第38話『江入杏南の宇宙船』
「探査船の操作はタグで行なう。私のタグは破壊されているから、乗り込んだところでシステムに干渉することはできない。その点はどうする……?」
船を掌握した後、制御をどうやって行なうのかについて江入さんが相談してきた。
「そのタグを破壊したのは誰だと思ってるんだ? そんなもん、俺の魔力でちょちょいといじくってやればいいのさ」
「魔力……それがあなたの力……。そんなことができるとは……」
江入さんは素直に感心していた。
まあ、できる保証はどこにもないけど。
きっとなんとかなるさの精神だ。
しーんぱーいないさー。
江入さんの宇宙船は学校近くの神社の境内にあるらしい。
現場に辿り着いたが、そこには何もなかった。
「本当にここに? まるで見当たらないんだが」
「普段はステルスモードで目視されないようにしてある。座標は――」
江入さんはなんかよくわからない数字を言い出した。
そんなんで理解できるかいな。
「大体どの辺にあるんだ?」
「あの辺りの上空30メートル付近に浮遊させてある」
江入さんが指で示した方向を凝視する。
魔法障壁で周囲に被害が出ないようにして、後は音が漏れないようにもして……っと。
「おらっ!」
俺はジャンプして宇宙船があるだろう空間を軽く小突いた。
ガツンッ!
確かに何かを殴った感触があった。
バチバチッと電流が迸り、薄らと物体の輪郭が現れ始める。
「ふんっ!」
蹴りも追加した。すると、
ブブブブッ――
ダメージによって認識阻害を維持できなくなった宇宙船がその姿を現した。
「あれ、なんか思ってたよりも小さいな」
宇宙船は思い描いていたような円盤型UFOであったが、サイズは割とミニマムだった。
長さは直径が6、7メートルくらい、高さは3メートルほどか?
『探査船に外部から敵意ある襲撃を受けたことを確認。直ちに迎撃を開始する』
機械音声が流れた。
円盤は臨戦モードに移行するようだ。
レーザー砲のようなものが装甲の内側からいくつも展開され、俺に向けられてきた。
俺はそれらを魔法で一瞬のうちに凍らせ無力化させる。
『迎撃システムの装備に異常発生、異常発生――』
攻撃手段を失った円盤宇宙船はビィービィーと空しく警報を響かせるだけだった。
「本当に探査船のオートガードをここまで容易く制圧するとは……」
江入さんのポツリと呟いた声は驚きより呆れのほうが勝っているように聞こえた。
「で、入り口はどれよ?」
「底の部分がハッチとなっている」
「了解」
俺は江入さんを小脇に抱え込んで浮遊する。
そして宇宙船の下に潜り込み、入り口と教えられた部分をノックした。
「開かないな……」
「タグがないから当たり前」
ジト目で突っ込まれる。
わかってるよ、少し確かめただけだっての。
仕方ない……。
開かないなら穴を開けるしかない。
俺はアッパーカットからの膝蹴りというコンボで宇宙船の底を吹き飛ばした。
「ああ……」
江入さんがなんとも言えない掠れた声を漏らす。
大丈夫大丈夫、後で適当に補修しといてやるから。
俺たちは無事、宇宙船の潜入に成功した。
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