?×7=Kが

 君は動き回る赤い丸に手を伸ばした。


 手のひらが赤い丸に触れると、ある変化が生じた。


 赤い丸が動きを止めたのだ。君は赤い丸を捕まえた。


 捕まえる、という表現こそふさわしいだろう。


なぜならば、しばらくすると赤い丸は君の手から逃れるように、小刻みに揺れ始めたからだ。まるで小さな生きもののように。


 君はそのまま、赤い丸を押さえたまま、ゆっくりと腕を右に動かす。


 最初の横棒の部屋で扉を開けたときのように。


 赤い丸は右に動く。


 試しに君は円を描くように、腕を動かしてみた。


 君が予想したように、赤い丸は君の動きにあわせて動く。


 満足して君は別の動作に入る。


 君は四角形の切れ目に向かい、円を導いていく。


 そう、導いていく。出口に向かって。


 四角形の右上の切れ目から赤い丸を「外」に出す。


 例のカシャリという解錠音がするかと思ったが、無音だった。


 あれ、と不安になって、赤い丸から手を離した。


 円は自分を閉じ込めていた四角形の周囲を高速で二週回った後、ゆっくりと右に移動を始めた。そのまま、ディスプレイの外に消えていった。


 嬉しいだろう。君と違って、彼は、赤い丸は閉ざされた空間から解き放たれ、自由になったのだから。あるいは彼ではなく彼女かもしれないが。


 おもむろにカチャリという音がして、君にはもうお馴染みの動きが始まった。


 君は隣の部屋に向かう。


 今度の部屋は今までとは違う部分があった。


 右奥、正方形の部屋の隅にオブジェのようなものがある。


 大きな円柱形の水槽のようだ。


 ただ、熱帯魚が泳いでいるわけではなかった。


 水槽の中身の液体は半透明の緑色をしており、なかに浮いている「それ」は動いていなかった。


 いや、ゆっくりと動いてはいるが、それはなかの液体の動きにあわせて揺れているだけで、意思を持って動いているのではなかった。


 水槽のなかにいるのは、どう見ても人間のようだった。

 裸の人間だ。


 どこかで見たような記憶がある。


 君は困惑する。をどこかで見たことがあるような気がするとはどういうことだ、と。


 さぁ、どうする?


 君が決めるのだ。

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