家の倉庫が転移装置になったので、女神と四大精霊に農業を仕込んで異世界に大農場を作ろうと思う ~史上最強の農家はメンタルも最強。魔王なんか知らん~
第169話 農家の嫁候補の女神と精霊が恋する乙女カワイイお話
第169話 農家の嫁候補の女神と精霊が恋する乙女カワイイお話
コルティオール。
春日大農場の母屋では。
「ふぁぁー。ミアリス様、おはよーございまーす」
「おはよ。セルフィ。あんたも早起きに慣れてきたわね。偉い、偉い」
まだ2つの太陽が昇る前だと言うのに、女神と風の精霊が起床していた。
彼女たちは身支度を整えると、お互いにファッションチェックをする。
「セルフィ。ちょっとスカートが短すぎるんじゃない?」
「やー。これくらい普通ですしー。つか、ウチらってお客の目を引いてなんぼなとこあると思うし。ってか、ミアリス様は胸元が緩すぎじゃないですか?」
「うっ。こ、これは……。その。お客と言うか、とある男の目を惹きたいと言うか……」
「あー。分かりみ。ウチも結局そこなんで」
そうこうしていると、イルノとウリネも起きてくる。
「おはようございまふー。今日は朝市の日だったですぅー。こっちのお仕事はイルノたちに任せてくださいですぅー」
「おはよー!! いいなー! ボクも現世に遊びに行きたいなー!!」
「遊びに行くんじゃねーし。ウリネは良い子にしてたら、お土産にメロンのゼリー買ってきたげる! 最近のお気に入りじゃん?」
「えー! ほんとー!? セルフィ、ありがとー!! てっちゃんに言っとくねー! セルフィが最近優しいってー!!」
「ちょ、別に鉄人は関係ねーし!! ……けど、言いたいなら言えばいいし?」
「セルフィさんはもう完全に落ちてるですぅー。ツンデレギャルの前半部分は既に面影がないですぅー」
ミアリスがスマホを見て「いけない! もう行かなくっちゃ!!」と声を上げる。
セルフィも「りょー! 遅刻はなし寄りのなしだし!!」と応じた。
慌ただしく出かけていった2人を見送って、イルノとウリネは眠い目をこする。
「あの2人が同時に嫁いでいくと、イルノたちはどうなるのか気になるですぅー」
「ねー! ボクも一緒にクロちゃんの家に行こっかなー! イルノも行こうよー!!」
近い将来、コルティオールの守護者がゴンゴルゲルゲのみになる可能性が浮上した。
「ぬぅ。お主ら、ずいぶんと早いな! よし、ワシがサツマイモを蒸かそう! 待っておれよ!! ぬぅおぉぉぉぉっ!! 『フレアボルトナックル』!!」
勤勉で実直な男、ゴンゴルゲルゲ。
彼がすべきことは必殺拳でイモを蒸かす事ではなく、嫁を探すことなのかもしれない。
独りぼっちは寂しいもんな。
◆◇◆◇◆◇◆◇
春日家では、洗面所で未美香が朝練に出かける準備をしていた。
そこに駆け込んでくる黒助。
「おっと。すまん。気付かなかった」
「もぉー! お兄のえっちー!! 妹が着替えてるのにノックもしないんだもん!」
「悪かった。俺としたことが、少し時間の調整をミスしてな」
「そうなの? じゃあ別にいいよっ! あたし、お兄に下着見られても平気だし! 裸でも平気だし!!」
「そうか。では、すまんが顔を洗わせてくれ」
「オッケー! あたしは体操服におきがえー!! よいしょっと!!」
絶対的な信頼関係で結ばれている兄と義妹の会話である。
ちなみに、黒助が鉄人に入れ替わると未美香に冷たい目で蔑まれ、柚葉から1週間ほど食事を全てモッコリ草のみにされる処罰を受ける事になるのは、もはや言うまでもない。
黒助がどうにかツナギに着替え終わったところで、家の呼び鈴が鳴った。
柚葉が対応する。
「はーい。あ、ミアリスさんとセルフィさん! おはようございます!! 朝ごはん、用意できてますよ!」
「おはよ。柚葉。いつも悪いわね。大学に行く前なのにご飯まで作ってもらっちゃって」
「おっはよーっす。マジで柚葉の女子力の高さには脅威を感じるし!」
「いえいえ! 兄さんのお手伝いをしてもらうのですから、このくらい当然です! 春日家の台所は私が守ると決めているので! ……ふふっ!!」
兄と固い絆で結ばれた義妹のセリフである。
「私の兄さんは譲りません!!」と言う決意表明であり、当然ミアリスとセルフィもそれを理解している。
そして、セルフィは「ウチ、相手が鉄人で良かったし」と安堵している。
柚葉さんは「鉄人さんですか? 送料はこちらで負担しますから、いつでも送り付けますよ?」とセルフィに常々語っているのだ。
それから黒助が2人を出迎え、柚葉の用意した朝食を春日家の4人にコルティオールの2人の計6人で美味しく頂く。
気付けばいつの間にか食卓に座っているのは、ニートの基礎スキル。
「あらー! セルフィちゃん! そのスカート可愛いねー!! 長い脚と太ももがとってもセクシー!!」
「あー。オタクってマジでキモいし。すぐ脚とか見てくるし。あー。キモいしー」
柚葉と未美香が同調した。
「確かに鉄人ってキモいよねー。時々ねー、朝のお天気お姉さんの事とかもやらしい目で見てるんだよ。ミニスカの日は録画したりするの。うへー」
「鉄人さんは社会の敵であると同時に乙女の敵でもありますし、我が家の敵みたいなところもありますから。ほら、また勝手にご飯おかわりしてますし」
義妹たちの厳しいコースを突く火の玉ストレートを見て、セルフィは慌てて鉄人の肩を叩く。
「やっ! 別にウチは気にしてないし!? つか、脚とか見られても別に鉄人なら嫌じゃねーし! げ、元気出せし! 後で写真撮ってもいいし!」
「あらー! 全然元気なのに、優しいギャルがセクシーアピールしてくるー!! いやー! 今日もご飯が美味いですなぁー!!」
鉄人の強メンタルは、今さら義妹の辛辣な言葉程度では揺らがない。
「心のバランス崩してたらニートはやってられないよ!」とは、ニート界をけん引する今最もホットな男の言葉である。
一方、黒助もミアリスの服装に気が付いた。
「おい。ミアリス。聞くが。シャツから下着が見えているぞ。それは問題ないのか?」
「くぅぅぅっ!! これ、純粋に大切にされて心配までされてるヤツー!! こ、これはいいの! 見えてもいいヤツだから!!」
「そうなのか。いや、ミアリスが気付いていないのであれば、朝市で衆目に晒されて恥ずかしい目に遭うのではないかと思ってな。すまなかった」
「ふぉぉぉぉっ!! もう何も言えないヤツー!! 朝から高カロリー過ぎるんですけど!!」
再び義妹たちが同調する。
「お兄ってそーゆうとこあるよね! 紳士過ぎるからね、女の子のオシャレに気付かないの! 見せブラとか絶対アウト! でもね、そこがカッコいいよねっ!」
「そうですね! 兄さんの言葉は全てが相手を思ってのものですから! その優しさに触れて、兄さんの事を嫌う人なんてこの世にいません!!」
どこまでも開いていく黒助と鉄人の差。
慢心、環境の違い。
普通に考えるといい年して仕事もせずにギャルの彼女とイチャイチャしているからだと思われるが、鉄人はそれを理解しているし、その上でいばらの道をえびす顔で歩いているため、これはもう他人がとやかく言うものではないかと思われる。
◆◇◆◇◆◇◆◇
食事を済ませた一同は、それぞれが活動を開始する。
「じゃ、あたし行ってくるねー! お兄! ミアリスさんとセルフィさんも! 頑張ってね!!」
「ああ。未美香、車に気をつけてな」
「私も今日は1限から講義があるので、行きますね。すみません、兄さん。お手伝いできなくて」
「気にするな。しっかり勉強してくると良い」
義妹たちを見送った黒助は、鉄人が運転するハイエースに乗り込んだ。
それにミアリスとセルフィも続く。
これが、最新版『春日家の朝の風景・朝市バージョン』である。
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