?×6=Dめ
君は待った。
謎の空間には、なんの変化も訪れない。
その時間を使って君は考える。
さっきから「君、君」と呼びかけられ、妙な決定を迫られているが自分は君の悪い建造物に閉じ込められてはいないではないか、と。
小説投稿サイトで素人が書いた下手くそなものを読んでやっているだけではないか、と。
違うのだ。
君は一緒にお弁当を食べる友達もいない本好きの高校生で、お昼休みにこれを読んでいるだけなのかもしれない。
君は立派かどうかはともかく一応は社会人で、仕事を終えて帰る途中の電車で立ちながらこれを読んでいるのかもしれない。
君は小説家を目指す大学生で、大教室のはるか後方で講義中にこれを読んでいるのかもしれない。
君は世間的には献身的な妻で、不倫相手を待ちながらこれを読んでいるのかもしれない。
君は目が見えなくて、ヘルパーにこれを読んでもらっているのかもしれない。
君は事故かなにかで腕を失っていて、赤い点に触れることもできないのかもしれない。
君は車イスで歩いて妙な空間を移動できないのかもしれない。
違うのだ。
違わないが、違うのだ。
それはかりそめの姿だ。
君は今、ここにいる。ここに閉じ込められている。
その証拠に君は隣の部屋に移動したではないか。
またしても扉が閉まり、君は正方形の部屋に封じ込められた。
ほら、また左にディスプレイがある。
今度は黒い線で大きな正方形のようなものが描かれている。「のようなもの」というのは、正方形の右上の部分に線がない箇所があるからだ。
一辺の八分の一くらいの短さだが、線が繋がっていない。まるでそこが出口であるかのように。
正方形めいたものの内部にはお馴染みの赤い丸がある。点滅はしていないが、ゆっくりと不規則に動いている。壁にぶつかってはねかえされるボールのように、一部が切れた正方形のなかをさまよっている。
さぁ、どうする?
君が決めるのだ。
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