第42話 4-4 女の戦い

 小御門の合図で、二人は護国刀を構える。

二人とも武器は刀。静香はもともと刀だが、黒ギャルが刀を持つという異様な風景に違和感を禁じ得ない。


 基本的にこの学園の生徒は、特に何かなければこの刀を武器とすることが多い。

武なんかは、あの肉体が武器のため刀を使わないが、ほとんどの生徒は刀が武器だろう。


 遠距離武器が魔獣に対して効果がない今、やはり近接武器といえば剣というのが世界共通だろう。中には大剣やレイピア、ハンマーなどもあるらしいがまだ見たことはない。


「じゃあ、いくよ~しずしず」


「ええ、いつでもどうぞ」


直後膝をつきかける静香

「これが黒田さんの力ね。変な感覚だわ」


 黒田のギフトは、半減

自分が敵と認識したもの身体能力を発動時から半分にする力

ただし、自身の最高ランク以下の相手にしか効果がないため、魔獣ならBランク、ナンバーズならBランクギフトを持つ相手の身に効果を持つ。


「しずしず武道家らしいけど、あたしも一応レディースとして喧嘩なれてっから」

衝撃の事実が明かされた。黒ギャルはレディースなのか。ってかまだレディースっているんだな。特攻服とか着るんだろうか。


「じゃあいっくよ~。すぐボコっちゃったらごめんね」

そういいながら、美鈴は、静香に向かって走る。


「ええ、貴重な体験だったわ、この力がなければ負けていたのは私かもね」

直後発動するのは、新たに得たギフト 戦乙女『身体能力を無条件で3倍にする壊れスキル』

3×1/2によって、静香の身体能力は1.5倍となった。


 ただのレディースと、身体能力1.5倍の武道家

相手になるわけもなく、勝負は一瞬でけりがついた。切り込んできた美鈴の一撃をよけて、背中を一刀。直後そのまま地面にキスする黒ギャル


「試合終了! 勝者二菱」


「会長さん、えらいべっぴんやと思っとったが、しかも強いんかい。ありゃ、わしかてへんかもな。素のタイマンでも勝てなさそうや」


「あぁ、しかし美鈴はタイマン向きではないな。あの能力多対多のときに効果を著しく発揮しそうだ」


 そして交流という名の戦いが終わった。

その映像を見たほかの生徒たちは、自分たちもいつかあのような力が得られるのかと、期待に胸を膨らませるものも多かった。特に印象的なのは、御剣剣也の試合だろう。

派手さこそ佐藤が勝っていたが、圧倒的な強さでその佐藤を一閃の元下した御剣はやはり強い。彼にならついていきたい。頼りになる。

そういった感情を皆が抱いていた。


 6人はそのままクラスに戻り、今後のスケジュールなどを伝えられた。

さすがに学生なので、ずっと戦闘訓練とはいかないがスポーツ強豪校のようなメニューをこなすこととなりそうだ。


「よーし、今からプリントを配る。これが現状わかっている塔や、ポイント、ギフトなどがまとめられた資料だ。分量は多くないので、一度目を通すように」

そういって小御門先生がプリントを配る。


とはいっても前回八雲からもらった資料からほとんど大差はない。

追加で分かったことといえば


 クエストでは、Aランク 100万 Bランク 1万ポイントがもらえること。

そして、Aランクギフト発芽には200万、Sランクギフトは2億ポイントがいるということだろう。現状始まりのタネは、ワールドクエスト以外に追加で獲得できないが、ダンジョンの調査が進まない今 正直まだわからないことだらけということだ。


 世界でもダンジョンを挑戦したナンバーズは存在するらしいが、だれ一人帰還していない。

ダンジョンの中に何があるのか、それを知る者はいまだ皆無ということだ。


「では、今日のところはここまでだ。明日から授業と戦闘訓練が始まる。寮生活のものも多いだろう。今日は荷解きなどにつかうように。では解散!」

そういって小御門先生は出て行ってしまった。

初日なので、午前中で終わってしまった。


「なぁ、親睦会せえへんか! わしら6人やけど、これから一緒に戦う仲間やろ! 仲ようした方がええと思うねん」

彪雅が提案する。正直俺もそう思う。まだ話足りないことは多い。


「それ、あり~」

黒ギャルがのった。


「剣也が、いくなら」

静香はぶっきらぼうに答える。俺がいないと人見知りするんだろう。


「俺はいいぞ」

武も乗る。


そして、俺も問題ない。問題があるとすれば。


「ああ、いいだろう」

なんと! 一番断りそうなやつが意外とすんなりとOKしてくれた。

佐藤の承諾をもって6人で親睦会を行うこととなった。


「ほな、どこでやろっか。荷物あるからまだ部屋は厳しいしな」


「なら私カラオケいきたーい」

この半年で、都市部はだいぶ復興が完了した。

多くはないがカラオケ店なども復帰し東京の都市部は震災前の機能を取り戻しつつある。

そもそも東京は震災による建物の倒壊などの被害がほとんどなかったのだ。

日本の建築技術の凄さである。


「ええやん! カラオケなら広いし、個室やし、飲み食いもできる。わしら一応有名人やからな。特に剣也が。普通の店言ったら邪魔なってまうわ」


 御剣剣也はインフルエンサーだ。今や発言力は総理大臣をも凌ぐ可能性がある。

それほどの有名人であり、影響力のある存在。

そんな彼がその辺の店で食事をしているだけで、わらわらと人が集まってしまう。

その点カラオケなら個室なのでその心配もないだろう。

なので、剣也としては反対する理由はない。

同年代の友達とカラオケはよく行った方だ。

アニソンしか歌わないが、こういう時のためにたしなんでいる曲はいくつかある。


 他のメンバーも特に反対はなかったので、カラオケに決定した。

静香だけは、初めてなのかワクワクしているようだったので、最初に歌わせてやろう。

こいつなに歌うんだろう。そもそも歌とか歌うのか?


そうして一同は、最寄りのカラオケ店 スモールエコーへと向かった。

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