16年越しの王子様

あやえる

第1話 ユニバ

 初カレ様との出逢いは、学生の時でした。


 十八歳。ディズニーへ行った時。

「このまま帰りたくないね」と、なりました。


 お互いの両親に電話しました。


 初カレ様のお母様からは、

「門限うんぬんよりも、男女が一夜をともにするってことは、そういう事になるから駄目です。」

と、言われました。


 初カレ様も、あやえるの母から

「うちは門限十二時。」

と、言われたそうです。


 その後、初カレ様とはお別れしました。

 

 そして、年月が経ち、あやえるは事故からの医療ミスで、不自由な身体になりました。


 お医者様から「今この瞬間に死んでもおかしくない。」

と、言われた時、ふっと彼の顔が頭を遮ったのです。

 そして、あやえるからアプローチし、初カレ様からは曖昧なお返事の中、再度お付き合いする事になりました。


 初カレ様は、あやえるの名前を呼んでくれませんでした。また、冷たい態度が続き、 

『体だけの関係なのかな?』

と、不安な日々。 


 でも、あやえるがGODIVAが好き、と言えばGODIVAを準備してくれました。


 入院をすれば、退院祝いにネックレスをプレゼントしてくれました。


 さらには、

「指輪貰うのとか憧れちゃうなぁ。」

と、呟いていたら復縁して一年目のお誕生日。

 誕生石の指輪を左手薬指にプレゼントしてくれました。


 どちらもとても嬉しくて、お礼したいと伝えたら

「ずっと一緒にいて。健康でいてね。」

と、抱きしめてキスしてくれました。


 普段、初カレ様から名前を呼んでくれません。


 それは、初カレ様が照れてしまうのと、あやえるがいつも名前を呼ばなくてもいいくらい側にくっついているから。


 初カレ様からキスをあまりしてくれません。


 それは、あやえるからいつもしているからでした。


 ある日、初カレ様から

「急遽仕事休みになったんだよね。」

と、言われました。 

「あ、そうなんだ。。」

と、返事をしました。


「明けておいてよ。」

「え?」

「俺と一緒にいたくないの?」


 いきなりの積極的な初カレ様の発言にドキドキしました。


 以前、私は初カレ様に

「日本のユニバーサルスタジオに行ってみたい。でも身体不自由だから行くの怖いなぁ。」

と、話していました。


 すると、初カレ様から

「お休みでユニバーサルスタジオへ行こう。」

と、言ってくれたのです。


 念願のユニバーサルスタジオ。


 ドキドキが止まりませんでした。


 待ち合わせの秋葉原駅。

 いつもより大人っぽく服装と眼鏡をかけていて、凄くカッコよくて、ドキドキ。


 新幹線の中。

 いつもより初カレ様から近付いてくれて、距離が近くてさらにドキドキ。


 「エスカレーターはね、新大阪まではいいけど大阪からは、東京では左に乗らなくちゃいけないんだよ。」

と、教えてくれたのに、初カレ様は大阪駅で左に乗ろうとしてしまい、

「右じゃないの?」

と、伝えると 

「そうでした。」

と、照れ笑い。


 たくさんの人混み。はぐれそうになった時に名前を呼ばれ、はぐれないようにと、初カレ様から手を繋いでくれました。

 寒くないようにとマフラーを巻いてくれたり、初カレ様の上着のポッケの中で、ずっと手を繋いだまま手を暖めてくれました。


 写真が苦手なあやえる。でもたくさん写真を撮ってくれました。


 足が不自由なあやえる。たくさん手をとって支えてくれたり、

「この子は足が不自由なんです。」

と、周りの方に声をかけてくれたり、荷物を持って支えてくれました。


 天気予報は雨。でも、あやえるは昔から晴れ女。当日は、晴れました。雨もホテルにチェックインしてからで、雨は夜のうちに上がりました。

  

 あやえるはミニオンズが大好きです。

 初カレ様は、あやえるがあまり歩かなくてもいいようにと、ユニバーサルのミニオンズのホテル、しかも素敵な部屋を準備してくれていました。


 大阪名物のたこ焼き。身体に悪そうなホットドッグやチュロス。ひとりだったら絶対に食べないジャンキーな食べ物も、ふたりで笑いながら食べました。

  

 門限が十二時だったあやえる。十六年越しの初カレ様とのお泊り。


 あやえるが、ホテルの部屋からユニバーサルを見つめながら

「門限が十二時だったから、初めてのお泊りだね。」 

と、呟いた時に

「十二時なんてシンデレラみたいだね。」

と、後ろから抱きしめられました。


 初めて一緒にお風呂に入ったり、髪を乾かし合ったり、枕投げをしました。

 夜も、ホテルからの夜景が綺麗でカーテンは開けたまま、ふたりで雨の音を聞いていました。

 初カレ様の寝息はとても深く、ぐっすり眠っています。いつも洗剤の香りかと思っていたら、その良い香りは、初カレ様の自然な香りでした。


 諦めていた事をどんどん叶えてくれて、本当にありがとうございます。


 これからも初カレ様とずーっと一緒にいたいです。

 

 

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