第26話 戦場では向こうの兵士が人間じゃなかったりした

 戦場に一番近い村までやって来た。

 もう全くひと気がないな。

 避難させられたんだろう。


 まるごと駐屯地になっていて、留守番の兵士たちが歩き回っていた。


「村をまるごと使っちゃうんですね」


「そうだな。人数もいるし、これだけの数の軍隊が暮らせる場所が必要だからな。食べ物も村のものを使うんだろう。それに村人がいたら、何かあった時に危ないしな」


「村の人たちは災難ですねえ」


「うむ、まったくだ」


 村を追い出された彼らがこの村に戻れることは、多分ないだろう。

 国境線近くの村ゆえの悲劇とも言える。


「で、どうするのだマイティ。拙者らは冒険者。お呼びではなかろう。潜入するだけなら容易いが?」


「もう留守番しか残ってないじゃないか。問題ないだろ。このまま行こう」


「豪快だな。だが拙者もそういうのは嫌いではない」


 ということで。

 エクセレントマイティは真正面から駐屯地に入った。


「えっ!?」


 見張りをしていた兵士がびっくりして跳び上がる。

 地面に座り込んで読書をしていた、灰色の髪の男だ。


「ちょっと待って待って。ここから先は戦場だよ」


「おう。戦場だから来たぞ。なんか敵は魔王の手下っぽい感じの黒騎士らしいじゃないか」


「魔王って今どき……。ああ、いや、最近確かにあちこちで、おかしな事ばかり起こってるしな。魔王がまた出るんだって話が盛り上がってるのは知ってるけどさ。ほら、俺にも仕事の責任があるんで、部外者を入れられないのよ……」


 この兵士は腰が低いな。

 だが、こうやって事情を話してくれると、こちらとしても同情するわけだ。


「そうか。じゃあ村を迂回していけばいいかな?」


「あー、そうしてくれると助かる! 俺は見なかったことにするから」


「よし、そうしよう。この先で合ってるか?」


「うん、村をぐるっと迂回してな。畑あたりは見回りする人数いないから、誰も見てない。通過して大丈夫だ。んで、まっすぐ行って多分ちょっと歩けば戦場だな。その人数で行ったところで何も変わらないと思うけどね」


「いやいや、行くことに意義があるんだ。色々ありがとう」


「こちらこそ、物分りのいい冒険者で助かった。じゃあな、命を大事にな。あと俺のことは黙っててくれよな」


 物分りのいい兵士に見送られ、俺たちは村を迂回することになった。


「優しい人でしたねえ」


「あれは面倒事を引き受けたくないだけであろうな。そして拙者らの実力も見抜いておった。ゆえに、事を荒立てたくなかったのだろう。始めから譲歩できる部分を提示して、そこに拙者らを誘導した。なかなかの切れ者よ」


「おう。頭のいいやつだったな! 今度会った時には出世してるかもしれないな」


 畑の間の道を通り、村の横を通過していく。

 戦場に向かう道と、畑を通る道で高さが違うな。

 こちらは山に向かっていく感じか。


 道は、木々が生い茂る丘に繋がっていた。

 そこから戦場への道を見下ろしつつ、どんどん歩いていく。


「音が聞こえてきました! 戦争してます!」


「おお、やってるか」


 丘の下で、今まさに合戦が行われていた。

 王国と、ナンポー帝国側の兵士がわあわあと叫びながらやり合っている。


 そして俺たちがいる丘にも……。


「うわっ、何だお前たちは!」


 弓を手にしていた兵士が振り返ってびっくりした。

 おや、この鎧はナンポー帝国のものではないか。


「戦場を見物に来た冒険者だ。正確には黒騎士に用がある」


「黒騎士様に!?」


「黒騎士って魔王の手下なんですか? 手下だったらやっつけます!」


 エクセレンが正直に伝えたので、弓兵たちがざわついた。


「まさか王国の遊撃兵か!!」


「たった三人で来るとは、バカな奴らめ!」


「我々をただの兵士だと侮ったのだろう!」


「行くぞお前たち! 黒騎士様より賜ったこの力を見せる時! ぬわあーっ!!」


 弓兵たちの姿が変わっていく。

 鎧や、手にした弓と肉体が同化して、半人半馬のモンスターに変わった。


「この先にお前たちが行くことはない!! 死ぬがいい!!」


 とか言いつつ矢を射掛けてきたので、これを俺はガードしておいた。


「どうやらこいつらはモンスターになっていたらしい。ということは、黒騎士はクロだな」


「マイティ、黒騎士なんだから黒いに決まってます」


「いやいやエクセレン、マイティが言っているのはな。クロとシロというのは疑いのとおりであったか濡れ衣であったかという違いでな」


「ほえー、そんな言い回しがあるんですね!!」


 俺たちがのんきに話しをしているので、矢を射掛けている連中はちょっと焦ったらしい。


『バカな! 強き肉体を手にした我らの矢を受けてなお、和気あいあいと雑談するだと!?』


『ぬおおお! 盾を抜けん! 抜けぬ! だがなぜか狙いを他に向けられん!!』


「ふむ、では拙者が一つ、クリティカルヒットに頼らぬ戦い方を思い出す意味で、こやつらの相手をしておこう」


 俺の横から、ジュウザがするりと出てくる。

 弓兵たちは彼に狙いを定めようとして、


「こっちを向けえっ!!」


『!?』


 俺が叫んで、彼らの注意を惹きつけておいた。

 その間に、ジュウザが指先で複雑な印を連続で結ぶ。


「ゆくぞ。ドトンの術!!」


 地面に手を当てたジュウザ。

 そこから土が盛り上がり、弓兵たちへと突き進む。


 突然地面が陥没し、弓兵たちはその中にまとめて落ちていった。


『ウグワーッ!?』


「はっ」


 再び印を結ぶジュウザ。

 土は埋め戻された。


 弓兵たちの声は聞こえなくなる。


「ほへー! ジュウザってなんでもできるんですね!」


「お主らの言う魔法と同じ原理だ。こういうものは使い方次第ゆえな。今度エクセレンの魔法も、応用の仕方を教えよう」


「ありがとうございます!」


 仲間内で技を教え合うのはいいことだな。

 俺は弓兵が埋められた地面の上でジャンプし、足元を固めた。

 そして少しすると、地面から尖ったものが突き出してくるではないか。


「弓だ」


「土中で死んだようだな。変身が解けて、同化していた弓矢が外に出てきたようだ」


「よし、エクセレン!」


「飛び道具ゲットですね! パワーアップですよー!!」


パーティー名『エクセレントマイティ』

ランク:B

構成員:三名


名前:エクセレン

職業:エクセレントファイター

Lv:24

HP:248

MP:161

技 :魔技ミサイルスピン クイックドロー バックスタブ パイルバンカーブロウ

エンタングルブロウ

魔法:マジックミサイル(中級):派生ドリルマジックミサイル(中級) ヒール(下級) ライト(下級)

覚醒:シャイニング棍棒 シャイニング斬

武器:鋼のショートソード 鋼のトマホーク 鋼の棍棒(覚醒) ハルバード

 ガイストサーベル 帝国の弓矢

防具:チェインメイルアーマー(上質)



名前:マイティ

職業:タンク

Lv:86

HP:1200

MP:0

技 :ガード強化(特級) カバーガード(特級) エリアガード(特級)

   マジックガード(特級) マインドガード(特級) パリィ(特級)

   ガードムーブ(特級) ヘイトコントロール(特級) マッチング(初級)

魔法:なし

覚醒:フェイタルガード

武器:なし

防具:熟練のプレートアーマー、熟練のビッグシールド



名前:ジュウザ・オーンガワラ

職業:ニンジャ(オーンガワラ流アークニンジャ)

Lv:83

HP:655

MP:520

技 :クリティカルヒット(特級) デックスアーマークラス(特級) ラビットムーブ(特級)

   シュリケンスロー(特級) ハイド&シーク(特級)

魔法:カトン(特級) スイトン(特級) ドトン(特級)

覚醒:クリティカルヒット(極)

武器:投擲用ダガー

防具:なし

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