかった場合にまず終わる上に、クリスを殺害しても魅了の効果は消えないので、魅了の効き目によっては愛しい者を手にかけた衝撃で自死させられるという実質的な相打ちに持ち込まれる可能性が高い。

 

 唯一の救いは、これまでの弱体化状態による経験で、クリスが権能のオンオフ出来るようになっている事だけである。



 尚、この権能を後程知ったデザベア曰く『クソコンボ』らしい。


 




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