第5話 妹は俺の彼女、なんだこのパワーワードは……


 清流の如くサラサラと流れる黒髪、美しく整った鼻はもう少し高ければ歴史が変わってしまっただろう。

 

 下唇がやや厚い、愛らしいその唇から時折見え隠れするピンク色の舌を門番の如く守っている様だった。

 

 少し控え目な胸はいまだ成長期の途中だが、両手にすっぽりと収まりそうなツンとしたそれは、俺好みの大きさと言える。


 更には、しなやかに伸びる長く細い腕、ピアニストの様に長く美しい指。

 両手で掴めそうなくらいに括れたウエスト、体育会系の様に引き締まったヒップ、そこから伸びる足はカモシカの様に細く長い。

 最近では身体測定で座高は測らないが、確実に身長の半分以上を占める程に長いと思われる。


 身長はそれ程高く無いが、頭が小さく手足が長い。

 全体を俯瞰で見れば間違いなくトップモデルの様な体型に体格であろう。


 そして容姿だけではない、彼女は性格も完璧だった。優しく頼りがいがあり、誰に対しても常に笑顔で接し、決して悪口陰口を叩く事は無い。


 更には運動神経が良く、時々運動部の助っ人として試合に呼ばれる事もある。

 そして頭も良く勉強も出来る。成績はとてつもないくらい凄く、常に全国トップクラスの成績を保っている。

 

 友達は1000人を遥かに越え、誰からもどこからも彼女の悪い噂を聞いた事が無い。

 完璧超人、そしてなんとそんな完璧超人が俺の彼女になった。なってしまったのだ。

 そんな完璧超人には、ずっと彼氏がいなかった。

 俺はそれを完璧過ぎるからだろうって、そう思っていた。


 彼女は完璧過ぎる、するとどんな男も自分を卑下してしまう。

 俺なんかじゃ釣り合わないって思ってしまう。


 でも、そんな女の子が俺の事を好きだと言った。

 涙を流し付き合ってくれと懇願された。


 俺は考えに考えて……悩みに悩みに抜いて、そして彼女と付き合う事に決めた。


 なぜそんなにいい子なのに、悩んだのか……そりゃそうだ。



 俺の彼女になった女の子は……俺の……実の妹なのだから。



 自慢の妹、兄から見ても妹は可愛いし、綺麗だし、美しい。

 清楚で可憐で愛らしい。


 そう思ってしまう程なのだ。


 そう……長々と前置きをしたが、俺はそんな妹と付き合う事になった。なってしまったのだった。


「あうううううう」

 ベッドに倒れこみ、俺は枕に顔を埋めそう声を出した。

 後悔では無い、後悔なんてしていない。する筈がない。

 あんな超絶美少女が、あんなに性格のいい娘が、女の子が、俺の彼女になったのだから。


 まあ……妹なんだけど……ね。


「ああああああああああああ」

 嬉しさ半分戸惑い半分、だけど後悔じゃないんだ。公開出来ないけど。

 

「妹と付き合って……それで……どうするんだ?」

 そもそも俺……女子と付き合った事ないのに、童貞野郎なのに……そんな俺が最初に付き合う相手が妹だなんて、しかも完璧超人のあの栞だなんて……ハードル高すぎね?

 

 手は当然出せない。出せるわけない。だからプラトニックに徹する。

 いや、そんな事考える迄もない。

 好きという気持ちはある。もちろん家族として……だろう。


 だろうと言うのは比べようがないからだ。俺は人を本気で好きになった事がないから。

 いや、あるか……過去に一度ラブレターを出した。

 年上のお姉さんだった、でもあれは恋ではなく憧れだったと思う。

 

 とにかく俺には恋という物がよくわかっていない。いや、少しはあるかも知れないが、でもそれは恋では無くて性欲じゃないのだろうか? そう思ってしまう。

 勿論どんなに可愛くとも、どんなに愛らしくとも、どんなに美しくとも……俺が妹に、栞に対して性欲を抱く事はない……ある筈がない。


 それでも付き合うといった以上俺は妹に対して責任を取らなければいけないんだ。

 妹の望む事は出来るだけ叶えてあげたいんだ。


 俺を好きと言ってくれた妹の為に俺は俺に出来る事をしなければならないのだった。


 









 

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