―99― 神出鬼没
目を開けると、何度も見た光景が広がっていた。
なんの変哲もないダンジョンの中だ。
ここにいるってことは今までの死に戻りと同様、勇者一行たちとカタロフダンジョン内に転移した直後まで死に戻りしたということか。
「最初からやり直しか……」
そう思うと、憂鬱になる。
ニャウと築いた関係は全てリセットされたからだ。
今のニャウは俺に対する好感度はほぼゼロといっても過言ないはずだ。
とはいえ、勇者エリギオンが死ぬ直前まで戻れたと考えれば、少しは希望があるのかもしれない。
前回の時間軸で、勇者エリギオンの力なしで魔王ゾーガを倒すのが難しいんだってことを痛いほど思い知らされた。
大賢者アグリープスも賢者ニャウも、魔王ゾーガ相手に歯が立たなかった。
まずは、勇者エリギオンが死なないように、うまく立ち回ろう。
何度も繰り返したことで、十分過ぎるほどの経験が俺の中にはある。それらを活かせば、今度こそ世界が滅びる運命から回避できるはずだ。
そう決意した、俺は一歩足を踏み出す。
瞬間、予想外な出来事が起きた。
それは、今まで何度も繰り返してきた時間軸では起こりえないことだった。
こんなこと微塵も予想していなかっただけに、大きな衝撃を受ける。
だが、同時に、今まで何度もこういうことがあったことを思い出す。
そうだった。
アゲハという少女は、いつも神出鬼没だ。
「あぁあー、やぁーっと事象に干渉できた」
それは、気怠げな様子でそう呟く。
突然、目の前にアゲハが現れた。
ずっと、彼女のことを探していたからか、嬉しさがこみ上げてくる。
けど、すぐに彼女という存在が危険だということを思い出して、慎重にならなくてはと自戒する。
どっちだ……?
詳しいことはよくわからないが、どうにもアゲハという人間は2人存在するらしい。
1人は温厚な性格のアゲハ。
もう1人はいつも激情にかられているアゲハ。後者のアゲハを俺は勝手に、黒アゲハと命名している。
「で、なんで、お前、ここにいるの? おかしいよね?」
そう言って、アゲハは鋭い眼光で俺のことを見ていた。
その眼光を見て、目の前の少女が黒アゲハのほうだと理解する。
「えっと」
問われた質問に返そうと口を開いた瞬間だった。
「知らない女の臭いがする」
彼女はボソリと呟く。
恐らく、ニャウのことを言っているであろうことは明らかだった。
「まーた、新しい女を作ったの?」
そう言って、彼女はニッ、と不気味な笑みを浮かべる。
「あ……、えっと」
黒アゲハの威圧の気圧されてしまった俺は、なんの言葉も思い浮かべることができなかった。
なにを言っても、彼女を怒らせてしまうんじゃないだろうか。
「とりあえず、一回死のうか」
彼女の口元は笑顔だったが、目は全く笑っていなかった。
あぁ、どうやら俺は一回死ぬらしい。
そう思った矢先、彼女が持っていた剣で俺のことをズサリ、と突き刺した。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
GAME OVER
もう一度挑戦しますか?
▶『はい』 『いいえ』
△△△△△△△△△△△△△△△
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
『はい』が選択されました。
セーブした場所から再開されます。
△△△△△△△△△△△△△△△
第三章 ―完―
―――――――――――――――――
【あとがき】
これにて第三章完結です!
よかったら、★をいれてくれると嬉しいです!
引き続き応援よろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます