第一章

あれから半年 1

「こんにちは~!!」


ログハウスにとてもマッチしているステンドグラスがはめ込まれたドアを、元気よく挨拶をしながら開ける。


カラン――と言う鈴の音と、


「実森さん、いらっしゃい」


と言う三毛さんの渋くて低い声が出迎えてくれた。


「こんにちは、三毛さん。今日もステキなお声ですね」


そう言うと、三毛さんは照れながら「いやいや…」と手を振った。


私は、照れた顔もかわいいとニヤニヤしながら、初めてここを訪れた時に座ったカウンター席に腰を下ろす。


「アールも、こんにちは」


カウンターの、一番端の陽当たりが良い窓際。


そこにある猫用ふかふかクッションの上で丸くなって寝ている黒い子猫に声をかけた。


私の声にアールは片目を開け、私の姿を確認すると面倒臭そうに尻尾をパタン…パタン…と動かした。


「つれないなぁ……」


あの時最初に助けたのは私なのに。


溜め息を吐くと、三毛さんがクスッと笑いながらおしぼりを手渡してくれる。


「今日は何になさいますか?」


「……いつもので」


私は少しブーたれながらおしぼりを受け取った。


「かしこまりました」


三毛さんは私が何を注文するのか最初から分かっていたのか、なんの躊躇ためらいもなく茶葉やお気に入りのカップを用意してくれる。


初めて三毛さんに出逢ったあの雨の日から半年、私は暇さえあればここ『milk tea』 に通い詰めていた。


私も紅茶が好きで、中でもミルクティーが一番好きだからなんだか運命的な物も感じてしまい(三毛さんに出逢えた事も含め)、半年通い詰める、と言う暴挙に打って出た。その甲斐あってか、三毛さんは私の好みを把握してくれている。常連になった様で嬉しい。


(まあ私の場合、最初のインパクトが強烈だったのかもしれないけど)


変わりのない、無駄のない動きをしながら紅茶を淹れてくれている三毛さんをボーっと眺めた。


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