第29話 3-1(2) インフルエンサーの朝は早い

俺に暴言を吐いたユーザが炎上していた。


やめてやめて、そんなことしないで。

俺はそんなこと望んでいない。


時に正義は人間を最も残虐にさせる。

その言葉を思い出す剣也だった。


彼らに悪気はなく、これが正義と思い込んでいるのだろう。

とはいえ、流石に不憫すぎるため擁護ツイートをする。


=========================================================

僕のアンチに対して攻撃するのは、やめてください。


僕は傷ついていません。

彼らは僕が調子に乗らないように

戒めてくれるとても貴重な人たちです。

そして僕が守るべき人たちです。


きっと僕の行動や在り方でその人の考えを変えて見せますので、

どうか攻撃をやめてください。

=========================================================


100万リツイートされた。

いいねは100万を簡単に超えている。


これがインフルエンサーなのか。

お金配りおじさんに到達してしまいそうな勢いだ。

承認欲求がオーバーヒートして、ちょっと気持ち悪い。

俺はそんなに承認してほしくない。


吐き気を催しながらも、剣也は配給を受け取るため

避難所の外に出る。


カシャカシャ

パシャパシャ


たくさん写真を撮られる。

パパラッチがすごい。

すごく嫌だが、八雲さんにそこを我慢して欲しいと頼まれたので我慢する。


そう思っていると記者の一人がインタビューにきた。

毎朝毎朝同じ質問だ。


「剣也君! おはようございます!

今日のご予定は?」

記者たちは固唾を呑み込み剣也の言葉を待つ。


剣也は嫌々ながらも笑顔で答える。

「今日も筋力トレーニングです。

みなさんが安心できるような世界を取り戻すため

頑張りますので、応援よろしくお願いします。」

にっこり笑って取材に応じた。


これ何回目?毎朝同じだけどいいのか?


「きゃー剣也くーん!こっち向いて!!」

「サインして!握手して!」

「抱いてぇ!!」


多くのファンの女の子が、避難所の外で待機していた。

さすがに迷惑ということで避難所の中まで入ることは禁じられていた。

最後の言葉だけ知ってる顔のオカマから聞こえたが無視する。


あの動画が流れてから毎日これだ。

会見の時の動画は、YouTubeにあげられ、動画は、10億再生されたらしい。

世界中で、何度も再生されている。


演出と、少しだけ顔も補正されているその動画は、

たしかにめちゃくちゃカッコいい。

演出の力もあるだろう。

とはいえ、運動のできる男はモテる。

それが命をかけて自分達を守ってくれる戦士なら尚更だろう。

あとあのオカマのおかげで身なりはそれなりになっているのも影響しているのだろう。


俺は笑顔でファンに手を振る。

正直恥ずかしい。別に俺はアイドルじゃないんだが。


そして、黄色い声援が最高潮を迎えた。

野太い声が1番大きいけど、気にしない。

突っ込んだら負けだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る