平和堂
滋賀県の有名企業といえば「平和堂」が挙げられる。
平和堂は滋賀県彦根市で創業され、60年以上続く企業である。
滋賀県民であれば、平和堂の名前を知らないものはいない。
逆に平和堂を知らぬものは、滋賀県民ではないと言っても過言ではないだろう。
平和堂といえば、ハトのマークがシンボルである。
しかし、日本にはもう一つハトのマークを掲げる企業が存在する。
それは「イトーヨーカドー」である。
自分が初めてイトーヨーカドーを見た時、「なんか平和堂の偽もんがある」と思った。
それぐらい滋賀県民または関西人にはハトのマークといえば平和堂なのである。
滋賀県北部にはショッピングモールというものが無い、平和堂はそんな滋賀県北部の県民にとってはイオンのような存在である。
当然近くに遊ぶ場所もなく、カラオケやゲームセンターなどもない。
その為、北部の子供たちにとって、唯一メダルゲームや100円ゲームができる場所が平和堂になる。
ーーー
母親の車に乗り、向かっているのは平和堂。
僕の住んでいる地域は、滋賀県の中でも特に田舎の方で、買い物に出かけるには車に乗って30分以上移動しなければいけない。
小学生の僕にとっては、この週に1度の買い物がゲームセンター遊びにいける唯一の時間だった 。
僕の小学生時代には100円ゲームが流行しており、その中でも「ムシキング」は一番の人気だった。
僕も当然ムシキングにハマっており、この週に1度の買い物について行っては、100円をもらいムシキングで遊んでいた。
ムシキングとは、2003年からゲームセンターに登場したゲーム機である。
昆虫同士が戦うといったゲームになっており、ジャンケンを利用した単純な操作であるため、小学生低学年にも簡単に遊ぶことができた。
このムシキングでは、昆虫によって強さが違うため、レアカードを求めて小学生の僕たちは、お金を注ぎ込んだ。
と言っても注ぎ込んだのは親の金なのだが。
1番の人気は、ヘラクレスオオカブトである。
ムシキングをしているものであれば、このカブトムシを手に入れることが一種のステータスであった。
僕もこのヘラクレスを手に入れる為、親の買い物には必ず同行し、お小遣いをもらってはカードを購入していた。
この日も僕は、いつもと同じようにヘラクレスを当てるべく親の買い物に同行していた。
平和堂に到着し、僕が真っ先に向かうのは、ゲームコーナー。
お目当ての台を見つけ、ポケットから親からもらった100円玉を取り出し。
ゲームに投入した。
ムシキングは、ゲームの前にカードが排出される。
ヘラクレスが出ることを祈りながら、カードを排出されるのを待つ。
カードがゲーム機から排出され、僕はドキドキしながらそのカードを確認した。
出てきたのはヘラクレスではなく、ギラファノコギリクワガタである。
実はこのギラファノコギリクワガタは、ヘラクレスに並んで強いレアカードであった。
僕はようやく、今までの努力が実った気がした。
後のゲームを早く済ませて、僕は母親にレアカードが当たったことを早く報告するべく、買い物途中の母親を探しにゲーム機を後にした。
数分後、食品コーナーで買い物をする母親を見つけた僕は、ようやくレアカードが当たったこと報告するべく、当たったギラファノコギリクワガタを取り出そうとした。
そこで気づいたのだが、当たったはずのギラファノコギリクワガタを持っていない。
当たったことに興奮し、ゲーム機にカードを置いてきてしまったらしい。
なんという失態だ。
僕は一気にテンションが下がり血の気が引いた。
急いでゲーム機に戻るべく、店内など関係なく全力で駆け出した。
ゲーム機に到着し、自分のギラファノコギリクワガタを探したが、
そこにはもう無かった。
僕はこの日ムシキングをやめた。
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