空が晴れたので
おくとりょう
結んで開いて
「ねぇ!
早くこっちに来てくださーい!」
丘の方からパートナーロボ、
「……はいはい、もうちょっと待ってね」
ラップの上に炊きたてほかほかのご飯を広げながら、返事をした。屋代さんは家の中のマイクとも常に同期しているので、ここから普通の声で応えても充分聴こえるらしい。
……そういえば、まだ彼女と一緒に生活し始めてすぐの頃。彼女が外出中、ひとり歌いながら料理をしていたら、全部聴かれていたということがあった。僕はすっごく音痴なのに。
顔をしかめつつ炊飯器をパカッと開けると、真っ白な湯気。立ちのぼる美味しそうな香りに、僕の黒歴史は吹き飛んだ。お腹が鳴りそうになるのを堪らえながら、その艶々した白米をギュッとラップで包む。海苔は手に入らなかったので今日は無し。
……中身を隠した真っ白なおむすびは、ちょっと屋代さんに似てる気がする。決して彼女には言わないけれど。
それらを保温性のバックパックに突っ込んで、僕はセグウェイに飛び乗った。小さなモーター音を立て、朝露の残った緑の草原を風のように走りだす。
ぽかぽかと暖かい日射し。ひらひらとモンシロチョウやモンキチョウがあちこちで舞っている。……あぁ、頬に感じる風が心地いい。
「今日はピクニック日和だ」
とうとう、ひとりごとがこぼれた。
……何たって今日は久々のお休みなのだ。ちょっと浮かれるくらい許して欲しい。背中から伝わるおにぎりの熱にワクワクして、ついつい頬も緩む。
今日は屋代さんとふたりでピクニックなのだ。
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