第47話『後藤武蔵』
「うぃーす、どうも。花園一派の皆さんと……花園栄治を倒したと噂の新庄怜央っすね?」
ゾロゾロとやってきた集団の先頭に立つ、マウンテンハットを被った少年が帽子のツバをクイッと持ち上げながらそう言ってきた。
「てめえはゴム!」
「なんでお前がここに!」
巨漢デブやリーゼントたちは彼を知っているようだ。
「ゴムって?」
「あいつは
ゴムが通称ってなんかすげえな。
「まあ、オレっちのことはどうでもいいじゃないっすか。それよりも、ウチの段田君があんたらと会いたいって言ってるんっすよ。悪いけど、来て貰えます?」
飄々とした態度ではあるが、断るという選択肢はないと言外に滲ませた口調で段田理恩の右腕君は言った。
「ざっけんなルッコラァアァ! オゥン?」
「誰が行くかッてんだルァ! ハァン?」
「用があるならてめえが来いって伝えとけエアラァ! ヨォオ?」
花園三人衆は巻き舌でツバを飛ばしながら拒絶の意思を示した。
「…………」
さて、俺はどうする?
またさっきの方法でやり込めて逃げるか?
いや、だが……しょせんこいつらは段田理恩というやつの子分にすぎない。
ここを乗り切っても大ボスの段田が諦めない限り馬飼学園へのちょっかいは続くのだろう。
だったら、いっそ敵陣に踏み込んでしまうのもアリかもしれない。
同じビビらせるのなら下っ端連中ではなく、ボスそのものに仕掛けたほうが根本的な解決になる気がする。
ほら、雑草も抜くなら根っこからっていうし。
「俺は行くよ。お前についていけば段田理恩と会えるんだな?」
俺はマウンテンハットの少年、ゴムとやらに言う。
何度も撃退を繰り返すより、一発で終わらせたほうがきっと問題にもなりにくいはず。
「おっ、物わかりがよくて何よりっすね」
お使いが達成できそうで上機嫌な表情を見せるゴム氏。
「はあ? 新庄怜央、お前……マジか? コレ、絶対大勢でリンチしてやろうってやつだぜ?」
「まさか本当に会いたいだけだと思ってんじゃねえよな?」
「もっとこっちも人数集めてからでいいじゃねえか!」
花園三人衆は俺に考え直すよう言ってくる。
「まあ、不安ならお前たちは無理に来なくてもいいよ」
花園三人衆の意見は確かに冷静な判断と言える。
だが、俺にとっては身の危険など到底ありえないこと。
むしろ今後もしつこく連中に関わってこられるほうが厄介だ。
ほら、いつ外で絡んでこられるかわからないって普通に怖いじゃん?
もし早く家に帰ってトイレに行きたいときとかに声をかけられたら……。
それは勇者百人を相手にするより恐ろしいことだ。
部活メンバーといるときだったら巻き込んでしまう可能性もあるし。
そういう心配ごとはここで断ち切っておきたい。
「バ、バッカヤロー! 馬飼学園のメンツがかかってんのにお前一人だけ行かせるわけねえだろうが!」
「テメエだけ差し出して、おめおめと逃げたら花園さんに顔向けできねえっての!」
「こ、こうなりゃ人数差なんて関係ねえ! やってやんぜよ!」
ええ、こいつらついてくるの?
別にいらないけど……。
不良はメンツというものを大事にするって須藤が言っていたのを俺は思い出した。
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