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 君は赤い丸に触れたまま、横に腕を動かした。黒い横棒の上を赤い丸が滑っていく。


 赤い丸が白い丸と重なる。


 カシャリという音がした。


 この音はなんだ、と考える。どこかで聞いたはずなのだが、思い出せない。


 予想はしていたが、明かりが消えた瞬間、ゾクリとしたものが背中を走る。だが、君は怯まない。ゆっくりと扉が動き出す。


 君は扉が上がりきる前に隣の部屋へと進む。


 前の二つの部屋とそっくりの空間だ。正面に白く光る液晶ディスプレイがある。


 今、君は少しだけだが気持ちに余裕があった。背後で閉まる扉を気にもかけない。どうせ閉じるのだろうと達観している。


 君は天井を見上げる。白い半透明のアクリルボードのようなものが見える。


 縦横に二本、黒い線があり、天井を九つの正方形のマスに区切っているかのようだ。おそらくアクリル板と天井の間に電灯が仕込まれているのだろう。


 ディスプレイの前に進む、今度は黒いアルファベットの【V】の字が映し出されている。左上、【V】の字を書き始める地点に赤い丸があり、点滅している。右上、【V】の字を書き終える地点には白い丸がある。


 このあたりで君は疑問に思うかもしれない。


 さきほどから、君に「君」と呼びかけている『お前』は誰なのか、と。


 当然の疑問だろう。


 だが、安心してほしい。『お前』あるいは『あなた』、ないし『私』または『俺』は君の敵ではない。


 液晶の【V】の両端の赤と白の丸。


 簡単だろう。


 さぁ、どうする?


 君が決めるのだ。

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