家の倉庫が転移装置になったので、女神と四大精霊に農業を仕込んで異世界に大農場を作ろうと思う ~史上最強の農家はメンタルも最強。魔王なんか知らん~
第306話 近づいて来るXデー! 関係ないけど、明日は農業祭なので春日大農場も出店します!
第306話 近づいて来るXデー! 関係ないけど、明日は農業祭なので春日大農場も出店します!
コルティオール。
春日大農場では。
仕事が終わり、終礼が行われていた。
「今日もご苦労だった。怪我をした者、体の不調を覚えた者は申し出るように。最近、ゴンツがなんかビーム出して疲労を癒せるようになったらしい。膝痛、腰痛、肩痛、どれにも効果があるとの事だ。本日からゴンツの好意で、終業後2時間ほど治療をする。希望する者は食品加工工場の隣にできた診療所へ向かうように。ゴンツは無給で働いてくれる。何かを差し出せとは言わん。だが、礼だけはきっちり言おう。作物を育てる者は正しい心を持っていて欲しい。では、解散」
いつも通りに1日の全行程を終えた黒助は、何人かの幹部に声をかけて母屋に招集した。
もう2月の第1週が終わろうとしているのだ。
つまり、内容は察するまでもなく、あの事だろう。
◆◇◆◇◆◇◆◇
母屋のテーブルには、ゴンゴルゲルゲの作ったスッポンポンタルトとヴィネセレクトのハーブティーが並ぶ。
だが、メンバーの表情は暗い。
「お前たちに集まってもらったのは他でもない」
「う、うん。覚悟できてるわ! わたしたち!! ハッキリ言ってくれた方が嬉しい!!」
「そうか。さすがミアリスだな。まだお前にも話していなかったのに。俺の心を映す鏡のようだ。まったく、頼りになる」
「もう! 今はそんな事を言ってる場合じゃないでしょ!!」
「ああ。そうだった。明日、時岡農協主催の農業祭が行われる。そろそろ決戦も近いので今年の参加は見送ろうと思っていたら、岡本さんにな。春日さんのところは出店の目玉ですから! どうにかなりませんかねぇ!? と言われた。よって、どうにかする事になった。ここに集まったメンバーには、明日、売り子として協力して欲しい」
ミアリス様がプルプルと震える。
顔を真っ赤にして叫んだ。
「ちょっとぉ!! わたし、最終決戦前の心構えとか! なんかそーゆう良い感じのアレかと思って!! 恥ずかしい!! わたし、利いた風な口叩いて! 恥ずかしいぃぃ!!」
ミアリス様が涙目でテーブルに伏せてプルプルしておられます。
ここでメッセージ受信のお時間。
『くっくっく。普段頼りになる良妻ポジションの子がさ、勘違いして真っ赤になって、恥ずかしさに耐えながら涙目になるの。いいよね。くっくっく』
ベザルオール様、ありがとうございました。
「しっかりしてくださいよ! 若女将! じゃねぇや! ミアリスさん!」
「うぅ……。リュックぅ……。あんた、心の中でわたしをそんな風に呼んでたのぉ……?」
「や! 違うんす! これは、ミアリスさんのおっぱいに対する敬意の表われと言うか!! つか、私のおっぱいの母ちゃんなんで! つい、癖で!!」
「わたし、初めての子はリュックのおっぱいだったのね……」
ミアリス様が落ち着かれたので、黒助は話題を戻す。
「うちの家族は全員参加する。そこに売り子としてミアリスとリュック。それからな、実演販売も頼まれてしまったのだ。聞くが、ヴィネ。何か時間効率が良くて物珍しく、なおかつ美味いものはあるか。俺も無茶苦茶言っている自覚はあるのだが」
「そうだねぇ。んー。あ! イルノ! あたいたちが作ってる、ピンポコ豆のポップコーンなんてどうだい? ただ炒っただけだとくそマズかったけどね! イルノの作ったイチゴソースを絡めるとこれがイケるんだよ!!」
「それだ。それで行こう。では、イルノも実演販売に加わってくれるか」
「はいですぅー。もうすっかり現世にも、朝市にも慣れたですぅー。最近は周りに浮いてる水の球もおばあちゃんたちが拝むようになったですぅー」
「そうか。助かる。それから、ヴィネ」
「なんだい? 準備なら、これから済ませるよ! 3時間もあれば楽少さ!!」
「恩に着る。思えば、お前はいつも俺を陰から支えてくれるな。口に出す必要もないかと思っていたが、鉄人がそれは間違いだと教えてくれた。ゆえに、言おう。お前なしではうちの農場は立ち行かん。ずっとここにいてくれ」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「イルノですぅー。リッチさんたち、来てくださいですぅー。ヴィネさんが逝っちまったですぅー。早く叩き起こしてくれないと、全部イルノが準備しなくちゃいけなくなるですぅー」
やって来たリッチたちによって、ヴィネ姐さんは退場。
イルノもついて行く。
そのままヴィネに冷水ぶっかけたのち、準備に取り掛かるのだとか。
黒助はさらに打ち合わせを続行した。
◆◇◆◇◆◇◆◇
ブロッサムとギリー、そしてセルフィとウリネに黒助は指示を出す。
「すまんが、お前たちは出品の用意をしてくれるか。もう出荷準備が終わっている物の中から、冬には珍しい作物を中心にピックアップした。このメモを参考にしてくれ。それから、スッポンポンは是非出してくださいねぇ! と岡本さんが言っておられたので、そちらは倉庫から運び出してくれ。力仕事になるから、ブロッサム。頼めるか。面白変身して構わん。思う存分に翼を羽ばたかせて飛んでくれ。相当な量を要求されている。明日は休んで構わんから、無理を押して頑張ってくれんか」
「かしこまりでござる!! ついに吾輩の奥義が運搬に使われ始めた辺りに、明確な戦力外の気配を感じるでござるが! 出番があるだけ幸せでござる!!」
「おう! そうだな、ブロッサムの旦那!! 行こうぜ!!」
だが、風と土の乙女たちは言いたいことがあるらしい。
「黒助さん! ウチも売り子したいし! 鉄人も来るんだったら、絶対したいし!!」
「ボクもー!! お祭り行きたいよー!! ねー! クロちゃん、いいでしょー!!」
黒助は既にこちらの対応の用意も済ませていた。
かつてない用意周到さ。最終決戦が近いからだろうか。
違う。この男のメンタルはその程度では揺らがない。
農業祭が農協主催の一大イベントだから。それ以上の理由は必要だろうか。
「セルフィには、鉄人から伝言を預かっている。……いやー! セルフィちゃんは可愛いからさー!! なんていうか、あんまり他の男の人に見られてると、僕も嫉妬しちゃうんだよねー! 次の日に行きたがってたホテルのスイーツバイキングの予約しといたからさ! ……との事だ」
「りょ!! ウチ、準備の作業に加わるし!!」
「ウリネ。じいさんがな、新しいゲームソフトを買ったらしい。それに、魔王城に駄菓子屋を作ると言ってな。是非ともウリネの意見を聞きたいと言っている。実はもう母屋に届いているのだ。じいさんの顔を立てて、お菓子を食ってやってくれないか」
「そうなのー!? お菓子、たくさん食べていいのー!? じゃあボクねー! 明日はお菓子食べてゲームしてるー!! よーし! お仕事頑張るぞー!!」
ご覧いただきたい。
春日黒助が確実に仕上がっている。
「では、明日は午前6時に転移装置前に集合してくれ。バスを借りてあるから、それに乗って会場まで向かうぞ。飲み物や食事は俺が手配している。服も売り子なので、お前たちに任せる。以上だ。急で本当にすまん」
先ほど、ヴィネ姐さんが突然黒助ポイントを大量獲得したシーンを目撃していたミアリス若女将とリュックたん。
これは黙っていられない。
「く、黒助さん! 私、露出して行った方がいいっすよね!? ほ、ほら! 前に草野球した時とか、なんかおっさん……じゃねぇや! 農協の皆さんの反応良かったですし!! ねっ!? 黒助さんのお役に立てるっすよね!?」
「なるほど。さすが女子高生だな、リュック。俺にはとても思いつかん発想だ。やはりお前はこの農場に必要不可欠だ。明日は期待している」
「……しゃあ!! あ。私、帰ってコス衣装選ぶっす!! お疲れっした!!」
最後にミアリス様。
「その、黒助? わたし、リュックみたいに可愛いコスプレできないし。ヴィネやイルノみたいに実演販売までできる腕もないし。……邪魔にならないかしら?」
「ミアリス。お前はバカなのか」
「ふぐぅっ!! ご、ごめんなさい……」
「お前は隣に居てくれるだけで良い。困ったときに優れた助言をくれるのはお前だけだ。お前が邪魔なら、俺の方がよほど邪魔だろう。何もできんからな。すまんが、明日も力を貸してくれ」
「う、うんっ! 任せて!! そだ! わたしもちょっと頑張って、品のあるセクシーな感じにするわね!!」
「そうか。では、俺は現世の準備に取り掛かる。また明日な」
そう言って転移装置を潜って去って行く黒助。
敵を落とす前に、黒助ハーレム全員を落とすのはヤメて頂きたい。
順序と言うものがある。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます