第30話 3-1(3) インフルエンサーの朝は早い

俺は夏美に会いに行こうとする。

朝食を一緒に取ろうと思ったが、直後見ていたかのように

LINEがなる。


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来ないでよ!

今のあんたと一緒にいるとこ見られたら

ファンの子達に殺されかねないわ!

二人で会うのは、学園でね。

その時いっぱい一緒に入れるから。

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夏美に拒否されたが、たしかに今は危険かもしれない。

母と一緒にいたときですら、恋人と勘違いされて釈明文を、ツイートした。

大炎上して、ネットニュースにも上がったからだ。

ロリババアが、全国区になった瞬間であった。


信じられないかもしれないけど俺の母親ですと

言わなければいけないのは、思春期の少年には恥ずかしかった。


こんな40代が存在するのか?というコメントで一杯だったが、俺もそう思う。


夏美との時間は、学園でいっぱい作ろう。

一緒に住むんだ。

あんなことやこんなこと、むふふ


「下品な顔だぞ、剣也

俺の若い頃にそっくりだ。」


「父さん!なんでいるんだよ。」

俺は動揺して、声を荒げた。


「なんでって、隣のキャンプで寝てるんだ。

朝から会うぐらい当然だろう。


しかし、お前も大変だな。

これがモテ期か?」


モテ期にしては、モテすぎだがつっこむのと疲れるので流す。


「母さんは?」


「母さんは、ママ友達にマウントをいや、

お茶会しに行ったよ。

息子自慢だな。親孝行ものめ。」


父さんは笑って応えた。

ママ達は、旦那の年収や、息子の優秀さでマウントを取るらしいが、

たしかに今の俺より注目されている子供がいる親なんていないだろう。

少し嫌な気持ちになるが。


「お前は今日も筋トレか?

防衛省まで大変だな。」


「いいランニングになるからいいよ。

それに神宮寺さんに見てもらった方がサボりづらいし。」

剣也はゴブリンキングを倒してから、毎日筋力トレーニングを行っていた。

同時にギフトのトレーニングもだが、剣也のギフトは身体能力が向上するタイプ

なので、身体能力そのものを向上させれば、より強い効果を発揮する。


「そうか、頑張れよ。」

そう言って二人は配給を取り近くのベンチに座る。


周りの好機の視線が気になるが、父さんは気にしてないらしい。


「なぁ剣也、お前に前から聞きたいと思ってたことがあるんだ。

聞いてもいいか?」


「なんだよ改まって。なに?」

配給の豚汁を啜りながら、剣也はきく。

珍しく真剣な父親の顔に少し不安を覚えながら。


「夏美ちゃんとはHしたのか?」


豚汁が勢いよく飛んだ。


「な、何を言ってんだよ。親が息子の情事を聞くな。」


「大事なことだ!この歳で妊娠してみろ。

大変だぞ、責任を取れるのか?

お前たちは一緒に住むんだからな。」


「とるよ。もしなったらとる。

でもまだだから、俺たちキスもまだだから!」


「そうか、でも、後悔しないようにな。

こんな時代だ。いつ別れが来てもおかしくない。」


「怖いこと言わないでよ。大丈夫だって。」


「お前が守るからか。」

父親が真剣な顔で剣也の目をみて聞く。


冗談かと思っていたが、本当にまじめな話だったらしい。

なら剣也もまじめに答える。

「うん守るよ。父さんが母さんを守ってるように。

俺も夏美を守る。」


驚いた顔で父さんは俺を見る。

そして優しい顔で、いい子に育ってくれて嬉しいよ。

とつぶやいた。


ご飯を食べ終えた剣也は、

「じゃあ俺防衛省のジムまで行ってくるよ。」

と走り出してしまった。


「あぁ、頑張ってな。」

息子の背中が遠くになっていくのを見ながら

自分の手を離れていくのを感じる。


寂しい気持ちはもちろんある。

もちろんあるが、その小さくなっていく背中に成長した逞しさを感じた。


「もう子供じゃないんだな」

寂しい気持ちは、嬉しい気持ちが勝り

父は、満足した顔で豚汁をすすり自分もキャンプに戻った。

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