言ってしまった 3

「……紅茶、飲みませんか?」


ボーっと立っていたら、三毛さんが絞り出す様な声で言った。


それを聞いた私は流石にちょっと躊躇ためらう。


「え?……いいんですか?」


二人の時間の邪魔をしてしまうのではないだろうか?


「はい。折角足を運んで下さったのに、このままでは帰せませんから。どうぞ」


三毛さんは、どうしようかと迷っている私を店内へ招き入れてくれる。


「あ、でも、ライトはここだけにしても良いですか?全部点けちゃうと、お客様が来てしまいますから」


そう言って、スポットライトの様に私がいつも座るカウンター席の所にだけ明かりを点けた。


「あ、はい。大丈夫です」


おずおずと、ライトに照らされた場所へ座る。


「ミルクティーでよろしいですか?」


「あ、はい。なんでも……」


なんとなく喋り辛い雰囲気の中、私は無言で三毛さんの手元だけを見ていた。


やっぱり、三毛さんの所作は無駄がなくスマートで惚れ惚れしてしまう。


「どうぞ」


あっと言う間にミルクティーが完成して、目の前に置かれる。見た目はいつもと同じミルクティーなんだけど、フワッと香る匂いを嗅いだ瞬間、あれ?と思った。


三毛さんをチラッと見たけど、何も言わずいつもと同じ微笑みを浮かべている。


「あ、ありがとうございます。いただきます」


自分の思い過ごしかと思ったけど、口に一口含んだ瞬間その疑問は確信に変わった。


(……やっぱり)


伊達に半年間通い詰めた訳じゃないな、とちょっと嬉しくなったけど、ちょっと心配にもなった。


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